団地とヒップホップから考える音楽進化論
1月のラジオ放送のテーマは「公営団地」でした。
放送中に、こんな話をしました。
ヒップホップの中に、団地出身であることを盛り込んだ曲が結構ある。
これに対して、聞いていただいた方からこんなコメントをいただきました。
団地は、カルチャーを生む場所になっているんじゃないのか。
なるほど。
団地って、文化を生む土壌がある気がする。
あらためて、団地とヒップホップについて考えてみました。
団地発のヒップホップ
ヒップホップでは
俺は○○団地で育った。
的なフレーズを入っている曲をチラチラ見かけます。リアルな団地名まで出てくる曲だと、例えばこんな曲とか。
▶ 80Barz/ポチョムキン
生まれたのは 実は厚木緑ヶ丘団地
美奈子と健治の末っ子が誕生Put your hands up
▶ 夜が明けたら/RAWAX & 呼煙魔
南平団地の谷間屋根の下 隙間風
ロウソクの火を揺らした
▶ ネオサイト神樂/野崎りこん
富川団地 飛び方忘れた天使と
ロリコンのオッサン奇妙な2人暮らし
ヒップホップは自分語りが多いことを差し引いても、他の音楽に比べて明らかに団地に出くわすことが多いぞ。
うむむ。
団地とヒップホップの間には、何らかの親和性が、蜜月な関係がありそうです。
コミュニティが生んだ音楽
特定のコミュニティから育った音楽は、数多くあります。
それこそ、ヒップホップも。
1970年代のアメリカ・ニューヨークで、アフロ・アメリカンやヒスパニック系の住民のコミュニティから誕生しました。
コミュニティが持つ「思想」や、そこで使える「ツール」がかけ合わさって、独自の音楽につながっていく。
ニューヨークと団地ではぜんぜん違うけど、ヒップホップのもつ「思想」や「ツール」が、団地となにか噛み合ったのかもしれません。
団地とヒップホップの親和性
① 密なコミュニティ
団地は、規格化されて、同質的な住宅が集まった場所。人間がめっちゃ密です。三密です。
さらには、団地の中には公園や、溜まりやすい場所がたくさんあります。
人が自然と集まれて、昼夜問わずにたむろしやすい環境。
こういう場所では、先輩後輩の関係ができやすく、交流が生まれやすい。みんなが集い言葉を交わす。これは、ヒップホップが育つ土壌につながっている感じます。
② 団地的な成り上がりマインド
ヒップホップでは
俺はこんな環境で育ったけど、這い上がってやる
というストーリーが、よく出てきます。
団地は決して裕福な場所ばかりではないし、「団地育ち」が偏見になることもある。
そんな中、あえて「俺は団地育ちだ」と言葉にするのは、反骨の成り上がりマインドが散りばめられているなと感じます。
③ 楽器がなくてもできる音楽
ヒップホップの強みは、楽器がなくても成立すること。団地では、生活空間が密なので、大きな音を出せないし、楽器を買うのが難しい家庭もあります。
そんな中、のど笛ひとつで戦えるヒップホップは、団地環境でも十分に己を表現できるスタイルと言えます。
音楽は環境に適応して進化していく
こんな感じで、団地とヒップホップ。
めっちゃ親和性がありそうです。
実際に、隅田川沿いの団地に拠点を置くヒップホップクルー、リバーサイド・モブについて、こんな動画もあります。
はたまたコチラの記事、京都出身のラッパーANARCHYが、団地出身でなければラップをやっていなかったとも言っています。
ニューヨークで生まれたヒップホップが、日本の団地カルチャーを吸収して、少しずつ独自のスタイルに変容しているのかも。
文化が混ざり合って、団地に最適化された表現が生まれて、広がって、次のスタンダードになり、枝分かれしていく。
近い話として、小笠原諸島の民謡の「丸木舟」は、古いミクロネシアの音楽が海をわたって、変容したものと言われているんですよね。長い時間の中で、異なる文化圏から取り入れた音楽が、環境に最適化されていく。
進化論じゃん。音楽進化論。
途方もなく、雄大に感じます。
もしかしたら…
ヨーロッパの山岳で歌われるヨーデルが、長野県の山あいで歌われるようになるかもしれません。
日本の漁師歌であるソーラン節が、南国の島に根付くかもしれません。
音楽って、土地、暮らし、コミュニティを映し出すものだな。あらためて。
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