学校を休んだのに、ゲームで笑っている。「行けたんじゃない?」と言いたくなるとき
朝は、あんなにつらそうだったのに。
たとえば、「学校に行きたくない」と泣く子を前に、今日は休むと決めた日。学校に連絡して、仕事の予定も調整した。休めるかどうか、預け先はないかと連絡を重ねて、ようやく一段落ついた昼前。
部屋から、ゲームの音と笑い声が聞こえてくる。
ほっとするより先に、言葉が出そうになります。
「そんなに元気なら、学校に行けたんじゃない?」
休ませたことが間違いだったのか。このまま家で遊ぶほうがよくなってしまわないか。こちらは朝からずっと大変だったのに。
楽しそうな姿を喜べない自分にも、少し疲れます。
そんなときは、「学校に行けたかどうか」と、「今、ゲームを終えてほしいこと」を、いったん分けて話してみる。
腹が立っている理由を全部片づけられなくても、次の一言を考える手がかりになります。
昼に笑っていることだけでは、朝のことは分からない
家で楽しそうにしている。それは、今見えている姿です。
ただ、その姿だけで、朝も学校で過ごせたかどうかまでは分かりません。教室で一日を過ごすことと、家で好きな遊びをすることでは、周りの人も、求められることも違います。
逆に、「元気になったから、休ませて正解だった」とまで急いで結論を出さなくてもよいのでしょう。何がつらかったのかは、まだ分からないままです。
朝は玄関で泣いていた。昼にはゲームで笑っている。
今日の様子として、その両方を覚えておく。「朝は本当に行けなかったの?」と、昼の姿を見ながら問い直す前に、そこで止めてみます。
今、楽しめていることを、そのまま明日の登校の約束につなげなくてもかまいません。
ゲームを止めたいなら、今困っていることを伝える
とはいえ、昼食に呼んでも来ない。音が大きくて、仕事の電話ができない。そういう困りごとは残ります。
「学校を休んだんだから、ゲームはなし」
と言いたくなったら、今、何を変えてほしいのかを一つにしてみます。
「ごはんにするから、ここでいったん終わろう」
「これから仕事の電話をするので、音を小さくしてほしい」
食事や音のこととして伝えると、子どもに何を求めているのかは具体的になります。
もちろん、それで素直に止めるとは限りません。「あと少し」と返されて、また言い合いになることもあるでしょう。
そんなときも、「学校を休んだくせに」を足さずに、
「続けたいのは分かった。でも、ごはんの時間だから終えてほしい」
と、今の話に戻したいです。
ふだんの約束があれば、それを手がかりにする。休んだ日の過ごし方を決めていなかったなら、腹が立った勢いで一日分の禁止事項を増やすより、
「今日はまだ決めていなかったね。まず、ごはんのときはいったん止めよう」
と、今必要な区切りから相談する方法もあります。
体調が悪いときは、遊びの約束より、休養や必要な受診を優先します。
「こっちだって大変だった」は、なかったことにしない
仕事を休んだ。予定を断った。何度も連絡を入れた。
そのあとで笑い声が聞こえてきたら、「私の今日はどうなるんだろう」と思うこともあるでしょう。
親にも、後回しになった仕事や、引き受けた負担があります。子どものつらさを考えたからといって、それがなくなるわけではありません。
ただ、「あなたのせいで仕事を休んだのに」と返すと、子どもには、朝のつらさより親への申し訳なさを説明しなければならない会話になってしまうかもしれません。
言いそうになったら、整った説明をしようとせず、
「今、私も余裕がなくて、強い言い方になりそう。少し落ち着いてから話したい」
と、いったん会話を区切ることもできます。
そこで言葉を飲み込んだあと、負担まで一人で引き受け続けなくてよいと思います。
「急な欠席のたびに、仕事を調整するのは難しい」
その事情も、学校への相談に含めたいです。頼める家族がいることも、家で仕事ができることも、当然の前提にはできません。
学校には、朝と昼の様子を両方伝える
次に学校へ連絡するとき、昼には笑っていたことを隠す必要はありません。ただ、「休んだら元気でした」だけだと、朝に何が起きていたかが抜けてしまいます。
たとえば、こんなふうに伝えられます。
今朝は玄関で泣き、登校できませんでした。昼には食事を取り、ゲームで笑う様子もありました。何がつらいのかは、まだ本人もうまく話せていません。学校での様子も伺いながら、今後の対応を相談したいです。
泣いた場所や食事の様子は、実際に見たことに置き換えます。一日を細かく記録してからでなくても、覚えている範囲で伝えられます。
仕事の調整が難しい場合は、
「欠席が続くと、家庭だけでは対応が難しい事情もあります。相談できる先を教えていただけますか」
と添えることもできます。
学校だけですべて解決できるとは限りません。それでも、家庭がどこで困っているのかを共有することは、支え方を考えるための材料になります。
強い体調不良や安全の心配があるときは、昼に笑っている時間があっても、それだけで問題がないとは判断せず、学校や医療機関などに相談します。
「行けたんじゃない?」と、もう言ってしまったかもしれません。
あとから言い直すなら、短い言葉でも。
「さっきは、笑っているから学校にも行けたんじゃないかって言っちゃった。朝のことは、それだけじゃ分からないね」
そして、ゲームを止めてほしいなら、その話をする。
「ごはんができたから、いったん終わろう」
まだ、すっきりしない気持ちは残っているかもしれません。
それでも、お昼に呼ぶ一言に、朝のことまで足さずに済んだ。今日は、そこで区切ってもよいのだと思います。
※場面・会話・連絡文は、関わり方を考えるための例です。特定の家庭の体験談ではありません。
参考:文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について」。個々の状況に応じた支援を考えるうえで参照しています。本文の会話例やゲームの約束そのものを示した資料ではありません。
