「曲さえ広まればいいと思っていた」“顔出しナシ”で活動するMel、ライブを重ねて変化した思い
アーティスト・Melが、8月8日に2nd Full Album『LIFE』をリリースする。淡く、チルな空気感をまといながらも、等身大の言葉と旋律で聴き手の心に静かに触れてくる楽曲の数々は、Z世代を中心に共感を呼び、国内外で支持を集めてきた。インタビューでは、北海道で過ごした原風景や制作スタイル、“顔を出さずに活動する”という匿名性との向き合い方、そして“Melらしさ”を更新し続けるこれからについて、率直に語ってもらった。


■夜が似合う”Melの音楽は、北海道の静けさから生まれた


ーー(※取材前日、東京・下北沢でライブ出演)昨日のライブを見に行ったんですが、打ち込みの楽曲だけで終わるのかと思いきや、ギターの弾き語りもあったのが印象的でした。
「ありがとうございます。ライブはまだ10回ちょっとで経験も浅くて、毎回終わった瞬間に反省点がぶわーっと出てくるんですよ。でも、ネガティブな気持ちには全くならなくて、昨日は、2024年12月に渋谷でやった以来の東京でのライブで、“ただいま”っていう気持ちがありましたね」
ーー「チルなビート」がキーワードになっているMelさんの曲調的に、野外で聴くのも気持ちよさそうだなと思いました。
「ああ、そうですね。それも昼間にやるんじゃなくて、夜とかサンセットの方が自分の曲には合ってると思います。海沿いとかでもやってみたいですね」
ーー“夜”に合う曲が多く生み出されているのは、普段の生活が影響しているんですかね?
「それはあるかもしれません。僕、北海道出身で、それも結構田舎のほうなんですよ。家の前に田んぼが広がってて、遠くに山が見えて、星もきれいで虫の声も聞こえて“ザ・田舎”っていうか。家の前も静かなんで、夜に散歩するのがすごく気持ちよくて。そういう環境は間接的に影響してるんじゃないかなって思います」
ーーじゃあ北海道で生まれた曲が主なんですね。
「ただ『東京ナイトロンリー』って曲は、東京のホテルに泊まっているときに、締切が迫るなかで生まれた曲なんです(笑)。窓から外を見下ろしたり、街を歩いたときに感じたことが、そのまま生かされています。北海道と違って、こっちは時間の流れが圧倒的に早くて、その分アップテンポになっていたりします」

■遊びから始まった音楽制作と、“らしさ”が生まれるまで


ーーMelさんが曲を作るようになったのはいつ頃からなんですか?
「4〜5年前くらいですね。趣味でTwitter(現:X)にポンっと曲を載せていたんですが、無名だったにも関わらず、たまに300いいねとかついたりして。シンプルに楽しかったんですよね」
ーー結構最近ですね。いきなり音楽ソフトを使いこなすのは難しくなかったですか?
「最初はYouTubeで『フリートラック』って検索して、誰でも使っていいトラックに歌詞をつけてました。そこから他の人の曲をたくさん聴いて、どうやって歌詞を並べてるのかを研究しながら作っていったら、ちょっとずつ自分らしさも見えてきて。最初はマネでも、1〜2年経って、自分なりの形が見えてきましたね」
ーーもう今はギターでも作っているんですよね。
「はい。フリートラックって、種類にも限界があるからみんな同じもの使うんですよ。だからギターを使ったり、トラックメーカーさんに頼んで、上がってきたトラックに自分の歌をのせるっていう形も採用したり、”自分だけの音”を確立しようと模索してます」
ーーそんなMelさんの「音楽の遍歴」も気になります。
「これは小学生のとき、たまたまボーッと観ていたMステ(ミュージックステーション)で、SEKAI NO OWARIさんの『眠り姫』が流れてきて『なんだこの曲は…』って思ったのがきっかけです。当時スマホもなかったから、ニンテンドー3DSで録画して何度も見返して、歌詞も覚えて。そこから音楽にのめり込んでいきました」
ーーやがていろんな音楽に触れていったと。
「そうですね。ヒップホップとかビートが強い曲とかも聴いていたんですが、コロナ禍の頃にRin音さんやクボタカイさん、空音さん、Teleさんのような“おうちでも聴けるチルなミュージック”に出会いまして。今まであんまり聴いてこなかったジャンルだったんですけど、すごく衝撃を受けて。『自分もこんな曲を作ってみたいな』って思ったんです」

■「顔を出す・出さない」に縛られない。Melが大事にしたい自由さ

ーーMelさんは顔出しをしない、匿名性を意識したスタイルですが、そうしようと思った理由はあるんですか?
「もともとは曲が評価されればそれでよくて、“自分が前に出る必要はない”って思ってたんですよ。ライブも最初はやりたくなかったくらいで(笑)。でも、去年の初ライブで『こんなに自分の曲を聴いてくれてる人がいるんだ』って体感して、届けたい相手が明確になったというか。だから今は、誠意を持って届けたい気持ちの方が強いです」
ーー先ほど話に上がった「東京ナイトロンリー」のMVも、少しずつ顔が見えるような映像になってきてますよね。
「そうですね。徐々にですけど、もう前にカメラが来てもいいかなみたいな気持ちは芽生えてきてて。この前撮ったMVも、なんとなく顔がわかるくらいの映像になってます。おそらく『あれ、いつの間にか顔が出てた』くらいのゆるさで進んでいくと思います(笑)」
ーーその変化にともなって、曲調にも影響が出たりする可能性も?
「多少はあるかもしれないですね。明るい雰囲気の曲も増えてきたと思います。でも、『Melってこういう音楽だよね』っていうレールが敷かれたら、それを裏切りたくなるタイプなんです。縛られたくないというか。変化する方が好きなんだと思います」
ーーあと、Melさんは海外からのファンも多いのも特徴ですよね。中国の動画サイト『bilibili』でもライブ配信していたりとか。
「そうですね。2024年8月から、YouTubeだけじゃなくbilibiliでもライブ配信を始めたんです。結構中国や台湾などアジア圏のリスナーが多くて、『曲も好きだけど、声が好き』って言ってくれる方が多いです。Eveさんみたいに、アジア圏で人気のある声質があるのかもしれないですね」
ーー今後の活動について、具体的な目標などは?
「『これを達成したい!』みたいな明確なものはあまりなくて、ひとまず8月8日に新しいアルバムが出るので聴いていただきたいです。全12曲なんですが、バランスも本当に良くて、そのうち4曲は自分でもアレンジに関わっています。次の作品はすべての曲を自分でアレンジできていればいいですね」

【リーズンルッカ’s EYE】Melを深く知るためのQ&A
ーーMelさん、なにか趣味は持っていますか?
「趣味……これといってないんですよね。もう音楽作るのが趣味みたいになっていて、制作の合間で別の自分の作りたい曲を作るみたいな。それが息抜きになっているんで、音楽が趣味ですね。完全に。いや、でも本当は何か言いたいんですけどね。休日にサウナ行ってリラックスしてますみたいな。基本ずっと家にいて、寂しくなったらいろんな友達に電話かけて、『今から遊びに行こう』って急に外出することもあります」
ーーそもそも曲を作るときは、ひとりの時間が大切ですからね。
「そうですね。前に友だちと遊んでて、めっちゃ失礼なんですけど、制作したくなって急に帰ったことがあります(笑)」
<編集後記>
インタビュー中、終始穏やかな口調で丁寧に言葉を選びながら話していくl。素顔は生粋の音楽好きで、「趣味は音楽」という一言にもまったく誇張がないことが伝わってくる。北海道のバンドや、洋楽の話題をふると、ふっと表情がほぐれて興味深そうに耳を傾けてくれたのも印象的だった。匿名性を大切にしながらも、取材中には率直に自身の過去や変化を語る姿に、Melという表現者の“誠実さ”を見た気がする。距離を取ることで伝えたいものが、むしろ明瞭に浮かび上がるーーそんな不思議な余韻を残す時間だった。
<マネージャー談>
北海道出身というのも関係しているのか素朴な少年という印象です。裏表もなく、とても素直で純粋ですね。
朝に弱く、抜けているところもありますが、最近はしっかりしてきたかな?笑
音楽のことを話す時のMelはすごく楽しそうだなといつも思います。
Melの紡ぐ音楽と声は世界に通用するものだと信じています。Melの魅力を世界中の人に伝えられるようにマネジメントも尽力いたします!
【プロフィール】
Mel(める)
「チルなビートと優しい声で言葉を紡ぐ次世代チル系シンガー」として2020 年に音楽活動を開始。2021年1 月にリリースをした2ND シングル「彗星と街」は、2021年S POT I F Y のバイラルチャート入りストリーミング総再生回1,000万回再生突破のヒット曲となった。2023年前作「夜のマジック」に続き「DANCING WITH YOU 」を2ヵ月連続でリリース。2024年自身初の1st DIGITALALBUM「ノンフィクション」をリリース。収録曲「コヨイノウタ」はTVドラマ『恋をするなら二度目が上等』のOP主題歌に、続く配信SG 「東京ナイトロンリー」はTVドラマ「25 時、赤坂で」のED主題歌に抜擢されるなど、話題を広げている。
取材・文/東田俊介
写真/SHUN ITABA
