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天離る鄙の細道 第4話                         (あまざかる ひなのほそみち)

第4話:襲い掛かる魔の手(1,955文字)

出雲空港
滑走路向かい側のレンタカーショップから、1台の車が走り出す。


レンタカーの中

「結局、丸1日かかっちまった」

編集長の言葉が蘇る。
『柿本神社の宮司の娘……原、出雲へ行け。取材だ!』
『ただし、原稿を入稿してからだ!』

携帯を取り出してメール画面を見る。
【待ち合わせは出雲市立医療センターで 綾部】

返信画面に切り換え入力。
【松江空港到着 20分程でそちらへ 原】

大通りに出る交差点、ハンドルを右に切って走り出す。


出雲市立医療センター・玄関前ロータリー

玄関脇のベンチに座っている玲子。
深呼吸して目を閉じる。

『人麻呂様の遺言でもある』
『だが、もう護り切るのは……』
『解禁の時期なのかもしれない』

「お父さん……」

ポケットから小袋を取り出す。

「1300年、先代48人のメッセージ……」

貸金庫の鍵を見つめながら考え込む。
そして満月を見上げる。

【巫女衣装で、綾部からお祓いの所作を習う幼少の玲子】
【正月の参拝者へ、社務所で御朱印を書く成長した玲子】
権禰宜ごんねぎの就任式、浅黄色あさぎいろの装束姿の玲子を祝う綾部】

自身の成長過程の傍らに、いつも綾部が寄り添っていたことを懐かしむ。

「私は……」
鍵を強く握りしめる。

「私は柿本神社50代目の後継者」

と、車のライトが玲子の顔を照らす。
「あっ、原く……?」

赤橙せきとうを灯した車が玄関前に止まる。
「……警察?」

『松江のアーバンホテルに安藤泰長、という人がいる』
『どういう方?』
『会って直接本人に聞くと良い……』

助手席のドアが開き、サングラスの男Aが出てくる。

運転席の窓が開く。
運転手の男Bもサングラス。

男A、優し気な口調。
「綾部、玲子さんですね?」
「ええ、あの……安藤さんですか?」

男A、運転席の方を振り向く。
男B、左手で自分を指差しながら

「私が安藤です。同行を願いたい」
「……事情聴収、ですか?」

頷いて男B、後ろを指差すと後部ドアを開けて男Aが促している。

「聴収は既に受けていて」
「再度確認したい事があってね」

玲子の腕を掴む男A。
「左ハンドル……」

掴まれた腕を振り解き、後退りする。

「もうこんな時間ですし、私これから」
「間に合わないんだよッ」

荒声を上げ男B、ドアを開けて立ち上がる。

「初めて会ったばかりで、そんな大声」

男B、サングラスを外して
「失敬……我々も急いでいてね」

笑顔だが一重瞼の冷酷な目つき。

『彼は赤ん坊の時からお前を知っている』

「すみませんが、警察手帳を見せていただけませんか?」
「……仕方ないねえ」

内ポケットに手をやる男B。

再び男Aが腕を掴もうとして玲子が躊躇した瞬間
男Bが鼻と口をハンカチで塞ぐ。

「なッ……!?」
「口伝は終わったか?」

驚嘆する玲子が後部座席に連れ込まれそうになる刹那
けたたましいクラクション音が鳴り響く。

振り返る男A、B。

ハイビームのパッシングライトに男達が怯んだ瞬間
掴まれた腕を振り解き、走り出す玲子。

「原君ッ!」
原の車へ両手を広げて向かう。

「綾部、早く乗って!」

玲子を乗せた原の車、赤灯車を擦り抜け玄関前を旋回して公道へ。
男達も車に乗り込み、追走始める。


国道431号線

スピードを上げて走る原の車。
前方の車を複数抜いて追いかける赤橙車。


原の車

助手席で体を震わせている玲子。
「病院に着いたと思ったら……一体どうしたんだ?」
「私にも……何が何だか」

バックミラーを見る原。
「覆面パトカー?」
「違う、ハンドルが」

左ハンドルと外車ナンバーを確認する原。

「偽造車を使ってまで、となると」

アクセルを強く踏む。
「出雲大社も燃えるわけ、だ!」

爆音を立てて走る原の車。
右手に宍道湖、その奥に松江市の明かり。


赤灯車

男Aがライフル銃を組み立てている。
運転手Bがスイッチを押し、助手席の窓が開く。


原の車

「アイツらと心当たりは?」
「いきなり襲い掛かられて……最初、安藤さんと名乗っていたけど」

「安藤?」
「父から今夜は松江のホテルに泊まるよう……そこに安藤という人がいるからと」

「警察官?」
「判らない。けど私を護ってくれる人だと」
「その安藤さんて人に成り済まして?」

原に振り向く余裕もなく、正面を見たまま頷くのが精一杯の玲子。

「こんな手の込んだ方法で……綾部、君を襲う襲う理由は?」

『口伝は終わったか?』

下を向いたまま、目を閉じ両手で顔を覆う。
「答えられないことだと……ゲッ!」

バックミラーにライフル銃を構えた男A。
「綾部、伏せてッ」
「?」

原が玲子の首根を押し下げた瞬間、大きな発砲音。
後方ガラスに被弾の跡。

車線を跨いで左右に揺れて走る原。
連続して発砲音、一つが反対車線の車に被弾。

「映画じゃないっつーのッ!」

被弾した車が止まり、老人が出てきて携帯をかける。
携帯画面には110の数字。

【第5話《カーチェイス》に続く】






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