# 「たかが景品」が、会社の信用を傷つける――身近な内部不正を考える
「たかが景品でしょ?」
もし、そんなふうに感じたとしたら、一度立ち止まって考えてみてください。
会社が管理する物を無断で持ち出す。その影響は、持ち出した物の金額だけでは測れません。お客様の期待や、一緒に働く仲間の努力、会社が積み重ねてきた信用にも関わるからです。
## くら寿司の「ちいかわ」キャンペーンが中止に
くら寿司と人気キャラクター「ちいかわ」のコラボキャンペーンが、2026年9月6日から中止になりました。
くら寿司は、SNS上での指摘を受けて調査を行った結果、従業員による不正行為が判明したとして、景品の配布やコラボメニューなどの中止を発表しました。
出典:ORICON NEWS「くら寿司『ちいかわ』コラボ中止までの経緯」(2026年9月5日配信)
https://www.oricon.co.jp/news/2478563/
このニュースで考えたいのは、不正のしわ寄せが、行為をした本人だけにとどまらないということです。
企画を楽しみにしていたお客様。準備を進めてきた担当者。日々、ルールを守って働いている従業員。
不正によって、こうした人たちにも影響が及びます。物品の管理は、会社の信用を守ることにもつながっているのです。
## 「これくらいなら」が、職場にありませんか?
今回のニュースを、自分の職場に置き換えて考えてみましょう。
例えば、次のような場面です。いずれも、職場での判断を考えるための架空の例です。
* 余った販促品を、誰にも確認せず持ち帰る。
* 廃棄予定の備品を、自分の判断で「もらっておく」。
* 取引先から届いたサンプル品を、個人でフリマアプリに出品する。
「余っているから」「どうせ捨てるから」と考えると、大した問題ではないように感じるかもしれません。
しかし、金額や使い道とともに確認したいのが、**「誰が、持ち帰りや処分を認めたのか」**という点です。
廃棄予定であっても、会社が管理する物を自由に持ち帰ってよいとは限りません。サンプル品にも、会社や取引先が定めた扱い方があるかもしれません。
自分だけで判断せず、権限のある人に確認する。そのひと手間が、トラブルを防ぐ基本になります。
## 不正を防ぐには、注意喚起と管理の仕組みが必要
「不正はやめましょう」
研修や朝礼で、こう呼びかけることは大切です。ただ、日常の行動につなげるには、具体的な手順も必要です。
人事の立場から大切だと思うのは、「判断に迷ったときに確認できる」「不適切な処理があれば気づける」——この2つを満たす仕組みを整えることです。
例えば、次のような運用が挙げられます。
* 持ち帰り・廃棄・譲渡を許可する人を明確にする。
* 景品や販促品などの在庫を定期的に確認し、記録と照合する。
* 廃棄や無償譲渡を行う際は、対象・数量・理由・承認者を記録する。
ルールを作った後は、現場で実際に使われているかも確認します。
手続きが複雑すぎて省略されていないか。忙しいときだけ確認が抜けていないか。以前からの慣習で、曖昧な処理が続いていないか。
こうした点まで見直すことで、ルールが日々の仕事に根づいていきます。
誰が担当しても同じ手順で確認し、記録を残せるようにする。それは不正の予防だけでなく、適切に仕事をしている従業員を、不必要な疑いから守ることにもつながります。
## 職場で確認したい3つのこと
このニュースをきっかけに、自分の職場でも確認してみてほしいことが3つあります。
1.持ち帰り・廃棄・譲渡のルールは明確か
「誰が」「どのような手続きで」判断するのか、文書やマニュアルで確認できるでしょうか。
担当者の記憶や口頭での引き継ぎに頼らず、迷ったときの確認先まで明確にしておくことが大切です。
2.物品の管理が一人に集中していないか
保管、払い出し、記録、在庫確認までを一人で担っていると、誤りや不正を周囲が発見しにくくなります。
別の人が定期的に記録と現物を照合するなど、職場の規模に合った確認方法を設けているでしょうか。
3.気になることを相談できる窓口があるか
「何かおかしい。でも、自分の勘違いかもしれない」
そんな段階でも相談できることが、早期発見につながります。
上司以外の相談先があるか。相談した人の秘密が守られるか。相談したことで不利益を受けないことが周知されているか。窓口の設置に加え、安心して利用できる環境も確認したいところです。
## 自分の職場なら、どう判断するか
「余った販促品を持ち帰りたいと言われたら、誰に確認するか」
まずは、こんな身近な問いを職場で話してみてはいかがでしょうか。
答えが人によって違うなら、ルールや運用を見直すきっかけになります。
一人ひとりが迷わず判断できること。確認した記録が残ること。気になることを安心して相談できること。
その積み重ねが、会社の信用と、そこで働く人たちを守ります。
現在、こうした場面を考える事例問題と、職場で使えるチェックリストをまとめた研修資料を作成しています。完成したら、こちらのnoteでもご紹介します。
