AI物語:第3話 最初の「学ぶ機械」――コンピューターは経験から学べるのか
AIは、どうやって「学ぶ」のでしょうか。1950年代、フランク・ローゼンブラットは、経験から少しずつ変化する「パーセプトロン」を研究しました。
これは、現在のニューラルネットワークや機械学習へつながる重要な発想でした。さらに1960年代には、MITのジョセフ・ワイゼンバウムが「ELIZA」を開発。コンピューターとの会話に、人間が「知性」や「心」を感じるという、後のAI時代を予感させる出来事も起こります。AIは「計算する機械」から、「学ぶ機械」へ。しかし、この先には大きな壁が待っていました。
1950年代。「人工知能」という言葉が生まれたころ、研究者たちは一つの大きな問題に気づき始めていました。人間は、すべてのことを誰かに命令されて覚えているわけではない。赤いリンゴを何度も見れば、やがて「これはリンゴだ」と分かる。失敗すれば、次は同じ失敗をしない。

人間は、経験から学んでいるのです。では――コンピューターにも、学習させることができるのではないか?1950年代後半、この考えに挑戦した人物がいました。アメリカの心理学者フランク・ローゼンブラットです。

彼が研究したのが、「パーセプトロン」と呼ばれる仕組みでした。
パーセプトロンは、人間の脳にある神経細胞の働きを、非常に単純化してモデルにしたものでした。いくつかの情報を受け取り、それらを組み合わせて判断する。

そして、結果が間違っていれば、内部の重みを少し変える。もう一度試す。また間違えれば修正する。つまり、「経験をもとに少しずつ変化する」という仕組みです。これは、現在のニューラルネットワークや機械学習につながる重要な発想でした。当時の研究者たちは、未来を見ていました。もしかすると、いつの日かコンピューターは自分で学習し、文字を読み、画像を認識し、人間のように判断できるようになるのではないか。AIへの期待は、ますます大きくなっていきました。

そして、もう一つの実験が始まります。人間と機械が――「会話する」という実験です。1960年代、MITのジョセフ・ワイゼンバウムが開発したプログラム、「ELIZA」。ELIZAは、現在のAIのように文章の意味を理解していたわけではありません。入力された言葉の一部を取り出し、決められたパターンにしたがって返事をする。それだけでした。
ところが――人間は、その簡単な仕組みに驚きました。
「私には悩みがあります」
そう話しかけると、
「どうしてそのように感じるのですか?」
と返してくる。

人はそこに、まるで「聞いてくれている誰か」がいるように感じたのです。
もちろん、ELIZAには人間のような心があったわけではありません。
けれど、この出来事は重要でした。人間は、機械の言葉に意味を感じる。
機械が本当に理解していなくても、人間はそこに知性を見つけてしまう。
これは、これから始まるAIの歴史を考えるうえで、とても大きな問題となっていきます。

1950年代のパーセプトロン。1960年代のELIZA。
AIは少しずつ、「計算する機械」から、「学ぶ機械」
そして、「話しかけると答える機械」へと姿を変え始めていました。

しかし、ここでも研究者たちは、まだ知らないことがありました。
人間の知能は、想像していた以上に複雑だったのです。
そしてやがて、AIを包んでいた大きな期待は、現実の壁にぶつかります。
AIの最初の輝かしい時代は、ゆっくりと終わりへ向かっていました。
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