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遠回りの途中で── 一歩進んだはずなのに

動き出す前は、
もっと何かが変わると思っていました。

不安と期待が混ざった、
先の見えない感じ。
例えるなら、
初めてジェットコースターに乗る前の、
あの落ち着かない高揚感。

怖いけど、
どこか楽しみで、
「これで何かが始まる気がする」
そんな錯覚もありました。



でも、
実際に動いてみると、
拍子抜けするほど、静かでした。

大きな音も、
劇的な変化もなく、
日常は、何事もなかったように続いていく。

拍子抜け、というほどでもない。
ただ、
「ああ、こんなものだったな」
という感覚が残った。



それは、
喜びでも、失望でもなく、
感情の名前がつかない感じ。

以前にも、
似たような瞬間があった気がする。

期待して、
踏み出して、
それでも日常は静かに流れていく。

特別な達成感もなく、
後悔するほどの失敗でもない。

ただ、
「動いた」という事実だけが、
あとから、じわっと残る。

動いたあとに残ったのは、
達成感でも、安心でもありませんでした。

「これでよかったのか?」
そんな問いが消えるわけでもなく、
むしろ、少し形を変えて残っていた気がします。



動く前は、
一歩踏み出せば、何かがはっきりすると思っていました。

自分の気持ちも、
進む方向も、
正解かどうかも。

でも実際には、
何も確定しなかった。



前に進んだはずなのに、
不安はなくならない。

かといって、
立ち止まりたいわけでもない。

その中間の、
どこにも名前のつかない場所に立っている感覚。



拍子抜けした、というより、
「こんなものか」と思った自分に、
少し驚いていました。

あれだけ悩んで、
あれだけ迷って、
ようやく動けたのに。

世界は、
相変わらず静かでした。



それでも、
一つだけ違っていたことがあります。

動く前の自分は、
「動けない理由」を探していました。

動いたあとの自分は、
「この先、どうするか」を考えている。

答えは出ていない。
安心もしていない。

でも、
視線だけは、確実に前を向いていました。



一歩進んだからといって、
すぐに楽になるわけじゃない。

むしろ、
見えるものが増えて、
迷いは少し増えたかもしれない。

それでも。

動く前より、
「自分で選んでいる感覚」だけは、
確かに残っていました。



正解かどうかは、まだ分からない。
この先どうなるかも、分からない。

でも、
何もしなかった時間より、
ずっと静かに、納得している自分がいる。



一歩進んだはずなのに、
安心はしなかった。

それでも、
進むこと自体をやめたいとは、思わなかった。

たぶんそれが、
今の自分にとっての、いちばん正直な感覚です。

遠回りの途中で。

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