「早く抱いて」
草原の中の、一本のなだらかな道の途中。女が、その道の、すぐ脇の草の上で、死んでいる。
傍には、自転車が転がっている。
女は目を開けたまま、口も半ば開けて、死に続けている。
首には、横に一筋の傷。女の手には、ナイフ。
誰もいない、どこの土地かも分からない。
アンティークな家具、ソファー、椅子やテーブルのある部屋。
重厚なカーペットの上で、女が死んでいる。
仰向けに、目を開けて。まっすぐに死んでいる。
そのアパートメントの外壁は、緑の蔦が這い茂り、全面が覆われそうだが、女の死んでいる部屋の窓だけ、覆われていない。
大きな木が、一本、霧の中に立っている。まわりには、何もない。
霧が淡く、青い。朝か夜かも分からない。
高く、太い幹の老木。太く枝分かれしている、その幹の上、分かれ目のところで、女が死んでいる。
天を仰ぐように、上を向いて、目を開けたまま、仰向けに、大きな枝にもたれて。
女を隠すように茂っていた葉々が落ち、女の姿があらわになっても、女は死に続けていた。
