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【精神科日記】 鎧の中のおネエ先生

月イチの精神科通い。
案外楽しみにしてる。

担当はおネエのM先生。
ホンモノかビジネスかはわからない。


私は医者が嫌い。

上から目線で偉そうで、話は噛み合わんし、
医者以外の人間をだと思ってる。


旦那の死、相続の不安。
私はワニのいる泥の沼に投げ出された。

そんな私の前におネエのM先生が現れた。

やんわりと話しかけるおネエ先生は今までの
どの医者よりも違ってた。

おネエ先生の爪は潰れていた。

親指、人差し指、中指。
左手も右手も。

あれは、爪噛みの跡。

その爪を見た時、自分の仕事の重みを、苦しみを、
自分の体にも刻んでいるように見えた。

「よほどお辛いのね…」 

その辛さが、そのまま私の中に入ってきたように感じた。

仕事のストレス、ひと言で片付けてしまえば、
そうなのかもしれない。

でも、それだけじゃない。

会社勤めなら、会社を辞めてしまえば何とかなる。


でも、医の道に入ってしまったら、
病院を辞めることはできても、
医の道を外れることは出来ない。


人間が嫌だから鳥になるというようなもの。

おネエ先生に思い切って聞いた。

「その爪、どうしたんですか?」

「老化です」

「老化ねぇ…」👁️👁️……。

「皮膚科の先生も何でもないって」

淀みなく答える。
まるで答えを準備していたかのように。

「じゃ、小指の爪が長いのは何でですか?」
「人差し指の爪が使えないから代用って感じ」

そして、

「ハイッ!」と

それ以上、爪のことは触れられたくなかったのだろう。
終わり!と言わんばかりに話を切った。

小指の爪を人差し指の爪の代わりに使ってるなんて、昨日今日の話ではない。

自分で、爪は老化じゃないことをうっかり漏らしてしまったようなもの。

これ以上は踏み込むな、という忠告だったのかもしれない。

そんな人間味のあるおネエ先生に、
毎回、好奇心をくすぐられる。

精神科医としての仮面も鎧も外さないだろう。
でも少しだけ、その中の人間の部分を覗きたい。


それが許されることならば。



── 鎧の中のおネエ先生──
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