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第3話:豹変、地獄の歓迎会

入社から約一ヶ月が経った頃、僕の歓迎会が開かれた。

主役として席に座る僕の目に、意外な人物の姿が飛び込んできた。あの上司だ。
普段、彼は「飲み会なんて時間の無駄だ」と公言しており、お酒も一切飲めない。そんな彼がわざわざ顔を出してくれたことに、僕は「部署は違えど、やはり僕のことを特別に気にかけてくれているんだ」と、誇らしい気持ちにさえなっていた。

しかし、その淡い期待は、乾杯の発声とともに一瞬で吹き飛ぶことになる。

「おい、何をぼーっとしている。グラスが空いてるぞ」

彼の鋭い声が、賑やかな居酒屋の空気を切り裂いた。
僕がハッとして隣の先輩のグラスに手を伸ばそうとすると、彼はそれを制し、冷徹なトーンで言葉を重ねた。

「立ち居振る舞いがなっていない。先輩方の挨拶のタイミング、空いたグラスへの目配り、次の注文を聞くスピード。すべてが遅すぎる」

そこからは、歓迎会とは名ばかりの「公開処刑」が始まった。
飲み会のマナーから、社会人としての礼儀作法まで、彼は周囲に自分の威厳を見せつけるかのように、僕を徹底的に叩き始めた。

「主役なんだからいいよ、今日は座って楽しみなよ」
見かねた先輩たちがそうフォローを入れてくれるが、彼はそれを「甘やかすな」と一喝して退ける。

さらに矛先は、僕の普段の仕事ぶりにまで及んだ。
「お前は、仕事ができると思い込んでいるようだが、その甘さが顧客に迷惑をかけるんだ。お前の代わりなんていくらでもいる」

一対一で相談していた時の、あの穏やかで的確なアドバイスをくれる「兄貴分」の面影は、どこにもなかった。
そこにいたのは、周囲を萎縮させ、一人の人間を徹底的に否定することで、己の絶対的な支配力を誇示する「怪物」だった。

僕はただ、空になったグラスを握りしめ、顔を上げることができなかった。
これまでは「彼と自分は分かり合えている」と思っていた。けれど、目の前で僕を冷酷に詰め寄るこの男もまた、間違いなく「本物」なのだ。

周囲の人が口を揃えて「気をつけろ」と言っていた本当の意味を、僕は歓迎会の主役席で、震えながら理解した。

(第4話へ続く)

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