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「あなただけのプログラム作ります」って、どうやって作ってるの?

【執筆者紹介】

銀座で下半身痩せ専門のパーソナルジムをやっている今村雅史です。中学バスケ部のコーチもしていて、会社の業務はAIに任せて回しています。 詳しい自己紹介と、出している本の案内は記事の最後にまとめています。それでは本編へ。

パーソナルトレーニングのジムって、だいたいどこも「あなたに合ったプログラムを作ります」って言いますよね。

でも正直、「あなたに合ったプログラムって具体的に何してるの?」って思いませんか?

体重と目標を聞いて、あとはなんとなく経験で決めてるんじゃないの?、どこのジムも同じようなことしてるんじゃないの?、って。

鋭いです。

実際そういうケースも多い。

というか多分ほとんどそうだと思います。

なぜそうなってしまうのか?

それには、いくつか理由があります。

一つ目は資格の問題です。

パーソナルトレーナーの資格は、種目の知識や栄養の基礎は教えてくれます。でも「まず評価してから種目を決める」というプロセスはほとんど教えません。だから資格を取っても、いきなり種目から入るトレーナーが量産されてしまいます。

評価を教えてくれるのってFMSとかSFMAくらいじゃないですかね?

二つ目はビジネスの問題です。

体験セッションでいきなりきつめのトレーニングをやらせると「すごいトレーニングだった」と感じてもらいやすい。評価から入ると「なんか測られただけ」と思われるリスクがある。つまり評価を飛ばす方が、短期的には売れやすいのです。

三つ目は自分の成功体験の問題です。

自分がスクワットで結果が出たから、お客さんにもスクワットをやらせる。自分の体を基準にしてしまっています。

悪意があるわけではありません。

ただ、その結果として、あなたの体に合っているという根拠がほとんどないプログラムが量産されているのが現実です。

私はこの問題に対して、別のアプローチをとっています。私がやっている評価方法は、NFLやNBA、オリンピックアスリートのプログラムを設計しているトレーナーたちが使っているものと同じ評価方法を、少しアレンジして取り入れています。


NFLやNBA、オリンピック選手と同じ評価法を取り入れています

Gray Cookというアメリカの理学療法士が開発したこの動作評価システムは、NFL・MLB・NBAなど主要プロスポーツリーグで標準的に使われています。

考え方はシンプルで、「できない動作に負荷をかけるな」というものです。

世界トップレベルの現場では「動作評価なしにトレーニングを始めない」が当たり前になっています。

アスリートの現場では当たり前のことが、一般向けのジムではほとんど行われていない。うちはその評価をアスリートとか関係なく同じようにやっています。

でも「目的」だけでは何も決まらない

「脚を細くしたい」という目的を聞いたとして、そこからいきなりスクワットをやってはいけません。

でも、なんで多くのトレーナーがスクワットを処方するのか?

理由はいくつかあります。

「大きな筋肉から小さな筋肉を鍛える」

「多関節運動から単関節運動へ」

これはトレーナーの世界で長年言われてきたセオリーです。

下半身を鍛えるならスクワット→デッドリフト→ヒップアブダクション、という流れで組むのが「教科書通り」とされてきました。BIG3の一つだから、SNSや雑誌で広まったから、自分がそれで結果を出したから。

このセオリーの起源は1940〜60年代にまで遡ります。Joe Weiderというボディビルの第一人者が「ウエイダー・トレーニング原則」をまとめ、その中に「大筋群から先に鍛える」という考え方が含まれていました。

根拠は「大きな種目は疲れた状態でやると技術が崩れて危ない、だから体力があるうちに先にやる」という実用的な理由と、「大きな種目は多くの筋肉を一度に使えるから効率がいい」という経験則でした。

これがボディビルカルチャーを通じて広まり、NSCAなどのトレーナー資格のテキストにも「原則」として載るようになりました。ボディビルダーがやっていたことがセオリー化されて、疑いなく受け継がれてきたというのが実態です。

問題はここからです。

筋肉を大きくすることを目的としたボディビルダーの経験則が、脚を細くしたい一般の方にそのままあてはめられるようになりました。目的も体の状態も違うのに、セオリーだけが独り歩きした。

そして「あなたの体を評価した上で決めた種目」ではなく「セオリー通りになんとなく決めた種目」が量産されていきました。

問題はスクワットそのものではありません。

「今のあなたにスクワットが使えるかどうか?」を確認する前にスクワットをやっていることが問題なのです。

先ほど紹介したGray Cookのシステムが広まった背景にも、同じ問題がありました。「動けない状態のまま負荷をかけていた」ことが怪我の根本原因だったのです。

これをきっかけに、アメリカのスポーツ医学や理学療法の現場では「まず動作を評価してから鍛える」という考え方が広まりました。できない動作に負荷をかけても、体はその動作を正しく覚えることができません。それどころか崩れたまま動き続けることで、怪我のリスクが上がり、鍛えたいはずの部位とは別の部位ばかりが発達してしまう。

だから世界トップレベルの現場では「動作評価なしにトレーニングを始めない」が当たり前になっています。

目的はゴールの方向を示すだけです。

地図で言えば「東京に行きたい」という情報だけあって、今自分がどこにいるかわかっていない状態。今いる場所がわからなければ、どの道を使えばいいかも、どのくらいかかるかも、何も決められない。

だから私がまず最初にやることは、あなたの体の「現在地」を知ることです。

「ちゃんとしゃがめるか」を見る

現在地を知るためにやることはシンプルです。

一つ例をあげると、両腕を頭の上にまっすぐ伸ばしたまま、できるだけ深くしゃがんでもらいます。

たったこれだけ。

でもこの一つの動作で、足首・ひざ・股関節・体幹・肩甲骨・お腹の捻り、これだけの部位の状態が同時に見えてきます。

かかとが浮く人、腕が前に落ちる人、ひざが内側に入る人、上体が極端に前に倒れる人。崩れ方は人によって全部違います。

私の場合、動作を動画で撮影し、動きをトラッキングすることで、各関節がどのタイミングでどの速度で動いているかを数値として記録しています。

目視では気づきにくい左右差や動きの順番のズレも、データとして確認することができます。

問題が見つかったら、その種目はいったん外す

評価で問題が見つかった動きは、まずメニューから外します。

「え、じゃあ何するの?」ってなりますよね。

できない動作に負荷をかけても、体は崩れたまま動き続けるだけです。崩れたパターンで何度も繰り返すと、その崩れがどんどん強化されていきます。

Gray Cookはこれを「できていない動きのまま鍛えても、できていない動きが強化されるだけ」という言葉で表現しています。

「スクワットをやるほど前ももが太くなった」という経験をお持ちの方がいると思います。

あれはスクワットが悪いんじゃなくて、必要な動きが整っていない状態でスクワットに負荷をかけたことが原因です。

なぜいきなりスクワットで足が細くならないのか?

しゃがむという動作には、正しい順番があります。

まずかかとに体重が乗ります。かかとには骨盤周囲にある小さなお尻筋肉(内閉鎖筋)のスイッチがあります。この筋肉は骨盤を90度回り込んで太ももの骨に付着しているという独特な構造をしていて、かかとが地面についた瞬間に信号が脳へ送られます。

このスイッチが入ることで太ももの骨が股関節に正しく収まり、お尻が最も効率的に力を出せる土台が完成します。筋電図による研究では、動作を始める直前にこの小さな筋肉はお尻の筋肉よりも数ミリ秒早く働くことが確認されています。体はお尻を動かす前にまずこの小さな筋肉で関節を保護するというプログラムを持っています。

この土台の上でお尻がブレーキをかけるように体重を受け止めます。このブレーキがかかることで股関節と膝が一緒に曲がり、最後に足首が動きます。

ではこの順番が崩れるとどうなるか。

踵ではなくつま先重心になると、このスイッチが入りません。お尻のブレーキが機能しないか膝から先に曲がり始め、体重を受け止める役割が前ももに集中する構造になります。

これはデータでも裏付けられています。

バランス能力が低下した人の筋電図を測ると、お尻の出力は極めて低く、働くタイミングも大幅に遅れています。その一方で前ももともも裏の出力は異常に高くなっています。

つまりお尻というブレーキが使えないため、仕方なく前ももで関節をロックして倒れないためのつっかえ棒にするしか選択肢がないという状態です。安定性が低い人ほど前ももが常に緊張し続け、リラックスする時間が消失していることも確認されています。

スクワットも同じです。お尻のブレーキが出ていない状態でスクワットをすると、毎回この膝主導のパターンで動き続けることになります。これはスクワットが悪いのではなく、しゃがむ動作の順番が整っていない状態で繰り返したことが原因です。

だからまず、「ちゃんとしゃがめるか」を確認することが必要なのです。

「なぜ動けないか」まで掘る

動けないという事実がわかっても、それだけでは何をすればいいかが決まりません。

なぜ動けないのかを特定する必要があります。

同じ「股関節が適切に使われていない」でも、原因は人によって違います。

関節や筋肉が硬くて物理的に動かせない人もいれば、脳からの指令がうまく届いていない人もいます。体の感覚が鈍くなっていて、どこをどう動かせばいいかがわからなくなっている人もいます。

原因が違えば、やることも変わります。

だからここまで掘ってからプログラムを決めます。

順番は「進化の歴史」が関係している

何から始めるかの順番は、感覚で決めているわけじゃありません。

人間の体は、進化の過程で動きを獲得した順番にしか動けない、という原則があります。

たとえば爬虫類は首を左右に動かせますが、お腹を捻ることはできません。

哺乳類になって初めて、お腹の捻りが獲得されました。

この順番は今もあなたの体に残っています。

首がうまく動いていない人は、お腹もうまく捻れません。

だからウエストを細くしたい人でも、まず首の動きから確認することがあります。「ウエストの話なのになぜ首を?」と思うかもしれませんが、土台から順番に整えないと上は変わらないのです。

この「進化の順番に沿って整えていく」という考え方は、世界トップレベルのアスリートを担当するトレーナーたちが原則にしていることです。トップアスリートに使われている考え方が、実は体の構造として正しいということです。

で、ようやく種目が決まる

現在地がわかって、問題の原因がわかって、整えるべき順番がわかって、初めて「あなたに今必要な種目」が決まります。

それがスクワットのこともあります。スクワットより先にやることがあるときもあります。

重さはどうやって決めているのか

種目が決まったら次は重さです。ここにも根拠があります。

まず「今日のあなたの体の状態」を確認します。昨日よく眠れたか、疲れが残っていないか、ストレスの状態はどうか。これがトレーニングの質に直接影響するからです。

プロの現場では「計画上の重さ」と「その日の体の感覚」を組み合わせて重さを決めます。たとえば計画では最大重量の80%でやる予定だったとして、その日の体の感覚がいつもより重く感じるなら少し下げる。逆に余裕があれば少し上げる。計画通りにやることが目的じゃなくて、今日のあなたの体に合った刺激を届けることが目的だからです。

もう一つ大事な原則があります。

一度に変える変数はひとつだけ、というものです。

重さを上げるなら回数は変えない。回数を増やすなら重さは変えない。複数を同時に変えると、何が効いたのか、何が問題だったのかが判断できなくなります。

体が変わっていく過程を「再現性のあるもの」にするために、変化は一つずつ積み重ねていきます。

そして「前回より重くなった」は成果ではありません。「前回と同じ動作の質を保ちながら重くなった」が成果です。動作が崩れたまま重量だけ上がっても、それは崩れた動きを強化しているだけです。

ただし、変化させることが常に正解というわけでもありません。長く通ってくださっている方の中には、今の状態を維持することが目的の方もいます。

そういった場合はあえて何も変えないというのも、立派なプログラムの選択です。重さや回数を上げることがゴールではなく、その方の目的に合った状態をキープすることがゴールだからです。

まとめ

現在地がわかって、問題の原因がわかって、整えるべき順番がわかって、種目が決まって、重さと回数が決まる。

「あなたに合ったプログラム」って、こういうことです。

目的を聞いて経験で決めるんじゃなくて、評価して、原因を特定して、進化の順番に沿って整えて、根拠のある重さと回数で処方する。

同じスクワットでも、処方された理由が違えば体への作用はまったく別物になります。そしてその理由をちゃんと説明できるトレーニングしか、うちは処方しません。

体験セッションでは、まずあなたの現在地を確認します。どこから始めれば一番早く変われるか、一緒に考えましょう。

■ この記事を書いた人

今村 雅史(いまむら まさふみ)
・合同会社LSP代表/パーソナルジム「銀座トレーニングラボ」代表
・トレーナー歴24年。トレーナー教育機関「NASM OPTIMA」で2025年、2026年と2年連続講師
・中学校女子バスケットボール部コーチ
・Kindle著者

■ 本を2冊出しています
新刊『AIは、覚えない』(2026年8月発売)
AIを一度試して「うちには使えない」とやめた人のための本です。読み放題対象。

『ゴリラはなぜ植物だけでムキムキなのか?』
最新科学でひもとく「脳」と「腸」の共生戦略の話です。

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著者プロフィール
▶︎合同会社LSP代表
▶︎パーソナルトレーニングジム銀座トレーニングラボ代表
▶︎大妻女子大学ラクロス部(2019年〜2023年)
▶︎平成国際大学トレーナー(2018年〜2019年)
▶︎下半身痩せ協会アドバイザー(2016年〜2020年)
▶︎2018年東京都で今受けたいトレーナー選出
▶︎モデルやアイドルなど担当
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