もなかの今日も異常なし!224「静かな朝と、にぎやかな夜と」
朝から空は一面の曇り空である。
窓の向こうには灰色の雲が広がり、ベランダの手すりもどこか湿った色をしていた。エアコンの涼しい風が静かに流れる部屋の中で、私は丸くなりながら家族の気配を聞いていた。
パパさんが一番に出かける準備を始める。
鍵の音、カバンを持つ音、そしていつもの足音・・・。
すると小町先輩が、すぐにパパさんのあとを追いかけていった。
「まだ行かないで」
そんな声が聞こえてきそうなほど、小町先輩はパパさんの足元にぴったりである。
足に身体をこすりつけ、見上げて、またこすりつける。
パパさんも笑いながら頭を撫でていた。
その様子を少し離れた場所から見ていた雅先輩は、
「今日も始まったな・・・」
という顔で、静かにしっぽを揺らしていたのである。
やがてパパさんが出かけ、続いてママさん、そしてねーちゃんも家をあとにした。
今日もにーちゃんは旅行中でお休み。
玄関が閉まる音がして、部屋には三人だけの時間が流れ始めた。
昼間は穏やかだった。
曇り空のせいか、窓から差し込む光もやわらかい。
私はお気に入りの場所で外を眺め、小町先輩はクッションの上でうとうとし、雅先輩は少し離れた場所から部屋全体を見渡していた。
時々三人で追いかけっこをしたり、おもちゃを転がしたり。
静かな留守番の時間は、ゆっくりと過ぎていったのである。
夕方になると空はさらに暗くなった。
曇り空が夜を早く連れてきたようだった。
最初に帰ってきたのはパパさん。
玄関の音が聞こえた瞬間、私と小町先輩は一目散にお迎えへ向かう。
特に小町先輩は大喜びである。
昼間会えなかった時間を取り戻すように、何度も何度も甘えていた。
その後ママさんとねーちゃんも帰宅し、家の中は一気に賑やかになった。
そして夜。
誰かがハタキを取り出した瞬間、空気が変わった。
「始まる!」
三人とも目が輝く。
ハタキかくれんぼの開幕である。
家具の陰からふわり。
ソファの向こうからひょい。
見えたと思えば消え、消えたと思えば現れる。
私は全速力で追いかけ、小町先輩も負けじと飛び出す。
雅先輩は少し遅れて参戦したが、その動きはさすがであった。
低く構え、一瞬で飛びかかる。
部屋中を駆け回る足音。
笑い声。
揺れるカーテン。
転がるおもちゃ。
夜のリビングは大運動会のようだった。
・・・ところが。
盛り上がりすぎたのである。
同時にハタキへ飛びついた小町先輩と雅先輩。
お互い譲る気はない。
しっぽが大きく膨らみ、耳が少し横を向く。
「それは私!」
「いや、私だ!」
そんな空気が流れた次の瞬間。
バタバタッ!
短い追いかけっこが始まった。
私は慌てて距離を取る。
しかし、それもほんの少しだけ。
パパさんたちが声をかけると、二人ともすぐに落ち着いた。
何事もなかったように毛づくろいを始める姿を見て、みんな思わず笑ってしまったのである。
こうして今日も一日が終わる。
曇り空の下で始まった静かな朝。
そして大騒ぎで終わった賑やかな夜。
それでも三人は同じ部屋で寄り添いながら眠るのである。
「寝るよー」
その声を聞きながら目を閉じる。
・・・うん。
今日も異常なし!
