私の夏は鮎🐟

時を超えてつながる味。亡き父の友が守る場所で、母と囲む夏の風物詩
夏の足音が聞こえ始めると、
我が家にも毎年必ず訪れる特別な
「定期イベント」がある。
それは、
私と母の二人で
割烹料理屋さんへ行くこと。
私の亡き父の友が営んでいるお店。
母の幼馴染が営んでいるお店。
母にとって、
この場所を訪れることは、
ただ美味しい旬の味覚を
いただくという枠を超えた、
とても大切な意味を持っている。
それは、当時の記憶にそっと浸る時間。
今年もまた、
私たちの夏の風物詩となる
「クエスト」が幕を開けた。
変わらない暖簾と、
父の記憶。
お店の暖簾をくぐると、
出迎えてくれるのは
父が生きていた頃と全く変わらない、
どこかホッとする温かい空気感。
父の悪口(笑)や、
楽しかった思い出話。
父が若かりし頃にどんな風に過ごしていたのか
ここに来ると、
まるで父も隣の席に座って
一緒に日本酒でも傾けているかのような、
不思議な親近感に包まれる。
母と並んで座り
「今年も来れたなぁ。」
と顔を見合わせる瞬間、
張り詰めていた日常の肩の力が
すーっと抜けていくのがわかる。
笹の葉の上で踊る、
最高の「ご褒美」
待ちに待った瞬間が訪れる。
運ばれてきたのは、
丁寧な手仕事が施された鮎の塩焼き。
青々とした笹の葉の上に、
まるで川を泳いでいるかのように盛られた鮎。
尾ひれには真っ白な化粧塩が綺麗に残っていて、
こんがりと絶妙な火加減で焼かれた皮からは、
香ばしい香りがふわりと立ち上る。
箸を入れるのがもったいないほどの佇まい。
私は骨まで残さず食べてしまう。
身の甘みと川魚特有の心地よい苦味が
口いっぱいに広がる。
「うん、やっぱりこれやな。」
言葉にしなくても、
母と私の気持ちは同じ。
この味を噛みしめるたびに、
父と過ごした賑やかな夏の記憶が、
鮮やかな色彩を持ってよみがえってくる。
この場所があるから、
私たちは毎年
「あぁ、この夏も元気に過ごせてるな。」
と確かめ合うことができる。
人生というRPGの途中で、
大切なセーブポイントに立ち寄って
エネルギーをフルチャージ。
ひとしきり思い出話や
近況報告を交わし、
「また来るから。」
とお店を後にする頃には、
胸の奥がじんわりと
温かいもので満たされている。
大切な人は形を変えても、
私たちがこうして笑顔で集まる場所に、
きっと一緒にいてくれる。
この特別な絆と美味しい時間を守るために。
また明日から始まる
日々の暮らしという名の「日常クエスト」を、
私らしく、
笑顔で一歩ずつ進めていこう。
来年の夏もまた、
あの暖簾をくぐって、
最高に美味しい鮎に出会うために。
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