気づいたら泣いていた、恋の話
『会えなかった理由は…渡したいものがあって』
プレゼントされたものに、私は目が点になった(・_・;
高校卒業後、学生時代に同じ科目を選択した男の子と仲良くなった。
多数の学生でボーリング場に行き、同じチームになった子だった。
「投げ方を教えて!」
上手かった男の子にお願いをした。
私は純粋に習う気持ち満々で、ストライクを出したかった。
だからこそ、ストライクが出せた時、その場で飛び跳ねた。
⸻
その後からは、授業の帰りも同じ電車・同じ車両が続くようになり、不思議な気持ちになった。
(住んでる所、違うよね…?)
そう思いながらも、相手は話しかけて来ないし、こちらも何も言わなかった。
⸻
ある時、その彼に呼び出され、告白された。
私の疎い部分と、相手の気持ちを壊してしまうような発言が出たのはその時だ。
「え?だから、同じ電車で、車両も同じだったの!?」
今思えば、多分こういう事は聞いてはいけなかったのだろうと、歳を重ねてから分かった…(・_・;
私は告白を受け入れた。
とにかくシャイでウブで、自転車を押して歩いても、一緒に出かけても、手も繋いでこない人だった。
私は友達に相談した。
「あのさ、何したいんだろう?時々沈黙になるし、私と話してて楽しいのかな?」と。
友達は言った。
『多分、照れの方が勝ってるんじゃない?
好きだからこそ告白して、一緒に遊びにも行くんだろうし笑』
私は、うーん…となった。
「楽しくないなら、楽しくないって言えばいいのにね。」
すると友達は、
『いやいや笑 だーかーらー、照れすぎて何もできないのよ』
そう強めに言われ、黙って聞いていた。
⸻
ある年の冬頃。
彼と会える期間が減っていった。
飽きたんだろうなぁ、と淡々と思っていたが、電話だけはかかって来る。
私の頭は、はてなでいっぱいになった。
「あのさ、何してるの?他に楽しい事見つけたなら、優先した方がいいよ」と聞いた。
彼は答えた。
『今は言えないんだけど、ちょっと忙しいんだ。でも、ほら、電話は沢山出来るから大丈夫!』
そう言うと、袋に入っているであろう硬貨の音が、電話越しにジャラジャラと鳴った。
『公衆電話用に、たくさん両替したんだ笑
ブーって音が鳴っても、その時にまた硬貨入れるから大丈夫!』
その言葉を聞いた時、私はひどく申し訳なくなった。
(…めちゃくちゃ両替してまで、かけてきてくれてるんだ…)
⸻
彼は昼は授業、夜は用事でいなくなることが多かった。
それでも夜には必ず電話をくれた。
その度に、チャリンチャリンと硬貨を使いながら話が続く。
⸻
ある日の夜、駅のホームで待ち合わせしようと電話があった。
(なんだろう…珍しい…)
待ち合わせ場所に行くと、ニコニコ笑った彼がいた。
久しぶりに見た彼の手は爪まで黒く、腕にも傷があった。
『しずくちゃん、ごめんね。
実はクリスマスプレゼントを渡したくて、夜に工事現場のバイトしてたんだ』
その言葉を聞いた時、私は腑に落ちた。
『俺持つよ。危ないから家まで送るね』
私は自転車を押しながら、お礼を言って歩いた。
「ありがとう。あのさ…お礼の握手してもいい?」
そう言った時、彼はこう言った。
『俺の手、汚れちゃってるし、しずくちゃんの手が汚れたら悪いから大丈夫』
そう言ってニコッと笑うから、それ以上何も言えなかった。
⸻
部屋に戻ってプレゼントを開けた瞬間、私は絶句した。
すぐに友達を呼び、見せた。
『あんた…これ…相当だと思うよ』
それは、彼と一緒にショッピングモールで見て回った時、私が足を止めたお店のものだった。
ねだったわけでも、欲しいと言ったわけでもない。
ただ「綺麗で可愛いね」と言っただけのもの。
⸻
問題は、それが“身につけるものではなかった”ということだった。
スワロフスキーの犬の置き物。
この大きさなら、かなりの値段だと思った。
⸻
後日、彼に内緒で友達に話を聞いた。
『アイツ、バイトで稼いだお金、全部プレゼントに使うんだって言ってたよ笑』
『電話も、俺が代わろうとすると怒るし、クリスマスまで絶対秘密にしたかったんだよ』
⸻
さらに別の日。
その店頭に行って、値段を見た時、私は言葉を失った。
友達も同じだった。
(……こんなに?)
会えない時間の中で、私は時々思っていた。
(何してるんだろう…)
その疑問を、少し恥じた。
⸻
そして友達から、こう聞いた。
『アクセサリーじゃなくて置き物にしたのはさ、気持ちが重くなりすぎないようにって本人が言ってたよ』
『バイト代も、自分には一円も残してないって』
『公衆電話も、バイト代の端数を全部両替して使ってたらしいよ』
⸻
気づいたら、泣いていた。
