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娘をアプリに合わせるのをやめた――紙のプリントとAIで学び方を見直した夏休み

娘のために作ったアプリが、いつの間にか使われなくなっていました。

私はITエンジニアです。使われないなら、もっと便利にすればいい。機能を追加すれば、また使ってくれるかもしれない。最初はそう考えていました。しかし、見直すべきだったのはアプリではありませんでした。娘を仕組みに合わせるのではなく、娘に合うように学習環境そのものを変える必要があったのです。


1. 変えるべきだったのは、娘ではなく学び方だった

きっかけは、昨年受けたWISCの結果をあらためて確認したことでした。

結果を見ると、娘はワーキングメモリに関する指標が、ほかの指標と比べて相対的に低いことが分かりました。

一つの指標だけで、娘のすべてを説明できるわけではありません。それでも、これまでの様子を振り返り、学び方を考え直す手がかりにはなりました。

説明を覚えたまま問題を解く。途中の手順を保持して、次の計算へ進む。複数の指示を順番に処理する。こうした場面では、娘なりに大きな負担を感じていたのかもしれません。

そこで、新しい操作を覚えてもらうのではなく、覚えておかなくても進められる環境を作ろうと考えました。

2. 学年を戻るのではなく、考え方の土台へ戻る

今回の学び直しでは、「1年生の算数が終わったら2年生へ」という学年順を重視しませんでした。

必要だと思ったのは、学年をさかのぼることではなく、考え方をさかのぼることです。

数をまとまりとして見る。10のまとまりと残りに分ける。数を合成・分解する。足す場面と引く場面を区別する。文章に書かれた情報を、図や数字として外に出す。

どこまでなら説明なしで解けて、どこから負担が大きくなるのか。それを一つずつ確かめることにしました。

練習問題には、スモールステップで基礎を確認できる無料学習プリント「すらぷり」を使いました。

また、親である私自身が説明方法を学ぶため、学習支援全体、数・計算、文章題・図形を扱う3冊の教材を購入しました。正式な書名は記事の最後にまとめています。

指導者ではなく、「環境の設計者」へ

まず私が対応する章を読み、考え方を短く説明する。そのあと、娘が対応するプリントを紙で解きます。

「1年生からやり直す」のでも、できないことを証明するのでもありません。どの考え方を補えば次へ進みやすくなるのか、その出発点を探すための学び直しです。

3. 子どもは紙で、AIは裏方にした

この方法を始めたのは、夏休みが始まった7月20日でした。

娘が使うのは、アプリではなく紙と鉛筆です。「すらぷり」を印刷して一つずつ解き、終わったプリントをスキャンします。

AIは先生ではなく、採点と記録の裏方です。手書きの回答と間違いの傾向を整理してもらいますが、AI任せにはせず、正答との照合は別の仕組みで行い、判定が不確かな箇所などは私が確認します。

流れは、紙で解く → スキャンする → AIが手書きを読む → 保存した正答と照合する → 親が確認する → 記録する、というものです。

AIに毎回答えを考えさせないことで、AIの使用量を抑え、誤採点の可能性を減らすことを狙いました。娘は紙で一問ずつ考え、採点や記録は親とAIが裏側で引き受けます。詳しい方法は、次の記事で紹介します。

4. 15分勉強して、5分休む

15分勉強して、5分休む。

これを3回繰り返して1セット。休憩を含めて1時間です。無理のない日は午前に1セット、余裕があれば午後にも1セット。午前と午後を合わせても、休憩込みで最大2時間。実際に問題へ取り組む時間は最大90分とし、その日の体調や集中力を優先しました。

取り組んだ日には、カレンダーへ丸いシールを貼ります。

点数だけでは見えにくい「今日も取り組めた」を、娘自身が目で確認するためです。7月20日から8月19日までの約1か月間、日付別フォルダには22日分の記録が残りました。日によって量は違い、枚数をそろえることは目標にしませんでした。

5. 仕組みを作っても、それだけでは続かなかった

紙に戻し、休憩を入れ、AIで採点を記録する。仕組みは整いましたが、それだけでは続きませんでした。娘にとって、「今日、このプリントをする理由」がまだ弱かったのです。

そこで7月30日から、「1ページ5円」という方法を始めました。

私自身、迷いはありました。お金がなければ勉強しなくなるのではないか。ご褒美だけが目的にならないか。

だから、何を評価するのかを決めました。

全問正解でも5円。間違いがあっても5円です。

対象は、この家庭学習で取り組むプリントだけ。学校の宿題は含めません。金額やページ数に上限は設けませんでしたが、学習時間は最大2時間までです。

正解数への報酬ではありません。机に向かい、1ページに取り組んだという行動への評価です。

間違えると金額が減るなら、難しい問題へ挑戦するほど損をします。間違いは、次の学習を考えるための大切な記録です。だから正誤と報酬は切り離しました。

取り組み方そのものを、採点結果だけで判断することはできません。ただ、正答率が急に下がったり、未回答が増えたりしたときは、疲れていなかったか、問題が難しすぎなかったかを振り返る手がかりにしました。減額には使わず、次の説明やプリントを選ぶ材料にしています。

「この問題でお金がふえるの? それはうれしい!」

「学校の問題は難しいけれど、こっちの問題は簡単でできるからうれしい!」

「ドリルみたいでないから、楽しい!」

私が考えていた以上に、娘にとってはお金だけでなく、「自分にもできる」と感じられることが、次のページへ進む理由になっていました。

6. 雑貨屋で見つけたものが、次の1ページの理由になった

それまで、娘にとって「お小遣い」は、それほど大きな存在ではありませんでした。ところが1ページ5円を始めると、お金と自分の行動がつながりました。

夏休みに立ち寄った雑貨屋で、娘はお気に入りのシャープペンや、かわいい消しゴム、小さなスクイーズを見つけました。

欲しいものの値段を見る。財布の中身を確かめる。あといくら、あと何ページで買えるかを考える。プリントの外に、娘自身の目的を持った計算が生まれました。

ご褒美が雑貨屋になる日

お金が貯まったとき、もう一度雑貨屋へ行きました。娘は自分の財布からお金を出して、気に入ったシャープペン、消しゴム、小さなスクイーズを買いました。

私が一方的に買い与えたものではありません。娘自身が取り組み、貯め、選んだものです。

1ページ5円で娘のやる気を買った、とは考えていません。

欲しいものへ少しずつ近づける。その小さな見通しが、次の1ページへ向かう理由になったのだと思います。

7. 子どもではなく、環境を変える

この方法が娘にとって最善なのか、まだ結論は出ていません。学力が上がったと断定できる段階でもなく、現金を使う仕組みも、成長に合わせて見直す必要があるでしょう。

それでも、この夏休みに私の考え方は変わりました。

学年ではなく、考え方の土台を見る。間違いを責めず、次の支援を考える材料にする。すべてを子どもの頭の中に抱えさせず、紙、AI、スクリプト、そして親で負担を分ける。

変えるべきだったのは娘ではなく、娘が取り組む環境でした。


今回は、娘の学習方法をなぜ変えたのかを書きました。

ただ、紙のプリントを続けると、今度は親側に「採点と記録をどう続けるか」という問題が生まれます。

私は最初、AIに問題まで解かせて採点していました。しかし、それではAIの使用量が増え、AI自身が答えを誤る可能性も残りました。

そこで正答表を別に保存し、AIには答えを考えさせず、手書きの読み取りと整理を中心に任せる方法へ変えました。

次回は、「AIに問題を解かせない――紙の答案を採点・記録する家庭学習の仕組み」として、実際の流れと、うまくいかなかった点を書きます。

参考にした教材

  • 『ワーキングメモリを生かす効果的な学習支援――学習困難な子どもの指導方法がわかる!』

  • 『ワーキングメモリを生かす数・計算の教材――数の合成・分解から分数までの数と計算に関するつまずき解消!』

  • 『ワーキングメモリを生かす文章題・図形の教材』

※この記事は、一家庭で試している学習方法の記録です。WISCの一つの指標だけで診断や学習方法を決めるものではなく、同じ方法がすべてのお子さんに適することを示すものでもありません。

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