海外展示会の出展費用を補助金でまかなう:3つの制度と申請の段取り
海外展示会の出展費用は、事業規模や目的に応じた複数の補助金・助成金を組み合わせることで圧縮できます。ただし公募の受付から交付決定までは数週間から数か月かかる制度が多く、交付決定前に契約・支払いを済ませた経費は対象外になるケースがほとんどです。「出展を決めてから補助金を探す」のではなく、公募スケジュールを踏まえて出展の意思決定をする順番が、実務では安全です。
1. まず押さえたい3つの制度群
海外展示会の出展費に関わる公的な支援は、大きく3つに分かれます。
新事業進出・ものづくり補助金(グローバル枠): 海外市場開拓プロジェクト全体を対象にした大型の補助金
JETROの出展支援制度群: 共同ブースへの参加から個社への個別支援まで複数用意されている
小規模事業者持続化補助金: 基本は国内展示会向け。海外は対象が限定される点に注意が必要
以下、それぞれの制度の性格と、申請時に確認すべき点を整理します。
2. 新事業進出・ものづくり補助金「グローバル枠」で出展費をまかなう
2026年度から、従来の「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」が統合された制度が運用されています。このうち海外市場の開拓を目的とする「グローバル枠」では、海外展示会への出展費・通訳翻訳費・渡航費などが補助対象経費に含まれると案内されています。補助率は中小企業の場合原則2/3、補助上限額は申請する事業の規模・類型によって数千万円規模まで設定されている、とされています(出典: 中小企業庁・中小企業基盤整備機構の公募情報。2026年度の公募要領で対象経費・補助率・上限額・スケジュールを必ず確認してください)。
注意したいのは、この枠が「展示会に出るための小さな申請」ではなく、「海外事業展開プロジェクト全体」を対象にした大掛かりな枠組みだという点です。出展費だけを理由に単独で申請できる制度ではなく、設備投資や新市場開拓の事業計画の一部として展示会出展を位置づける形になります。展示会出展費だけを軽く済ませたい場合は、次に紹介するJETROの制度のほうが実務に合うことが多いです。
3. JETROの出展支援:共同ブースから個別支援まで
日本貿易振興機構(JETRO)は、海外展示会に関わる支援メニューを複数持っています。
ジャパンパビリオン出展支援: JETROが主催・指定する海外の見本市に、日本企業が共同で参加できる枠組みです。統一の「JETRO-JAPAN」ロゴのもとで出展でき、個社が単独でブースを構えるより低コストに抱えられる場合があります。対象となる見本市はJETROが年間予定として公開しています。
海外見本市個別出展支援事業: 個社が海外の見本市に単独で出展する場合の支援で、補助上限額は100万円程度と案内されています(2026年度時点。対象国・対象分野・金額は年度によって変わるため、最新の公募要領で確認してください)。
新規輸出1万者支援プログラム: 輸出未経験の企業向けに、専門家によるハンズオン支援を行うプログラムです。展示会に出展する前段階として、輸出体制そのものを整える目的で使えます。
どの制度も「JETROが主催・指定する展示会かどうか」「個社単独か共同参加か」で対象が変わるため、検討している展示会がどの枠組みに当てはまるかを、まずJETROの窓口で確認するのが早道です。
4. 小規模事業者持続化補助金は「国内向け」が基本
小規模事業者持続化補助金は、商業・サービス業で常時使用する従業員数が5人以下、製造業等で20人以下の小規模事業者を対象にした制度です。対象経費に「展示会等出展費」が明記されており、出展料・ブース装飾費・パンフレット制作費・旅費などが対象になります。
ここで注意したいのは、通常枠は国内展示会が前提だという点です。基本の補助上限額は50万円で、特例を活用すると最大250万円まで引き上げられますが、これは国内向けの話です。海外展示会に対応するのは、海外市場開拓を目的とした類型に限られ、その場合に限り海外展示会出展費・パンフレット作成費・旅費・通訳費等が対象になる、と案内されています。制度名だけを見て「小規模事業者向けだから使えるはず」と思い込まず、自社が検討している出展が対象類型に当てはまるかを、公募要領で確認する必要があります。
5. 申請の段取り:出展の意思決定と同時に動く
制度ごとに細部は異なりますが、共通する大まかな流れは次のとおりです。
公募開始 → 交付申請 → 審査 → 交付決定 → 事業実施(出展) → 実績報告
ここで実務上つまずきやすいのが、多くの制度で「交付決定前に契約・支払いを済ませた経費は補助対象外」というルールがあることです。ブース施工会社への発注や渡航手配を先に済ませてから補助金を探すと、既に支払った分は対象にならず、補助を受けられる範囲が想定より小さくなってしまいます。
したがって実務では、出展を検討し始めた時点で並行して公募スケジュールを確認し、「交付決定が出るまでは大きな支出の契約を保留する」設計にしておくと、補助対象の取りこぼしを防げます。公募から交付決定までの期間は制度・年度によって幅があるため、検討している展示会の会期から逆算して、余裕を持ったタイミングで情報収集を始めることが重要です。
6. 稟議で使える整理の仕方
複数の制度を比較検討していることを示すと、稟議の通りは良くなります。整理する際は次の点を押さえておくと説明がぶれません。
検討した制度の候補を複数(グローバル枠・JETRO各種・持続化補助金)挙げ、自社の事業規模と目的に合うものを選んだ経緯を書く
補助率・補助上限額は単一の数字で断定せず、幅と前提条件(申請類型・年度)を添える
「交付決定前の契約・支払いは対象外」という制約を明記し、スケジュール上のリスクとして扱う
制度は年度で内容が変わるため、実際の申請前に必ず最新の公募要領を確認する旨を一文添える
まとめ
海外展示会の出展費用に使える公的な支援は、大型の「グローバル枠」、JETROの共同・個別支援、国内向けが基本の持続化補助金と、性格の異なる複数の制度に分かれています。制度名や補助率の情報を集めるだけでなく、「交付決定前の支出は対象外」という共通ルールを踏まえて、出展の意思決定と申請のタイミングを合わせておくことが、実務上もっとも取りこぼしを防げるポイントです。
なお本記事の制度名・補助率・上限額は2026年度時点で確認できた公募情報に基づくものです。内容は年度ごとに変わるため、実際に申請する際は必ず各制度の最新の公募要領をご確認ください。
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