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mineamizuki
病院で聞く波の音|シロクマ文芸部
波の音がザザーン、ザザーンと寄せては返すのを、ついさっきまで聞いていたはずだった。
けれど、今聞いているのは、心電図の波の音だった。
人工的な「ピ、ピ、ピ」 という音が、モニターの波に合わせて流れている。
私が目を覚ますと、看護師がかけ寄った。
聞けば、熱中症で倒れたらしい。
釣りに行って何も釣れず、落胆しながらの帰り道だったことは覚えている。
医師が回診に来た時、自分よりもふた周り下の若い医者から言われた。
「高血圧との糖尿病のある方、熱中症になりやすいんですよ。」
「あと、アルコールは利尿作用もあるから、水分補給としては逆効果なんですよ。」
そう言えば、暑いからと酎ハイを飲んでいた。
最近は面倒くさいからと通院をサボって、血圧の薬は底をついていた。
よく考えたら、全てあてはまっているな。
意識が戻って、妻にも連絡がいく。
病院食は味気なかった。
思ったよりもとんとん拍子に退院まで進んだ。
退院する時にはまだ、少しは自制心が残っていたはずだった。
なのに、おかしいな。
退院翌日には、ラーメンを汁ごと飲み干し、酎ハイを飲んでいた。
そして、炎天下の暑さが残る中、俺は夕まづめを狙って釣場へと向かったはずだった。
次に聞いた音は、波は波でも、人工的な心電図の波の音だった。
今見ているのは、病院の天井。
これは、無限ループの悪夢ですか?
――いいえ、現実です。
