第二話:『チャートで人の心が読めるの? チャート職人じい、ローソク足で恋を語る』
場所:フラグ村・泡沫の酒場
泡沫の酒場には、今日もピエロたちの騒がしい声と、バニーガールたちの笑い声がこだまする。だが、隅の席には、ひときわ静かな空間があった。
チャート職人じいが、手帳にローソク足を書いている。その横には、まゆ様が静かに座っていた。
「じい、またチャート見てるの?」
「ふむ、これは恋のチャートじゃああああ」
「……恋?」
じいは鼻髭をくるりと撫でながら語り出す。
「のう、まゆ様。ワシらの心の動きは、全部チャートに現れるんじゃ。たとえばの、好きな人の前に立つと……陽線が出る。逆に避けられたら……陰線じゃああああ」
「それ、単なる気分じゃ……?」
「気分が動く、それすなわち相場じゃ!」
まゆ様は、じいの語るチャート恋愛論に耳を傾けつつも、半信半疑の表情を浮かべていた。
「では、わしの過去の恋……見てみるか?」
そう言ってじいは、汚れたノートを開く。
中には、意味不明なローソク足チャートと、「1983年 陽線5本」とだけ書かれていた。
「……これ、どういう意味?」
「うむ、五回アタックして、五回無視されたのじゃあああああ」
「全部陽線なのに……?」
「ワシの気持ちが前向きだったということじゃあああああ!!!」
そして──ロウソクの炎が語り出す
夜が更け、ランプの灯が酒場を照らす。
ふと、チャート職人じいがロウソクの火に目を止める。
「……っ!!」
じいが突然立ち上がる。
「見えた……見えたぞおおおおおお!!!」
「え!? なにが?」
じいの指が、酒場のロウソクを差して震える。
「あのロウソクの炎──上髭じゃあああああああ!!!!! 今日の高値、更新しとる! だが、売り圧力が……ッ!!」
まゆ様は、一歩引いてじいを見つめる。
「……じい、それ、ただの火……」
しかし、その目は優しくもあった。
(……この人、やっぱり狂ってる……でも、嫌いじゃないかも)
モノローグ:まゆ様の心の声
ローソク足で恋を語る人なんて、普通いない。 でも、普通じゃないから、面白い。 この泡沫の酒場には、たぶん“まだ何か”がある。 それを知りたいと思う私は……もしかして……。
おわりに
こうして泡沫の夜は更けていく。 ロウソクは静かに揺れ続け、 チャート職人じいはその炎に、また新たな恋のサインを見出していた──。

