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天才推理小説家の事件録 第24話「撃たれた逃亡者 後編」

第24話「撃たれた逃亡者 後編」

清水法律事務所(昼)

潤が事件資料を机に置き、友里奈がメモを取りながら話を聞いている。
遥香と綾はソファに座り、2人の会話を静かに聞いている。

宝条 潤
「遠山は物流会社の社員で、横流しの実務担当だった。奥村に切り捨てられる寸前だった」

清水 友里奈(頷きながら)
「違法横流しね……物流って、“物”の流れだけじゃないのよ」

宝条 潤
「書類?」

清水 友里奈
「そう。物流は必ず“紙”がついてくる。伝票、出庫記録、搬入証、検品記録、コンテナ番号……」

潤がわずかに目を細める。

宝条 潤
「……番号」

清水 友里奈
「そう。番号が命。横流しする人間が一番恐れるのは――」

友里奈が指を立てる。

清水 友里奈
「“帳尻が合わないこと”よ」

潤がしばし沈黙する。

宝条 潤
「……帳尻を合わせるには、基準が必要」

その言葉に――遥香と綾が同時にピクリと反応する。

神谷 遥香(心の声)
(……“基準”)

ふと、脳裏に蘇るあの夜のこと――

回想(同期飲み会)

レストラン個室、照明が落ち、黒い封筒が届く。
暗号文の一節が脳内に鮮明に響く。

暗号文の文字(回想)
『基準を取れ』

回想終了

遥香の瞳が鋭くなる。

宇垣 綾(心の声)
(……あの暗号文のあの言葉)

潤が一瞬で解いた暗号。そして鷲尾教官の言葉。

友里奈の声が続く。

清水 友里奈
「密輸って言ってもドラマみたいな裏ルートだけじゃない。“基準”をズラすの。本来の規格と違う物を、別の物として処理して通す」

潤が静かに頷く。

宝条 潤
「……規格……つまり、“分類”か」

清水 友里奈
「そう分類。もっと言えば――」

友里奈がペン先でメモ帳をトントンと叩く。

清水 友里奈
「どの基準で分類して、どの基準を偽装したか、そこに必ず犯人の“クセ”が出る」

遥香と綾は顔を見合わせる。

神谷 遥香(心の声)
(“基準を取れ”……って、こういう意味?)

宇垣 綾(心の声)
(……鷲尾教官、まさかここまで見越して)

遥香は思わず潤を見る。
潤はすでにその言葉の意味を掴んだように、遠山の写真をじっと見つめている。

宝条 潤
「……なるほど」

小さく笑う。

宝条 潤
「基準を取れば、嘘が浮く」

遥香が内心ドキッとする。

神谷 遥香(心の声)
(……潤、今の……“暗号”を思い出してる?)

綾も同じことを感じ取る。

宇垣 綾(心の声)
(この2人……本当に同じ種類の頭脳だ)

応接室の空気が、静かに“推理の核心”へ寄っていく。

友里奈がメモを取りながら、静かに一言。

清水 友里奈
「……この事件、“殺人”として追うと遅れるわ」

宝条 潤
「……どうして?」

清水 友里奈(ペンを置き、淡々と)
「遠山は物流会社の社員、しかも横流しの実務担当。そういう人間が本当に恐れているのは――逮捕じゃない」

友里奈の目が鋭く光る。

清水 友里奈
「証拠の書類よ」

遥香と綾が息を呑む。

宝条 潤
「……なるほど」

清水 友里奈
「彼は今、負傷して逃走してる。だけど、そんな状態でも銃を手放してない。つまり彼は“戦う”準備をしてる。そして同時に、“逃げ切る”準備もしてる」

友里奈がメモを指でトントン叩く。

清水 友里奈
「逃げ切るためには、何が必要だと思う?」

宝条 潤
「……新しい身分と資金」

清水 友里奈
「そう。そして――罪を誰かに被せる準備」

綾が眉をひそめる。

宇垣 綾
「……奥村がやろうとしたことを遠山が?」

清水 友里奈
「ええ。人間って、追い詰められると“憎んだ相手のやり方”でも真似するんです」

遥香の表情が固くなる。

神谷 遥香
「……遠山は次のターゲットを作っている」

宝条 潤(低く)
「あるいは、もう作っている」

沈黙。

友里奈がさらりと続ける。

清水 友里奈
「だから“基準を取る”。物流の横流しって、必ず書類を偽装する。何をどう偽装するか、“基準”を正しく戻せば――」

宝条 潤
「嘘が浮く」

清水 友里奈
「そう」

友里奈が潤を見て微笑む。

清水 友里奈
「……相変わらず早いね」

遥香と綾が同時にジト目で友里奈を見る。

神谷 遥香(心の声)
(この女……潤に馴れ馴れしい)

宇垣 綾(心の声)
(……完全に同類)

潤は気付かず話を進める。

宝条 潤
「物流の偽装書類は、基本的に――“品目分類”をズラす」

清水 友里奈
「うん。例えば関税.正規の基準だと税率が高いものを、税率が低い別品目として通す」

宝条 潤
「つまり遠山は――今も同じ“基準のズラし方”をしている可能性がある」

潤が資料の写真を見つめる。

宝条 潤
「遠山は負傷している。血が出ている」

神谷 遥香
「病院には行けない。行けば足がつく」

宇垣 綾
「でも処置しないと感染する」

潤が結論を出す。

宝条 潤
「……だから彼は、“治療”を最優先にしない」

清水 友里奈
「え?」

宝条 潤
「負傷しても動ける人間はいる。それは“痛みより恐怖が勝っている人間”」

潤がはっきり言い切る。

宝条 潤
「遠山が今いちばん怖いのは、警察じゃない。奥村が残した“遠山を切り捨てる証拠”。あるいはそれを握っている人物だ」

友里奈の目が見開かれる。

清水 友里奈
「……なるほど。遠山は“証拠を回収”する」

綾が腕を組む。

宇垣 綾
「でも、証拠は会社にあるはず」

潤が冷静に言う。

宝条 潤
「会社じゃない。会社なら既に神奈川県警が踏んでいるはず」

潤は遠山の写真を指でなぞる。

宝条 潤
「遠山は奥村を殺した後――奥村の遺品を探したはずだ」

神谷 遥香
「……遺品?」

宝条 潤
「奥村のポケット、鞄、私物、そこに“遠山の名前で処理した記録”があった可能性がある」

清水 友里奈
「……それを回収できてないから焦ってる……奥村が“切り捨てる準備”をしてたなら会社だけじゃない。弁護士に相談している可能性がある」

遥香と綾が同時に反応する。

神谷 遥香
「……弁護士?」

宇垣 綾
「奥村が?」

清水 友里奈(頷く)
「人を切るときに必要なのは“筋書き”です。横流しの責任を部下に押し付ける。そのための“法律上の逃げ道”を作る。奥村は必ず、一度は法律の専門家に当たってます」

潤が静かに笑う。

宝条 潤
「……そう思って僕は君のところに来た」

遥香と綾のジト目が加速する。

神谷 遥香(心の声)
(自然に口説くな)

宇垣 綾(心の声)
(この距離感……やめてくれる?)

潤が立ち上がる。

宝条 潤
「遠山は、奥村の“相談先”を探している」

宇垣 綾
「……相談先がどこか分かる?」

友里奈が腕を組み、少し考える。

清水 友里奈
「奥村の会社……港湾物流……港湾関連の企業は、都内だとこの辺りの法律事務所を使う」

地図アプリを開き、数件を示す。

清水 友里奈
「でも……奥村のようなタイプが使うのは、多分ここ」

友里奈がある事務所名を指す。

清水 友里奈
「“港湾案件専門の顧問弁護士”がいる」

潤が頷く。

宝条 潤
「……遠山はそこへ行く」

神谷 遥香
「行くって……まさか」

宝条 潤
「証拠を消すために。あるいは……その弁護士を“黙らせる”ために」

遥香が即座に立ち上がる。

神谷 遥香
「行きましょう!」

綾も頷く。

宇垣 綾
「警視庁と連携して包囲する」

潤が須田に電話をする。

宝条 潤
「須田。車を」

須田
「すでに用意しております」

潤が友里奈を見る。

宝条 潤
「友里奈、君も来て」

清水 友里奈
「当然」

友里奈が迷いなく立ち上がる。

神谷 遥香
「……あなたは来なくていいです」

清水 友里奈
「え?」

遥香が笑顔で言う。

神谷 遥香
「危険なので」

清水 友里奈
「警視さん、ご心配ありがとうございます。でも私、危険な話ほど燃えるんです」

遥香の笑顔が固まる。

神谷 遥香
「……そう」

綾が内心面白がっている。

宇垣 綾(心の声)
(楽しくなってきた)

都内・某法律事務所ビル前(夕方)

都心。ガラス張りのビル街。
「○○法律事務所」の看板のあるビルの前に、警察車両が複数停まっている。

警視庁と神奈川県警が合流し、現場には緊張感が漂う。
そこに潤たちが須田の車から降りてくる。

柴田 元治
「おう、来たか」

柴田が腕を組んで出迎える。瀬尾もいる。

瀬尾 隆
「先生、こんにちは」

ここで――新人2人が前に飛び出す。
新人刑事たちが潤に大興奮する。

村井 修平(敬礼)
「はじめまして先生!!先日、国立署から本庁に異動しました!!村井修平!!階級は巡査です!!!」

本橋 恒久(敬礼)
「同じく!!国立署から異動しました!!本橋恒久!!こいつと同じく巡査です!!!」

潤が一歩引く。

宝条 潤
「……えっと……君たち、新人刑事なの?」

村井 修平・本橋 恒久(声を揃えて)
「はい!!」

村井 修平
「刑事になったばかりです!!」

本橋 恒久
「警察官としては2年目になります!!」

目をキラキラさせる2人。

村井 修平
「先生、本物だ……!!」

本橋 恒久
「うわぁ……!本物だ……!!」

潤が困惑しながらも苦笑する。

宝条 潤
「本物って……」

神谷 遥香(小声)
「……潤、モテモテね?」

宇垣 綾(小声)
「ファンクラブ増えてる」

宝条 潤
「いや、違うでしょ……」

潤がふと神奈川県警側を見る。見慣れない若い捜査員が2人、姿勢よく立っている。
2人が一歩前に出る。

安西信(敬礼)
「はじめまして!!神奈川県警巡査部長の安西信です!!捜査二課から一課に異動してきました!!」

吉田哲夫(敬礼)
「同じく!!神奈川県警巡査部長の吉田哲夫です!!以前は横浜水上警察署にいました!!」

宝条 潤
「……捜査二課と水上警察署から……?」

そこへ、いつもの調子で相模が割り込む。

相模 直人
「先生〜、こいつらとも仲良くしてあげてくださいね〜」

宝条 潤
「う、うん……」

相模 直人
「あ〜ちなみに〜」

相模がニヤッとして警察手帳を見せる。

相模 直人
「私――昇進しました〜」

手帳にはしっかり……

《警部補》

と書かれている。

宝条 潤
「えっ!?警部補!?」

相模 直人
「はい〜おかげさまで〜」

潤が普通に感心する。

宝条 潤
「すごいじゃないか……!」

相模 直人
「いや〜先生の推理見てたら〜俺も頑張ろうって〜」

今井 もえ
「相模さん変なのに昇進しちゃうんですもんね」

相模 直人
「お前が言うなこのバイクバカ!」

今井が腕を組みながらニッとする。

今井もえ
「昇進って言えば……」

小野寺を見る。

宝条 潤
「?」

潤が首をかしげる。
小野寺が淡々と警察手帳を出す。

小野寺 恒一郎
「……先日」

そこには……

《警部》

宝条 潤
「えええっ!?警部!?」

小野寺 恒一郎
「はい。現場の積み重ねです」

潤が思わず拍手しそうになる。

宝条 潤
「……すごい……!」

綾が満面の笑みで言う。

宇垣 綾
「ふふっ。うちの課、2人も昇進したのよ?」

少し離れたところで、瀬尾が柴田に耳打ちする。

瀬尾 隆
「なんか……あっち2人も昇進したみたいっすよ?」

柴田 元治(ふんっと鼻で笑う)
「じゃあ俺もこの事件で手柄を上げて――」

柴田がニヤリとする。

柴田 元治
「警視に昇進してやるさ」

瀬尾 隆
「出世欲すご……」

柴田が一歩前に出て、声を張る。

柴田 元治
「おい!!村井!!本橋!!」

新人2人がビクッとして振り返る。

村井 修平・本橋 恒久
「はいっ!!」

柴田 元治
「先生の前で浮かれるな!戻れ!」

2人が名残惜しそうに潤を見る。

村井 修平
「は、はい……!」

本橋 恒久
「失礼します……!」

2人は走って戻る。

宝条 潤
「……なんかすみません」

柴田 元治
「いいんだよ。憧れってのは、持っといた方が伸びる」

柴田が目を細める。

柴田 元治
「ただし……今日の現場じゃ命取りだ」

空気が締まる。

遥香と綾が一歩前へ出る。

神谷 遥香
「全員聞いて」

その声だけで全員が黙る。

宇垣 綾
「ここからは“確保作戦”よ。情報収集じゃない」

遥香が簡潔に状況を整理する口調で言う。

神谷 遥香
「被疑者は遠山武夫。拳銃所持、発砲歴あり。右腕を負傷して出血あり。つまり――冷静じゃない。死ぬ気になってる可能性が高い」

新人の村井・本橋がゴクリと唾を飲む。

綾が配置を決める。

宇垣 綾
「斉藤警部は正面の封鎖をお願いします。安西君と吉田君は裏口で待ち伏せ。今井さんは外周の逃走車両に警戒して」

斉藤 恵一
「了解!」

安西 信・吉田 哲雄
「はい!」

今井 もえ
「はい!」

綾が全員を見回す。

宇垣 綾
「いい?単独で突っ込まないで。発砲の可能性がある。“撃たれない配置”で追い込む」

遥香が今度は警視庁側へ視線を移す。柴田も瀬尾も自然に背筋が伸びる。

神谷 遥香
「柴田さん」

柴田 元治
「おう」

神谷 遥香
「そして瀬尾さん、都築君、田村さんは正面から突入して」

瀬尾 隆
「了解」

都築 真也
「了解」

田村 水咲
「いつでも行けます」

神谷 遥香
「戸田君と三浦君は裏口合流班。班員が逃走したら必ず挟み撃ちにして」

戸田 陸翔
「了解!」

三浦 忍
「了解です」

遥香がさらに視線を鋭くする。

神谷 遥香
「村井君、本橋君」

村井 修平・本橋 恒久
「は、はいっ!!」

神谷 遥香
「君たちは――」

ここが優しいのに怖い。

神谷 遥香
「潤の横から動かないように」

村井 修平
「えっ」

本橋 恒久
「は、はいっ!!」

神谷 遥香
「潤は“狙われる側”。君たちの仕事は推理を聞くことじゃない。守ることよ」

村井 修平・本橋 恒久
「了解!!」

潤が苦笑いする。

宝条 潤(小声)
「……護衛対象なんだ」

遥香が即答。

神谷 遥香
「当たり前でしょ」

綾が満足げに頷く。

宇垣 綾
「そういうこと」

遥香が潤を一瞬だけ見る。“意見はある?”という目。

宝条 潤
「一点だけ」

現場が静かになる。

宝条 潤
「遠山は“弁護士を黙らせに来ている”可能性があります。説得は通じないと思ってください」

清水 友里奈
「……同意」

遥香が頷く。

神谷 遥香
「よし」

某法律事務所・フロア内(夕方)

法律事務所フロア。受付の奥の応接室では弁護士が怯えて座り、その前に遠山武夫が立っている。

遠山の右腕には血が滲み、上着の袖を押さえている。
顔は青白いが、目だけはギラついている。

遠山 武夫
「余計なこと喋ったら……撃つぞ!!」

遠山が銃を弁護士に突きつけようとする。

弁護士
「ひっ……!」

だが――遠山の右腕が震える。肘が上がらない。銃口が定まらない。

遠山 武夫
「……っくそ……!!」

歯を食いしばり、必死に腕を上げようとする。

遠山 武夫
「上がれ……!上がれよ……!!」

弁護士の目の前で、銃がふらつく。完全に狙いがつかない。

弁護士(涙目)
「……う、撃てない……?」

遠山 武夫
「うるせぇ!!」

その瞬間――

ドン!!!!

応接室の扉が破られる勢いで開く。

神谷 遥香
「警察よ!!動かないで!!」

同時に左右から突入する。

宇垣 綾
「銃を捨てなさい!!」

柴田・瀬尾・都築・田村らも一気に雪崩れ込む。

柴田 元治
「遠山ァ!!終わりだ!!」

遠山 武夫
「っ!?お、お前ら……!」

遠山が銃を向けようとするが、右腕が上がらない。

遠山 武夫
「……くそっ……!!」

綾が一歩踏み込む。

宇垣 綾
「……無駄よ」

遠山が左腕で銃を握り直そうとするが……都築が一気に距離を詰め、腕ごと制圧する。銃は床へ滑る。

遠山 武夫
「うわっ!!」

続けて田村が遠山を押さえつける。

田村 水咲
「暴れるな!!」

柴田が手錠をかける。

柴田 元治
「確保ォ!!」

遠山は床に押さえつけられ、歯ぎしりする。

遠山 武夫
「……っ!!ふざけんな……!!」

柴田 元治
「ふざけてんのはお前だ」

遠山が連行されていく。
応接室に静けさが戻る。

ビルの前で潤がつぶやく

宝条 潤
「終わったか……」

綾が息をついてから潤を見る。

宇垣 綾
「……潤君」

綾が潤の手をぎゅっと握る。

宝条 潤
「……」

驚きつつ、振りほどかない。
綾が目を潤ませながら言う。

宇垣 綾
「ありがとう……」

声が震える。

宇垣 綾
「あなたがいなかったら……遠山を止められなかったかもしれない」

潤が少し照れる。

宝条 潤
「……いや。僕は推理をしただけだよ」

神谷 遥香(ジト目)
「私も協力したでしょ?」

宝条 潤(心の声)
(来た)

宇垣 綾
「……そうね」

綾がさらっと言う。

宇垣 綾
「ありがとう」

遥香のジト目がさらに深くなる。

神谷 遥香
「……」

宇垣 綾
「……でも潤君が一番よ」

神谷 遥香(低音)
「……綾?」

潤が心の中で祈る。

宝条 潤(心の声)
(2人とも、今日だけは争わないで)

その様子を見ていた友里奈が、完全に理解した顔になる。

清水 友里奈
「……あ」

友里奈がゆっくり立ち上がる。

清水 友里奈
「えっと……じゃあ私はこのへんで」

静かに帰ろうとする。

清水 友里奈(心の声)
(……この三角関係、地雷原すぎる。私は弁護士、戦場は法廷であってここじゃない)

しかし……

神谷 遥香
「待って」

宇垣 綾
「待ちなさい」

両側から“壁”が出来る。

清水 友里奈
「……え?」

友里奈が固まる。

清水 友里奈
「まだ何かありますか?私……今日もう十分仕事しましたし……」

遥香が満面の笑みで言う。

神谷 遥香
「うん。だから少しお話しようか」

綾も笑顔で言う。

宇垣 綾
「あなた、潤君と仲良いわね?」

友里奈が青ざめる。

清水 友里奈
「えっ……?いや、同級生なだけで……」

潤が即座に止めに入る。

宝条 潤
「2人とも落ち着いて――」

神谷 遥香・宇垣 綾
「あなたは黙ってて」

宝条 潤
「はい……」

友里奈が冷や汗を流す。

清水 友里奈
「……あ、あの……私、ちょっと明日から裁判の準備が……」

遥香が一歩詰める。

神谷 遥香
「いいよ。私が準備してあげる」

清水 友里奈
「意味が違う!!」

綾が肩に手を置く。

宇垣 綾
「さ、ゆっくり聞かせて?」

清水 友里奈
「宝条くーーん!!助けて!!」

潤が目を逸らす。


宝条 潤
「……僕、今、いないことにならないかな」

遥香と綾の目が光る。

清水 友里奈
「いや、ほんと違くて!潤とはただの同級生で……!」

神谷 遥香(満面の笑み)
「うんうん、そういうのいいから」

宇垣 綾(にっこり)
「ね、もっと“詳しく”聞かせて?」

清水 友里奈
「こ、怖い!!この人たち本当に警察よね!?」

潤が遠くで見て目を逸らす。

宝条 潤(心の声)
(……見なかったことにしよう)

その瞬間――

???
「おやおやぁ〜?宝条先生じゃないですかぁ〜」

宝条 潤
「……えっ?」

振り返るとそこにいたのは――

宙羽賀 宙夢(ニヤニヤ顔で手を挙げる)
「久しぶりですわ〜」

宝条 潤
「……宙夢!!?」

潤が驚きすぎて声が裏返る。

宝条 潤
「なんでここにいるんだ!?」

羽賀 宙夢
「東京で事件の匂いがしたんで」

友里奈も驚く。

清水 友里奈
「えっ……宝条君と同じ経済学部だった羽賀君!?来てたの!?」

羽賀 宙夢
「おや?清水先輩やないですか。久しぶりですわ〜」

清水 友里奈
「久しぶりだね〜」

2人は普通に仲良く挨拶する。
宙夢が潤の肩をポンと叩く。

羽賀 宙夢
「いやぁ〜先生。この前紹介してもらったスナック、最高でしたわ」

宝条 潤
「え?」

羽賀 宙夢
「“美人スナックママ”の店、いやぁ癒されましたわ〜」

潤がつい乗ってしまう。

宝条 潤
「あ、あれか……確かに、雰囲気良かったな」

宙夢が目を輝かせる。

羽賀 宙夢
「せやろ?ほな、今から行きません?」

宝条 潤
「……いいな」

次の瞬間……

神谷 遥香(ジト目)
「……いいな?」

宇垣 綾(ジト目)
「……いいな?」

潤が凍る。

宝条 潤(心の声)
(やばい、反射で答えた)

宙夢がニコニコしていると――

???(低音)
「……宙夢?」

宙夢の背後に、すっと現れる美女がいた。

鮫島 美優姫(にっこり)
「美人スナックママって……どういうことなん?」

羽賀 宙夢
「――ひっ!!いや、ちゃうちゃうちゃう!!誤解や美優姫!!」

美優姫が無言で宙夢の頬を掴む。

羽賀 宙夢
「いででででで!!やめいやめいや!!ちぎれるちぎれる!!」

鮫島 美優姫
「“よかった”って何?“癒された”って何?」

羽賀 宙夢
「店の雰囲気がや!店の雰囲気!!」

美優姫がにっこり圧をかける。

鮫島 美優姫
「ほな、私が癒したろか?」

羽賀 宙夢
「それ癒しちゃう!!」

遥香と綾が、ゆっくり潤の方へ振り向く。

神谷 遥香(満面の笑み)
「潤?」

宇垣 綾(満面の笑み)
「潤君?」

宝条 潤
「……えっと」

潤が後ずさる。

宝条 潤
「これは宙夢が勝手に……」

羽賀 宙夢(頬を引っ張られながら)
「先輩も乗り気でしたやん!!」

宝条 潤
「……宙夢お前」

遥香が潤の頬をガシッと掴む。

宝条 潤
「いっ……!!」

綾も潤の反対側の頬をガシッと掴む。

宝条 潤
「いだだだだだ!!ちょ、ちょっと待って!!」

神谷 遥香
「“美人スナックママ”?」

宇垣 綾
「“雰囲気良かったな”?」

宝条 潤
「雰囲気の話だよ!雰囲気!!」

神谷 遥香
「ふーん?」

宇垣 綾
「ふーん?」

潤が悟る。

宝条 潤(心の声)
(終わった)

遥香と綾が息ぴったりで言う。

神谷 遥香・宇垣 綾
「お仕置き決定」

宝条 潤
「やめてぇぇぇ!!」

友里奈は全てを理解する。

清水 友里奈
「……あぁ。これが……噂の……」

潤の両頬が引っ張られて変顔になっている。

宝条 潤
「友里奈ぁ……助けて……」

清水 友里奈
「無理無理!私、弁護士だけどこれは管轄外!」

ビルの前で響く悲鳴。

羽賀 宙夢
「いでででで!!」

宝条 潤
「いたたたた!!」

女神たちの怒りは、今日も平和に炸裂するのだった。

第24話 完

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