もみたくて…夏
もみたくて仕方がないんだ。
はちきれんばかりに、膨れ上がるこの欲望を、
なんとか飼い慣らさなければならなかった。
もはや、もめるなら何でもよかった。
社長や専務に手揉みをするのだって、決しておべっかを使って出世にこぎつけるためなんかじゃない。
もみたいだけだ。
車で片道一時間かけて、牛の乳搾り体験ができる牧場にも足繁く通った。
搾るだけで満たされた。
搾りたてミルクの美味しさは、おまけだった。
手打ちうどんが作れるセットも買った。
もんでもんで、うどんのタネを作りまくった。週三でもんだ。
餅つき大会は全てチェックした。
杵を持つ方には興味がない。返し手を進んで引き受け、餅を返すふりをしてもんだ。
今ではどんな速さで杵を振り下ろされても、
ほんのわずかな隙間に、もめる。
分かっているんだ。
この衝動が病的なことは。
分かったところでどうしようもない。
つつがなく、普通の暮らしを続けるためには、
発作を抑えるしかないんだ。
もむしかないんだ。
「…という訳だからさ、親父、肩凝ってない?」
お盆休みで帰省した時、
思い切って切り出してみた。
「あのな…そんなまわりくどい理由つけなくてもな。肩揉んでくれるなら、俺は普通に嬉しいぞ」
親父は呆れたように笑った。
「お前は昔から、そういうところ素直じゃないな」
久しぶりに近くで見る親父の肩は、思っていたよりずっと細くなっていた。
昔はもっと、もみがいのありそうな背中だった気がする。
「じゃあ発作をきっちり抑えるためにさ、
長めにやってやるよ」
