ZINEフェス東京に出展した日のこと
初めて作ったzineをzinefestに出展した。50冊刷った初刷がまだ10冊以上も手元にあるのに、調子に乗って30冊も増刷した。あわよくばって欲が出て300円の値上げもした。必死。隠すようにヘラヘラする。別にあなたに買っていただかなくても、届くべき人に届けば良いんです私、とかそんな余裕な顔を準備して、こんにちはって言う。必っっ死。気持ち悪い。
スポーツ選手が負けたときによく言う言葉。
「今回は負けてしまったけれど、今までの日々は無駄じゃなかったと思います」
私はこの言葉が凄く、凄く嫌い。そんなわけないんだもん。そんなことあるわけ。負けたら全部無駄だもん。一番てっぺんじゃなきゃ意味ないもん。報われなかったあのとき苦しくて死にそうになっていた自分も、お前のやってたことは無駄じゃなかったとか言われたら、そんな慰めクソムカつくと思うよ。だってそのときの自分は勝ちだけを求めていたんだよ。無駄じゃなかったなんてそんな言葉、ただの責任放棄だよ。
zineを売る私は完全に“今までの日々は無駄じゃなかったと思います顔”をしていた。選手時代から考えれば苦しかったことも少なくないのに。今よりずっと必死でボロボロだったのに。自分の苦しさや辛さなんて誰にも分かるはずなくて、それだって痛いほど分かってるのに。差し伸べられる手を待っている側の人間がご立派に、勇気を与える側みたいな顔してあらゆる方向に手を伸ばしていたら振り払われた。30冊分怪我をした。いっっったい。
自分のブースを離れているときだけはいつもの自分のままでいた。卑屈な、身を隠しているようなそんな感じの自分。透明な、ある程度固い何かが私の半径30cmくらいを囲んでいる感じ。誰にも分かられなくていいし、分からなくてもいいけど、気になる人には少し自分の話をするし、相手の話も少し聞く。少し喋って危険だと思ったらとりあえずたくさん笑っておく。特に大人数での食事の場やこんな感じのイベントに来るときはいつもそうしているはずなのに、そのときだけは喋りすぎてしまった。いつも怖くて人に言えないことを、よくもまあするすると。気がついたら私は自分のzineを手に取って急いで階段を降りていた。お金は要らないです、とか言ってた。主人公のフリでもしてるのかって階段登りながら少し恥ずかしくなったけど、あのとき、久々に自分だった。必死で、気持ちが良い自分。届くべき人に届けばいいって、そんなんじゃなくて、届けたい人に届ければ良いって、そう思った。
帰りの電車で泣いた。泣くだけ泣いたらついにスイッチが切れて居眠りした。隣のお姉さんに舌打ちされても謝るしかないくらいに頭をぐわんぐわんさせて寝ていた。そんなことはどうでも良くて。必死でいたいと思った。必死でいることを隠さないでいたいと思った。過去の自分を今のためにしてしまうんじゃなくて、そのときを生きていた自分にひとこと「ご苦労様」と言えるように。そんな風に、今を必死に生きていたいと思った。
