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「女は服やメイクにお金と時間を掛けているから、デート代の"奢り"は当然」なのか? 割り勘論争に見る違和感

女性の身支度の時間は1500円の価値?

恋愛や婚活の場で必ず意見が分かれるテーマがある。「デートは奢るべきか、割り勘でいいのか」だ。

散々擦られてきたテーマではあるが、改めて考察したいと思ったのは、最近、ある恋愛コンサルタントがYouTubeでこんな主張を繰り広げていたからだ。

「女性はデート前に1時間半もかけて身支度をしています。一方、男性は30分程度。時給1500円で換算すれば、女性は男性よりも1500円多く払っていることになるんです」

時給換算という視点のユニークさと、語りの勢いに押されて、一瞬「なるほど!」と思ってしまった。

だが、冷静に考えると、そのロジックには納得できない点も多い。

女性の身支度にかける時間は「見えない投資」

確かに、女性の身支度にかける時間は男性より明らかに長い。

WEBマガジン「REAL SCALE」が2012年に実施した調査によると、女性の朝の身支度時間は平均70分で、約半数が「1時間30分以上」費やしていると回答。対して、男性の平均は54分だった。先のYouTubeでは、この数字を根拠に「1時間半」としたのかもしれない。

但し、マイナビウーマンが2016年に実施した「働く男女の朝の準備」調査では、もう少し現実的な数字になっている。女性の最多は「50分〜1時間未満」(26%)、次いで「1時間〜1時間半未満」(21.4%)。「しっかりメイクに巻き髪」が主流だった時代から、ナチュラルメイクや時短ヘアメイクへと移行しているため、現在は1時間前後が妥当だろう。

一方、男性は「40分~50分未満」(20.6%)、「20分~30分未満」(20.6%)が同率1位となり、「30分~40分未満」(18.6%)と続く。よって、男性は30分程度が平均のようだ。

もっとも、これは平日朝の準備時間である。
デートとなれば“気合いの上乗せ”があるため、実際には「1時間〜1時間半」が女性のボリュームゾーンになりそうだ。いずれにせよ、準備の負担は女性に偏っていることは間違いない。

「時間的コスト」はデートだけに発生する労力ではない

とはいえ、大事なのは、これはデートに限った話ではないということだ。

恋愛・婚活市場では、女性の価値は容姿の美しさに置かれがちである。それゆえ、少しでも美しく見せるために、身支度に時間をかけることは、ある意味、女性にとっては“強制された暗黙の行為”でもある。メイクやファッションに興味がない女性であっても、仲人から「男性に好かれるために、こんなメイクにしましょう」と指導が入ることすらある。

そして実際に、男性の期待通りの姿で登場すれば、「楽しい時間を過ごせたお礼」として男性が奢る側に回ることも少なくない。女性側が奢られることを期待するのであれば、ジーンズよりもスカートやワンピースといったデート仕様にしたほうが、身支度への時間的コストを労う形で、奢られる確率が高まるかもしれない。

但し、女性は、仕事に行くにも、友人と出かけるにも、常に1時間以上の準備に追われる“性”でもある。中学生の頃から、髪を結んだり制服を整えたりと、すでに日常的に身支度に時間的コストを支払っている。つまり、女性にとって身支度は、デートだけに発生する特別な労力ではないのである。

「時間的・経済的コスト論」の落とし穴

忘れてはならないのは、女性が準備に時間をかけるのと同様に、男性も店探しやデートプランの計画に時間をかけていることだ。女性の身支度を時給換算するなら、男性のリサーチ時間も同じように計算しなければならない。

「時間的コスト」論に加えて、婚活界隈では「経済的コスト」論もよく持ち出される。

女性はメイク道具や基礎化粧品、エステやネイルなど、美容に毎月多額の金額を投じているのだから、デート代は男が負担すべきだという主張が一定数存在する。実際、20代・30代女性の美容代は、月に平均約2万円というデータもある。

このテーマを扱った当方128さんのnote記事(『「デートは男が奢って当然」は正しいのか? 女性の美容代を検証』2022年)では、男女の会話形式で、女性の美容代の高さと男女の美容費の比較が描かれていた。最終的には「男性は女性の美容代に理解を示すこと」「女性は奢られるのを当然とせず感謝を伝えること」が重要だと結論づけている。

脱毛、眉毛サロン、ホワイトニング…婚活男性は清潔感に課金

さらに、Xでは歌手の近藤耀司さんが、次のようなポストをあげていた。

男性であってもファッションや美容にお金をかけ、身支度に時間を掛けている人は、その上でデート代の負担もしているというのである。近藤さんは芸能人ではあるが、確かに一般の男性でもメンズエステ(ヒゲなどの脱毛)や眉毛サロン、歯のホワイトニングに通う人もいる。

特に、婚活男性は「清潔感=結婚の必須条件」と考えて、これらに投資するケースも増えている。実際、男性に脱毛を勧める結婚相談所も存在するほどだ。つまり、美容や身だしなみにお金をかけているのは女性だけではないのである。

男性がクルマを出してくれた場合はどうするのか?

さらに、男性側がクルマで送迎してくれることもある。その場合、ガソリン代や洗車代、高速代金などの実費や、長時間の運転に対する労力など、男性側に様々なコストが発生する。

私の場合、自分からガソリン代等々の支払いを申し出たり、お茶やお菓子、弁当などを用意したことはあるが、ドライブにかかる費用をすべて請求してきた男性は過去に一度しかない。大概は「電車よりクルマのほうが楽」「むしろ休日くらい運転がしたい」と言ってくれることが多かったため、男性側の厚意として有り難く受け取ってきた。

結局、お互いに「見えない時間的・経済的コスト」を負担しており、どちらか一方だけを奢りの根拠にするのはフェアではない。

この議論を突き詰めれば、割り勘が最も公平ということになってしまう。だが、現実の婚活現場では、割り勘が“公平”であっても、“効果的”とは限らない。

なぜなら、本質的にデートの奢りは戦略だからだ

奢りは男性の戦略、提案は女性の戦略

男性にとって、初回のデートで奢ることは女性への誠意や好意、経済的・精神的な余裕を示すサインになる。それゆえ、少しでも早く婚活を終わらせたいなら、気に入った女性だけでも初回くらいは奢ったほうが戦略的にスマートだ。

一方、女性にも戦略はある。
「私も出します」と伝える。あるいは「この後のお茶は私が払いますね」「次回はこちらでお店を手配するので、ごちそうさせてください」と提案する。こうした姿勢は、相手に好印象を与え、他の候補より一歩リードできる効果がある。

いずれにしても、男女どちらの行動も「義務」ではなく、相手との関係を発展させるための「選択肢」にすぎない。

▼婚活アドバイザーの大西明美さんも、婚活における奢りは戦略と位置づけ、その重要性を語っています。詳しくは以下の記事からどうぞ。

「割り勘論争」の正体は"価値観のすり合わせ"

準備の時間的コストを盾にするのではなく、奢りも割り勘もそれぞれの戦略であり、価値観だ。

男性は奢らないことをポリシーにしているなら割り勘にすればいいし、女性は割り勘にされて嫌だったなら「この人とはこれで終わり」と判断すればいい。女性は「奢ってくれない男なんて、男じゃない」と苛立つよりも、むしろ「早い段階で価値観の違いが分かってよかった」と思うべきだろう。長い結婚生活において、特にお金の価値観の不一致は、お互いにとって大きなストレスであり、離婚にも発展しかねないからだ。

大事なのは、お互いの戦略や価値観が噛み合うかどうか。そのすり合わせができない相手とは、どのみち続かない。

「割り勘論争」は永遠に終わらないが、少なくとも婚活においては「いかに次への期待を感じさせるか」がすべてである。

準備の時間的コスト論はその一端を照らしているにすぎず、本当の答えは“戦略としてどう動くか”にあるのだ。

※本記事の無断転載・無断引用を固く禁じます。
※2025年8月23日に執筆・公開しました。

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▼割り勘派の男性は「奢りが当然」の相談所ではなく、マッチングアプリのほうが好相性です。その理由を考察した記事はこちらからどうぞ。

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