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今更褒められても 🔥3

ひとりで頑張る。
絶対に借りは作らない。

もう、誰にも頼りたくなかった。

それは、私の意思だと思っていた。

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結婚したいと思ったとき、
私はお金を持っていなかった。

貯めたお金は車の修理費で消え、
結婚式どころではなかった。

それでも、結婚式がしたかった。
長年の夢だった。

結婚式はたった一度だけ、
私が大切にされる時間だった。

口には出さなかったけれど、
胸の奥でずっと憧れていた。

でも、その夢を叶えるにはお金が必要だった。

─────

子どもの頃から、親に罵倒され、
苦しい思いをして生きてきた。

借りを作ったら最後、返しきれない。
何を言われるかわからない。

その恐怖は私の中に深く染み付いていた。


私は、自分の力だけでお金を貯めた。
誰の援助も受けず、
夫と二人で結婚式を挙げた。

─────

半年後、
実家で家族が集まる機会があった。

真ん中の妹の結婚式だった。

「れいちゃんの結婚式の前の日、
ももちゃんも帰ってくるから
みのりも家においで」

母から連絡が入った。

「もちろん行くよ」

私はそれだけ言って電話を切った。


─────

前日。

実家の玄関に入る。
ここに来るのは久しぶりだった。

皆で食卓を囲む。
喋っているのは、
私とももちゃんだけのように思えた。

「これ、美味しいね」
「ほんと、美味しい」

ふたりで盛り上がる。
明日の主役のれいちゃんは、
心なしか元気がないように見えた。

家の雰囲気は正直、あまりよくなかった。
れいちゃんが、
辛い目に合っていることも知っていた。

「これでやっと、幸せになれるのかな」
そんな気持ちで私は箸を置いた。


その時だった。

「みのりは、偉いなあ」

突然の、父の声。

私は顔を上げる。

そこには笑顔の父の顔。

「お前、一人で結婚式のお金、
全部貯めたもんなあ。
一言も助けてって言わなかった。
ほんとに自分の力だけでやったな。」


え、今さら?


喜びというものは湧いてこなかった。


「何を今さら言ってるの?」

口に出したい怒りをぐっと押し込む。

父はさらに続けた。

「短大の時も、自分でアルバイトして
お小遣いくれって言わなかったろう。
あれ、すごいと思ったんだよ。」


髪の毛が総毛立つ感覚があった。


なぜお小遣いをねだれなかったのか。
なぜ、私はそこまでして
一人で解決しようとしたのか。

その理由を、誰が知っていただろう。

喉元まででかかった言葉を必死に飲み込む。


今日は、妹が主役の日。
私の日じゃない。


無理やり、口をつぐんだ。

「はあ、そうなのね」
私は箸を動かす。

ちくわの炒め物を口に詰め込み、
心の中の怒りを押し込める。

あれだけ辛い目に合わせ、
寮費も滞納させ、
私のお金まで使っておいて、

「偉かった」と持ち上げる。

今更何言ってるんだ。

れいちゃんは、黙っていた。
母も何も言わなかった。


私は黙って、残ったちくわを
また口に詰め込んだ。

──────────
🫧この形の私

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この話を別の視点から読む

▷   褒め言葉に腹が立った理由

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▶  次の出来事へ(祝儀袋の重さ🔥4

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