【雨の日には】 #青ブラ文学部
雨って好きだよ
あの人はそう言った
ちょっとインテリでおしゃれっぽい人って大体みんなそう言うの
そっちは雨降りなの?
雨の日は
雨音に耳を傾けて
静かに本を読むんだ
キミならどんな本を読む?
今日は少し肌寒いから温かい紅茶を淹れてもいいね
体冷やさないようにね
車の運転も気をつけて
優しげな文字が並ぶ
二度と見ることなんてないと思ったあの人からのメッセージ
私も雨の日が嫌いじゃなかった
窓の外の雨音を聴くのも
霧のようなやわらかな雨の中を走るのも
窓に当たる雨が世界を歪ませているのも
土砂降りの中アトラクションみたいな高速道路を走るのも
「もう無理だよ」
あの人にそう言われた日も雨だった
駅を出ると雨が降っていて
傘は持っていなかったけれど躊躇なく歩き始めた
もう無理…あの人の言葉を反芻する
そうだよね
もう、無理だよね
そう仕向けたのは私の方
立ち止まり
どこまでも続く灰白の空を見上げる
次々と落ちてくる無数の雨粒を眺めていると
傘をさして犬の散歩をしていたおばさんに心配された
黄色のカッパを着させられた犬は
濡れた鼻先で私の足元を散々嗅ぎ回り
気が済むと早く行こうとおばさんを引っ張った
風邪ひいちゃうから
とおばさんはポケットからハンカチを出す
あ、もう帰りますんで大丈夫です
頭を下げてハンカチはお断りした
あの日
傘はいらないよ
そう言って足早に歩き始めたあの人に必死でついて行った
駅に着く頃には2人ともびしょ濡れだったっけ
好きだったな
でも私には無理だった
雨の日は嫌いじゃない
知ってる
ちょっとインテリでおしゃれっぽい人って決まってみんなそう言うの
✿︎こちらの企画に参加させて頂きました✿︎
