Je suis retraité.〜わたしは退職者(18)〜
退職者と料理
退職すると急に料理を始めがち、という話をよく聞く。
理由はさまざまあるに違いないが、他人のことなので別段関心はない(共感力ってないの?)。
わたしの場合は、急に料理を始めたわけではない(一緒にされたくないのね)。それに、「男の料理」を気取る人たちとも違う(言い方にトゲがあるよ)。
なぜなら、わたしは魚を捌けるようになりたいわけではない。釣りの趣味はないし、手が生臭くなるのも嫌だ(なんの主張なの?)。
蕎麦を打ちたいと思ったこともないし、ラーメンはほぼ食べないので、鶏ガラからスープを作りたいとも思わない(自己主張がきつい)。
『クッキングパパ』の荒岩一味のように、「自分の料理を食べた人の笑顔が大好き」でもない(もう料理作るなよ)。
でも、料理上手になりたい、と思う(なんでだよ)。
料理の知識はあるはず
大学卒業後に入社した出版社で、希望とは違って、女性向け家庭雑誌の、しかも料理班に配属された(採用されただけでありがたいだろ)。それがきっかけとなったのか、転職した2つの出版社でも、料理関係の編集をすることが多かった。
料理家と仕事をするだけでなく、老舗や有名店の取材や撮影にも立ち会ってきた(自分のお金じゃ行けないとこな)。京料理の老舗、リゾートホテルに地方の料亭旅館、気鋭のイタリアン、本格中華、高いフレンチ、高い寿司店、高いバー(後半の形容が雑)。
中国、フランスで取材したこともある。中国では、「朝鮮人参を食べた蛙の卵の冷製スープ」など健康に良い(違うと思うぞ)高級料理もいただいた(よく食べたな)。
言うまでもなく、編集者として携わった出版物は数多い。
しかし、野球雑誌の編集者が野球が上手いわけではないように(そんなことないだろ)、ファッション雑誌の編集者がお洒落とは限らないように(『セシルのもくろみ』ではセンス良かったぞ)、知識はスキルを保証しない(なんで威張ってるのかな)。
今どきは、スキル不足はツールでカバーできる。
3COINSの「ハンディチョッパー」なら、みじん切りは思いのまま。「電子レンジ調理器」を使えば、魚を焼くのも煮物を作るのもラクラクだ(これステマか?)。
愛用の包丁は、貝印が「Kai House」をオープンしたときにいただいたもので(まさかの貰い物か)、ニトリの水なしで研げる「ダイヤモンド砥石」を使っているせいか切れ味はいい(ステマのパート2か?)。
それで、いったい何を作りたいのか、という話だ(前置きが長い、麺なら伸びてるよ)。
フランス料理が作りたい
なにもフレンチレストランで出てくるような、華やかで手の込んだフランス料理ではなく(それは作れんだろ)、フランスの家庭料理が作りたい(どうぞご勝手に)。
そんなわたしが(どんなわたしだよ)頼りにしているのが、えもじょわさん(変わった名前だな)。
彼は、1980年山形県酒田市(美酒美食の街だね)生まれのプロのフレンチシェフ。2010年からパリに在住し、その後、ブログでお菓子と料理レシピを紹介し始めたのだという。YouTubeチャンネル「Emojoieえもじょわ」は登録者数245万人を超え、オンラインコミュニティ「Atelierえもじょわ」を主宰している(言いにくいな、えもじょわ)。
わたしは、YouTubeでえもじょわさんを知ったのだが、動画のセンスがいい(上から目線だな)。本人の顔や声は一切出ず、基本的に手元の映像。なのに空間の奥行きを感じさせる。包丁が食材を刻む音、卵を割る音、フライパンで焼ける音など、調理音だけが響くのも、見るもののイメージに余白を作り出している(文章にも余白作れよ)。
さっそく、『フライパンでできる本格フレンチ』(KADOKAWA)を購入。このレシピ本にはお菓子を含めて40品近く掲載されている。
たびたび作るのは、「クスクスのサラダ」、スリコのハンディチョッパーと包丁だけで、火も使わず簡単にできる。「サーモンのブランケット」も何度か作っている。ブランケットとは生クリームで白く仕上げた煮込み料理のこと。それから「鶏むね肉のエチュベ」、「鶏もも肉の粒マスタードソース」、「鶏肉とアボカドのタルティーヌ」(鶏料理多いな、貴族か?)も。鶏ばかりじゃなく「豚肉のシードル煮込み」も作った。
ただ問題がある(いろいろありそうだ)。
できた料理の味が「正解」かどうかわからない(根本的な問題だな)。食べ慣れている料理ならいざ知らず、あまり食べたことのない料理だと、その「正しい味」が分からない。
先ほどあげた「サーモンのブランケット」。本には「ほっとするフランスの家庭の味です」と書かれている。初めて作ったときは、何やらぼんやりとした平板な味に感じた。でも、「ほっとする味」と言われれば、そうかもしれない。少なくとも非日常的な味ではない(どんな味なの)。では「フランスの家庭の味」になっているのかは、残念ながら分からない(分かってたらフランス人だしな)。
いまも作るたびに、これがフランスの家庭の味なのだ、と言い聞かせている(気持ちはほっとしないな)。
もうひとり。わたしがフランス家庭料理で頼りにしているのは、辻仁成(つじ ひとなり)さん。ご存じのとおりECHOES(エコーズ)のボーカルだった人だ(そこからか)。
NHKで放送されたドキュメンタリー『ボンジュール!辻仁成のパリごはん』でも描かれるが、パリでシングルファーザーとして息子を育て上げた(今年、大学卒業したってね)。
辻さんが、当時17歳の息子に語りかけるエッセイと30品のレシピが掲載されているのが『父ちゃんの料理教室』(だいわ文庫)だ。
しかし残念ながら、読んでばかりで肝心の料理をほぼ作っていない(ここにも問題が?)。長年、息子さんのために作ってきた料理は、辻さんのキッチンやパリのエピスリー(食料品店)、マルシェ(市場)がベースにあり、実は手間暇も結構かかっている(料理家のレシピとは違うんだな)。
辻さんの料理を作ろうとすると、ちょっと覚悟がいる。今のところ「ラモンおじさんのスパニッシュ・オムレツ」や「キッシュ・ロレーヌ」は作ってみた(卵好きか)。いずれ「グーラッシュ、牛肉のパプリカ煮込み」や「子羊のクスクス」も作りたい(覚悟なさそうだな)。
ハギワラトシコさんの料理が作りたい
わたしが敬愛しているのが(自己中なのに珍しいな)、2021年に亡くなられたハギワラトシコさん。武蔵野美術大学の出身で、フードコーディネーター、イラストレーターであり、1981年からケータリングと総合的なパーティ演出を手掛けた「キュール(CUEL)」 を運営していた。
渋谷のミニシアター「シネマライズ」(2016年閉館)の映画パンフレットに連載を持ち、それをまとめた『CINEMA&CUISINE 映画を食卓に連れて帰ろう』(同文書院)が1999年に刊行された。この本は、2020年に増補改訂版『シネマ&フード 映画を食卓に連れて帰ろう』(KADOKAWA)として再び出版されている(鵠沼海岸の「シネコヤ」でイベントあったね)。
美大出身からなのか、楽しくて個性的な料理、それをメインにしたテーブルのしつらい、そこで過ごす時間にもこだわっている(今でも新鮮だね)。
ムサビ界隈の人たちを通じてご縁があったことから、わたしは、『チャーミングなおやつ』(ソニー・マガジンズ)を編集し1991年に出版(35年も経ってるな)。
「エンチラーダ」や「肉包子」などの甘くないおやつから、「黒豆入りタルトタタン」、「アールグレイのエクレア」、「押し花のケーキ」など40品の「おやつ」を掲載。自分のために作るよりは、誰かのために、あるいは一緒に作るのが似合う「おやつ」だ。それが、わたしにとってハードルが高い(悲しいな)。
とりあえず、その日のために練習として作ってみよう(練習とか要る?)。「そば粉のケーキとルバーブジャムのレイヤーケーキ」から挑戦してみたい(古民家カフェに似合いそう)。
旅を感じさせる料理が作りたい
料理は、音楽や文学同様に、歴史や文化を内包したものでもある(いきなり硬いな)。未知の世界や刺激的な文化を、「美味しさ」として届けてくれる(インド・ネパール料理店とかな)。
ここでは、旅を感じさせるお二人を紹介するとしよう(どんな旅かな)。
ひとりは、細川亜衣(ほそかわあい)さん、旧姓の米沢亜衣さん名義の本も出版されている。
『旅と料理』(CEメディアハウス)では、台湾(台北)、韓国(大田)、フランス(イル・ド・レ)、モロッコ(マラケシュ)、中国(雲南)などを旅したエッセイと料理が、現地の生活の匂いがしてくるような写真とともに掲載されている。
旅と言っても、世界の各地でセッションをするミュージシャンのように、現地の台所で、言葉が完全に通じ合わなくても一緒に料理を作る、という旅だ。そんな旅のおすそわけがレシピとして紹介されている。
とても素敵な旅が羨ましくなる(やってみたいの? 意外だな)。
いまひとりは、サラーム海上(さらーむ うながみ)さん。中東やインドの伝統音楽や現代のローカル音楽シーンを対象とする音楽評論家、DJであり、中東料理研究家だ。
中東料理というと「ケバブ」しか思いつかない人も多いと思うが(ドネルケバブサンドも知ってるよ、同じか)、サラームさんの主宰するイベントでは、ザクロソースを使った料理を初めて味わった(ざくろって、銀座のしゃぶしゃぶ店しか知らんな)。
ナール・エクシと呼ばれる、ザクロの果汁を煮詰めて作った調味料は、バルサミコ酢のような濃厚な甘酸っぱさ。細かく刻んだトマト、キュウリ、クルミにザクロソースを回しかけたサラダは、見た目もカラフルで、オリーブオイルと合わせると爽やかで奥深い味わい。
『MEYHANE TABLE 家メイハネで中東料理パーティー』 (LD&K BOOKS)や『おいしい中東 オリエントグルメ旅 』(双葉文庫)には、中東料理の代表格、ひよこ豆のペースト(フムス)や、ひよこ豆やそら豆のスパイスコロッケ(ファラフェル)も。
と言いつつ中東料理はいまだ作ったことがない。最初は「正解の味」が分かる「ケバブ」にしよう(結局「ケバブ」じゃないか)。
料理のことを書いてきたらお腹が空いてきた(こっちは文章長くて満腹ですが)。そろそろ台所に向かうとしよう。時間もないから、「ぎょうざの満州」の冷凍餃子を使って冷やし水餃子にしようかな(それ、正解!)。
では、次回は退職者と銀行について綴ってみたい。
