ドラマ記録__おいしい給食

『おいしい給食』というテレビドラマをご存じだろうか。本作は2024年11月時点で、3シーズンにもわたり制作されている。劇場版も3本公開された。そんな大成功といって間違いない本作だが、驚くべきことにローカルテレビ局から始まったときている。放送日は局の都合でバラバラ、地域によっては視聴できない場所もあったような、平日深夜帯をメインとした、いわゆる「知る人ぞ知る」ドラマだ。
 物語の舞台は1990年代の中学校で、学校給食をテーマにしたグルメドラマとなっている。主人公は、『市原隼人』が演じる教師・甘利田幸男。甘利田は給食をこよなく愛する者だ。給食の為に学校に来ているといっても過言ではない。そんな甘利田が一話ごとに給食を紹介し、美味しそうに食べるという、グルメドラマの基本構造に則って物語は進行していく。しかし本作には「給食バトル」というユニークな要素が加わっている。既に字ずらからおバカ要素が伝わるが、このバトルが面白い。甘利田のライバルとなるのが、生徒の神野ゴウというキャラクターだ。彼もまた給食をこよなく愛する者であり、給食に全てを賭けていると言っていい。どちらがより給食を美味しく食べられるか、という名目でバトルは繰り広げられていく。
 本作の最大の魅力といえばやはり老若男女問わず楽しめる点であろう。誰もが一度は食べたことのある給食という一種の共通言語を使うことで、幅広い層にアプローチ出来ている。1990年代の中学校が舞台のため、当時中学生だった者たちは嫌でもノスタルジックな気分にされてしまう。それに加え自分のような平成生まれの者でも給食はなじみ深い。数々のグルメドラマがあるが、これほどまでに多くの人々の心に優しく寄り添えるテーマはなかったのではないか。
 本作品のジャンルを正しく伝えるなら、グルメバトルコメディだ。一見聞いたことのないジャンルだが間違いない。本作品はグルメドラマの側面を持ちながら、バトルコメディの要素も持ち合わせている。給食を使って教師と生徒のバトルが行われていくわけだが、これを紐解くと大人と子供の対立としても見て取れる。作中では、大人である甘利田が生徒の神野の自由な発想に翻弄され、敗北を認める場面がたびたび描かれていく。甘利田は常に真面目で規則的だが、神野は子供らしい自由な発想を存分に発揮する。例えば理科のアルコールランプでチーズを溶かしチーズフォンデュにして食べるなど、ツッコミどころ満載の方法をいくつも使う。この対立構造は、大人と子供の本質的な違いを象徴しているように感じられるのだ。大人は子供の純粋さには敵わない、子供にあって大人に無いもの、そんなメッセージが本作から送られているのではないか。大人になる最中に失ってしまったモノが給食バトルにおいていかんなく示されている気がする、そんなドラマだ。
 主演である市原隼人の演技がこの作品を最高にしているのは言うまでもない。それは市原のプロ意識の高さが物語っている。市原は劇場版に伴い五キロ減量したそうだ。これは『おいしい給食』での話だ。撮影前は食事を抜き誰よりも給食を美味しく食べられるように努めた。どうして五キロも減量したのかは分からないが、そういった真摯な作品への取り組みが、甘利田幸男というキャラクターをより魅力的に仕上げている。
 私はもう10年近く食べていないものがある。それは給食だ。私が学生の頃は、食も細かったことから給食にはあまりいい思い出がない。私の学校では完食デーなるものが定期的に開かれ、その日は学校が憂鬱で仕方なかった。そんな私だが学生時代に戻ったら真っ先に、給食が食べたいと答える。エンタメの力というものがあるのならば、私はその力に負けたと言えるだろう。苦い思い出が懐かしく、何事にも代えがたい思い出と変わる。あの頃を懐かしみたいという人はもちろん、子供時代の何かを思い出したい人にはぜひ観てほしい作品だ。


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