魂が死によって分たれる時 2021年仏映画 『ジェーンとシャルロット』
原題は《Jane par Charlotte》
= シャルロットGによるジェーンB
アニエスv.によるジェーンb.みたいなタイトルね。
なんて思っていたら、NYでのシーンで、ジェーンの口からヴァルダの名前が出て、嬉しかった。
シャルロットはもちろん敢えて、オマージュ的なタイトルにして、アニエス・ヴァルダに感謝を伝えたかったのでしょう。
どこで観られる?
今のところ、どちらの作品もアマプラで観られます。
une terre inconnue ジェーンにとって、シャルロットは
「地図にない土地」une terre inconnue …子供の頃からミステリアスな存在だったらしい。
老いとの向き合い
ジェーン
良いじゃない、象の膝みたいな肌でも素敵な女性はたくさんいる。(と自分に言い聞かせる)
シャルロット
でもママ、そんなのってどうでも良いことでしょう。
ジェーン
でも唇が「消滅」してる、と、或る男性に言われて…対策しないと、パパみたいに真っ平らになってしまう。
皺は何とか受け入れられても、多くの男性を虜にしてきた、彼女の唇の変化を指摘されて、ジェーンも辛い思いをしたのか、と意外でした。
鏡を見ないのが一番、みたいなことも言っていて、彼女の飄々とした自由なイメージばかりではなく、ありのままの一女性としてのジェーンを、シャルロットはきっと見せたかったのでしょうね。
Ça, on s'en fout. みたいなことを言って慰める様子も微笑ましかったです。
長女ケイトの死
恋多き女、ジェーンには3人の子がいましたが、全員異父の姉妹でした。
そんな複雑な境遇に生まれ育ったケイトの死を、どうにかできなかったことで、ジェーンはずっと後悔していました。
そして、ジェーンが「消えて」しまうほど思い詰めていたことは、シャルロットをも長年苦しめてきました。
こちらの記事で、
"Ma mère s'est éteinte. Elle ne voyait plus rien autour d'elle, même nous. On était là, mais on était devenus invisibles"
フィルムの中では"disparu"と言っていたと思うけれど、同じ心情を吐露していました。
シャルロットのパートナー
イヴァン・アタルは私にとっても好きな俳優 / 監督さんの1人です。
ユダヤ系の父、ゲンズブールへの想いからか、イスラエルはTel Aviv出身のイヴァン・アタルとパートナーになったのは、シャルロットにとって自然なことに思えます。
実の息子との共演

2021年のイヴァン監督作品『告発の先に』 LES CHOSES HUMAINESの主役は、実の息子ベン・アタル。
私はマチューとイヴァンのタッグを目当てにパリで観たのですが、ベンと、そして相手役の女の子も2人とも難しい役を見事にこなしていて、シャルロットが下手に見えるくらい良かったです🤭
人生や人を信頼してる
ジェーン
私は楽天的よ。
物事は基本的にうまくいくと思ってる。あまり深刻に考えないし 恐れない。
想像力も責任感も足りないのね。
ワクワクすることを考えていたいの。
シャルロット
私はママのそこが好き。それって人生や人を信頼してる、てことだよ。
ゲンズブールについて2人が語る時も、シャルロットがセルジュを"voyant" (派手好み、目立ちたがり)だと言うと、ジェーンは
彼の良いところね
と言っていました。
他人にとっては欠点になり得ても、愛する近しい人にとっては長所である。
愛してる、と言うよりも尚愛情を感じて感動しました。
そう言えば昔、
好きになった理由が、やがて別れる理由になる
と言うような言葉を聞いたことがあります。
その意味では、ジェーンには今でもセルジュにある種の愛情があり、シャルロットもジェーンを愛していたのだとクリアになりました。
シャルロットはいつまで経ってもファザコンだけでなく、マザコン…ではなかった
シャルロットは映画の終わりにこう言っています。
人間はほかの人も自分と同じだと思う悪癖がある
私はすぐ"自分なら"と考える
でも実際のところ、自分と同じ人なんてこの世にいない
母の死を意識して、母に思い切り寄り添って、聞きたかったことを聞いて、一緒に歌って、共に過ごして。
シャルロットはいつまで経っても子ども、と思ったけれど違いました。
自分と同じ人なんてこの世にいない
これは彼女の精神的自立の宣誓だったのでしょう。
最後に、ジャケットの重なり合う髪について
最上部に載せたジャケットの2人重なり合う髪と、ひとつになるように抱き合う肉体を見て、ドビュッシーの『ビリティスの3つの歌(Trois chansons de Bilitis)』2曲め『髪(La chevelure)』を思い出しました。
昨夜、夢を見たんだ。君の髪が私の首に巻きついていた。…
それを撫でていたら、それは私の髪になった。そして私たちは、同じ髪によって永遠に結ばれていた。
ちょうど2本の月桂樹がひとつの根を分かち合うように。
そして少しずつ、私たちの体がひとつに溶け合って、私が君になり、あるいは君が夢のように私の内に入り込んできたように思えた。
このシャルロットの作品には、親子の愛、そして深く関わり合った魂と魂が死によって分たれる辛さを乗り越え受け入れるためのヒントがたくさん詰まっているように思います。
私も、生きている内に身近な人たちには想いを伝え続けたいものです。
うまく伝えるのはなかなか難しいけれど。

