もなかの今日も異常なし!220「曇り空の下の、お約束」
最近の朝は代わり映えしない・・・。
窓の外を見ても、空はたくさんの雲に覆われている。前みたいな眩しい朝日も見えない。あの明るい光は、どこへ行ってしまったのだろう。
それでも朝はやって来る。
「ピピッ・・・ピピッ」
目覚ましの音が響く。
外を眺めていた私の隣に、起きてきたパパさんが立った。
「今は梅雨だからねぇ。なかなかスッキリ晴れないねぇ」
・・・梅雨かぁ。
そう言われてみればそうなのだ。
でも去年の私は、そんなこと全然気にしていなかった気がする。
少しだけ大人になったのかもしれない・・・。
今日はにーちゃんがお休みだ。
朝から部屋のドアが開いている。
これは「入っていいよ」のサインである。
みんな朝は忙しい。パパさんもママさんも、出かける準備でバタバタしている。
だから私は迷わず、にーちゃんの部屋へ向かった。
抱っこ。
なでなで。
抱っこ。
なでなで。
最近のにーちゃんは本当によくかまってくれる。
ここはなかなか居心地がいい。
ただし、一つだけ例外がある。
パパさんが出かける時間だ。
その時だけは部屋から出される。
なぜなら毎日のお約束があるからだ。
パパさんを見送りながら、チュー!
これをしないと一日が始まらない。
無事に任務を終えた私は、再びにーちゃんの部屋へ戻った。
その後、ママさんは部屋の中に洗濯物を干してから出発。
ねーちゃんは少しゆったりした朝を過ごしながら準備を進めている。
姿は見えなくても、音で分かる。
家族の音というのは不思議なものだ。
しばらくして、ねーちゃんも出かけて行った。
気が付けば家の中は静かになっていた。
私は小町先輩と雅先輩がいる窓際へ向かう。
三人で並んで外を眺める。
曇り空。
風に揺れる木。
時々聞こえる車の音。
静かな昼だった。
そういえば最近、小町先輩と雅先輩はよくケンカをする。
原因はとても分かりやすい。
パパさんの取り合いである。
昨日の夜もそうだった。
二人ともパパさんになでなでしてもらいたくて、ずっとくっついていた。
すると突然始まる取っ組み合い。
横で見ていたママさんは驚いていた。
「こんなケンカするんだ!」
一番大変だったのはパパさんである。
二人を落ち着かせるため、左右同時になでなでし続けることになったのだから・・・。
そんなことがあったとは思えないほど、今の二人は穏やかだった。
そこへ、にーちゃんが窓際を見に来た。
一瞬だけ。
本当に一瞬だけ。
先輩達に緊張が走る。
・・・また誰か連れて行かれるのではないか。
そんな空気だった。
しかし、にーちゃんの目的は私だった。
「もなか、おいで」
結局私は抱っこされて連れ戻されることになったのである。
夕方。
パパさんが帰ってきた。
途端に先輩達のテンションが上がる。
スリスリ。
ゴロゴロ。
ベッドの上は大人気だ。
私も一応、お迎えに行った。
すると今度はママさんとねーちゃんも帰宅。
家の中が一気に賑やかになる。
そして待ちに待った、お魚ご飯の時間。
私達もご飯。
パパさん達もご飯。
なんだかみんな一緒で楽しい。
食後は最近の大ブーム。
ハタキのかくれんぼだ。
布団の中から現れては消える。
消えたと思ったら別の場所から出てくる。
追いかける。
飛びつく。
見失う。
また見つける。
私も先輩達も夢中だった。
夜が深くなっても興奮はなかなか収まらない。
そんな時だった。
「寝るよー」
ママさんの声が響く。
私はダッシュでキャットハウス三階へ。
今日の寝床を確保する。
するとパパさんがキャットハウスごと持ち上げた。
ゆらゆら。
ゆらゆら。
寝る部屋まで運ばれていく。
この揺れは嫌いじゃない。
むしろ少し楽しい。
今日は先輩達の大騒ぎもなさそうだ。
曇り空の一日だったけれど。
いつものお約束があって。
いつものみんながいて。
それだけで十分だった。
今日も異常なし・・・。
