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幸せのキャップ|【エッセイ】こころの因数分解

水は買ってでも飲みたかった


 私が高校生の頃、水は自動販売機で売っていませんでした。

 その頃の私達にとってさだまさしさんは、アイドルでした。ある夏のイベントにファン仲間の女の子達と行ったとき、屋外で開場まで待っていなければならないことがありました。

 のどが渇き、ジュースを飲むのですが余計にのどが渇くので、私達は、かき氷に手を出しました。しかしシロップがかかっていて、ここでも苦しみました。

 そこで私はとうとうかき氷屋の若い男の人に言ったのです。

「シロップはいりません」

 男の人は一瞬「え?」と言って身を引きましたが、すぐさま体を乗り出して「シロップほんとにいらないんですか?」そう言って、怪訝そうです。

 しかし、私の要求どおりに、ちゃんとかき氷だけを作って手渡してくれたのでした。

 それ位水が欲しかったという話です。

 行ったことはありませんが、砂漠でジュースは飲みたくないのではないでしょうか?

 何かに乾き、コーヒーを飲んでも、麦茶を飲んでも駄目なとき、たった一杯の水道水に「ああ、これだ」と思います。

 その時代「水はタダ」のものでした。だから商機を見いだせなかったのかもしれません。それから程なくして自販機でも水が買えるようになりました。

 あのとき私達の様に買ってでも水が飲みたい人の需要は、今の世の中を見れば確かにあったと思います。

 懐かしい夏の日の出来事です。

夏のキャップ夏の日傘


 私は夏が苦手です。暑いし、汗かきだし。クーラーのある部屋でじっとして涼を取っている生活が性に合っている気がします。

 だから「一夏のバカンス」とか「秋にお別れ」みたいな恋は、夏に燃え上がらないから縁遠いものなのです。

 プールにもいかないし海にも山にもいかないという生活様式でした。

 夏嫌いの私は長らくキャップを被りませんでした。日傘派だったからです。

 汗かきな人ならわかると思いますが、帽子を被ると汗で髪の毛がぺたんとなってしまって帽子を取った時に具合が悪いのです。

 だけど、

 だけども、

 私は今キャップを被っています。

 夏になったらどうなのか。ダメでしょうと思うのです。

 やめてしまうのかしらと思いますが夏になったら日傘にして、又秋になったらキャップの生活かもしれません。

憧れのキャップを手に入れた


 帽子には憧れがありました。

 ずっと帽子のある生活になったら、どんなに素敵だろうと思っていました。

 キャップを被りたかったのですが、以前私が被ろうと手にしたキャップは、いつでも頭周りが小さかったのでした。きつきつになってしまってキャップが被れないのです。

 最近見つけたキャップは調節用のベルトが付いていて、その端がキャップの中に隠れて納まるようになっていました。

 キャップに調節用のベルトが付いたことを知った私はスーパーの衣料品売り場に向かい、そこでお目当てのキャップを手にしました。それがベージュのキャップでした。

 私は黒を身に付けると黒の割合によるのですが、胃のあたりがぎゅっとなって気持ちが沈んでしまいます。だから黒はやめました。そして色の服を時々着るので、それにも合わせやすいようにベージュにしました。

 そんなわけで今はそのキャップを被って、学校へ行っています。

幸せの仕上げにキャップ


 キャップや帽子は目立ちたがりがするものと教えられて育ちました。

 私は目立ちたがりだったようで、キャップを被っています。


 キャップを被っている人を観察していたら、こんなことを思いました。


「ベビーカーを押す若い奥さん」

「独り身かしらと思う若い子」

そして

「私」


 どういう形態であれ、

「私、今"私が私"でとても幸せなの」

 と言ってるように見えます。


 「今」が「満たされていて」「幸せ」。その仕上げに「キャップ」を被っている。

 そんな風に見えたと言ったら大げさでしょうか。

 自分がそんなだから人もそんな風に見えるのでしょうか?

 でも、共通項を探すと全然タイプも世代も生活形態も違う気がするのに、「キャップ」を被っている。

 それはじゃあどんな人?と自分に聞いてみたらそんな答えが返ってきました。


 大げさでも良いです。

 間違っていても、

 ただ、

 なんだかそんな気がしたということです。



#2シリーズこころの因数分解

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