💌月の雫、海の灯り🌙 海底の人魚姫と月への手紙
昔々。
海の底に、
月の光が届く場所がありました。
そこには、
誰よりも美しい人魚姫が住んでいました。
真珠のような髪。
月光を閉じ込めた瞳。
そして、
海の民に愛される優しい心。
けれど姫は、
いつも少しだけ寂しそうでした。
宝石も。
真珠も。
美しい宮殿も。
全部持っているのに。
ある夜。
姫は海面近くまで泳ぎました。
そこで見たのです。
月を。
水面に映る銀色の月。
その光に、
姫は心を奪われました。
「どうして私は、
あそこへ行けないのかしら」
その時でした。
月の光の中から、
白い貝が一枚落ちてきました。
不思議な貝でした。
開くと中には文字。
『会いたければ、
月を見上げなさい』
それから姫は毎晩、
月を見上げました。
春も。
夏も。
秋も。
冬も。
するとある夜。
海面に一隻の小舟が現れました。
乗っていたのは、
銀髪の青年でした。
まるで月から切り取られたような人。
「君が手紙の主?」
姫が尋ねると、
青年は笑いました。
「違うよ」
「僕も返事を書いていただけだ」
姫は首を傾げました。
「誰に?」
青年は月を指差しました。
「月に」
変な人でした。
けれど、
姫は初めて笑いました。
それから二人は、
毎晩手紙を書きました。
会えない日も。
嵐の日も。
真珠に文字を刻み、
潮の流れに乗せて届けました。
海の底から。
月の下へ。
月の下から。
海の底へ。
やがて何十年も過ぎました。
姫も。
青年も。
歳を重ねました。
最後の夜。
姫は尋ねました。
「結局、
あなたは誰だったの?」
青年は少し考えて、
笑いました。
「君と同じだよ」
「月を見上げていた人」
翌朝。
小舟は消えていました。
残っていたのは、
一通の便箋だけ。
そこには、
たった一行。
『君が月を好きだったように、
僕は海を好きだった』
それ以来、
満月の夜になると、
海の底に無数の真珠が光ると言われています。
それは人魚姫が集めた宝物ではありません。
誰かを想って書いた手紙が、
長い長い年月をかけて、
真珠になったものなのです🌙🦪💌🌊

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