バックオフィスの属人化が起きる会社の特徴5選——問題は人ではなく業務の設計にある
はじめに
バックオフィスの担当者が辞めるたびに業務が止まる。
採用して、教えて、また辞める——この繰り返しに悩む経営者は少なくありません。実は私もその一人でした(笑)
この構造にとても悩みました。採用する意味、教える意味があるのか、投下した時間やお金が無駄になってしまった、自分の何がいけなかったんだろうと毎日悩み続けました。
私が今まで支援してきた企業でも、
「経理が辞めた瞬間に月次が止まる」
「給与計算ができる人が1人しかいない」
という状況は珍しくありませんでした。
私は公認会計士として12年間、3500社以上のバックオフィスを見てきました。
その中で確信していることがあります。
問題は担当者の能力ではありません。優秀な人を採用するかどうかを問題にしてはいけません。
問題は業務の設計です。
結論:属人化は「自然発生」する
バックオフィスは放置すれば必ず属人化します。
所謂、お局という問題です。私はお局の後継者問題があると思っています。担当者が長く続けるほど、その人の頭の中にノウハウが蓄積されていく。
日々の例外対応や判断が、少しずつ個人の経験として積み上がっていく。
誰も悪意はありません。
むしろ優秀な人ほど、属人化を加速させます。
そして優秀である人と、人への説明がうまい人は=(イコールではありません)。
なぜなら「自分で考えて解決できてしまう」からです。
だから他人に説明する、他人にやらせるよりも自分でやったほうが早い。
できない人を見てなんでこんな簡単なことができないのかと思ってしまう。
そして言語化をせずに日々過ぎ去っていく
しかし、それは会社にとってはリスクになります。
属人化は必然的に起きてしまう状態です。
なぜなら優秀な人を採用しようとしているからです。
でもバックオフィスに関する優秀な人の定義は、「何でも知っている、なんでも処理ができる人になっていませんか?」
これをやると業務の設計がおろそかになってしまいます。
日々あわただしく過ぎる中、自分で業務を行ったほうが著しく速いからです。
でも
本当に必要なのは仕組みの構築なのです。
業務の設計に意識を向けなければ必ず将来リスクが顕在化してしまいます。
属人化が起きる会社の特徴5選
① 業務が言語化されていない
3500社以上のバックオフィスを見てきた中で、
強く印象に残っている出来事があります。
ある会社で、経理担当者が突然退職しました。
その翌日、
月末の締め処理が完全に止まりました。
誰もやり方が分からない。
どこまで進んでいるのかも分からない。
社長から私に電話がありました。
「どうしたらいいですか」
その時に明確に分かりました。
問題は人ではありません。
仕組みです。
多くの会社にはマニュアルがあります。
しかしその多くは手順しか書かれていません。
本当に必要なのは
・なぜその処理をするのか
・どのように判断するのか
・例外時にどうするのか
という判断基準です。
これが言語化されていない限り、業務は引き継げません。
② イレギュラー事項・例外処理が整理されていない
バックオフィスの本質はイレギュラー事項・例外処理です。
通常業務は誰でもできます。
問題はイレギュラーです。
業務の件数でいえば、通常業務が9割・
イレギュラーが1割です。
でも業務時間の配分は逆転します。
イレギュラー対応に9割の時間が費やされる。
だから担当者が辞めると止まるのは
通常業務ではありません。
その人の頭の中にあるイレギュラー対応の
知識が消えるからです。
・初めての取引
・特殊な契約
・曖昧な請求内容
・顧客との決め事
こうしたケースが出たとき、
判断が個人に依存していると属人化します。
バックオフィスは営業と異なり失敗に対して減点主義でみられます。だからこの対策、このイレギュラーの設計が必要なんです。
例外処理は発生した時に考えるのではなく、
事前にパターン化する必要があります。
③ 進捗が見えない
今どこまで進んでいるのか分からない。
これは属人化の典型的な状態です。
担当者に聞かないと分からない。
聞かないと判断できない。
この状態では引き継ぎは不可能です。
進捗は
・誰が見ても分かる
・リアルタイムで更新される
・粒度が統一されている
この状態にする必要があります。
④ チェック機構がない
チェックが属人化すると、品質も属人化します。
例えば
・最終確認が1人に集中している
・レビュー基準が曖昧
・ダブルチェックがない
この状態では、その人がいなければ品質が担保できません。
チェックは人ではなく仕組みに落とす必要があります。
・チェックリスト
・承認フロー
・ルール化された基準
これが属人化防止の核心です。
⑤ 引き継ぎ設計がない
前任者から3日で引き継いだ。
これはよくある話ですが、3日で本質は伝わりません。
よくある話として経験しているのが、
引継ぎ時に「これを見ておいてください」というケース。
人間はそんなに細かく見ません。
そしてポイントがどこかもわからないのに文章や資料をみてもなかなか頭にはいってきません。
でも前任担当者は引き継いだ気になっている。
ただし、後任担当者は引き継がれた気になっていない。なにがなんだかわからない。それにもかかわらず前任担当者が「引き継ぎましたよね?」「前にも話しましたけど?」ということが多い。このように言われるものだから後任担当者も質問ができない。9割はわかるかもしれないが、最後の部分でどのようにしたらいいのか、いまいち不明なところが残る
結果として業務がうまく回らずに炎上する。
引き継ぎとはイベントではなく状態です。
つまり
いつ誰が抜けても回る状態
を作り続けることが重要です。
・業務が分解されている
・ドキュメントが更新されている
・第三者が理解できる状態
これがあって初めて引き継ぎが成立します。
特に第三者が理解できる状態であることが重要なんです。
頭のいい前任者だけがわかる引き継ぎ書があったとしても、それを見たほかの人は何もできません。つまり何も引き継がれません。
これは実際の現場でよく起こるケースです
「誰でも回る状態」を作るための3ステップ
Step1:業務を分解する
→ 何が属人化しているのかを明確にする
Step2:可視化する
→ 判断基準・進捗・例外処理を誰でも見える状態にする
Step3:標準化する
→ 誰がやっても同じ品質で回るようにする
Step4:あいまいな文書を減らす。言葉の定義をそろえる
そこを入力して、ここを入力して、という言葉では伝わりません。
具体的な資料名、具体的な入力箇所を示す必要があります。
また例えば売上の資料ひとつとっても「売上管理表」という人もいれば「売上実績表」という人もいます。また同じ人でも気分によって言葉を変える人がいます。これでは前任のことをほとんど知らない後任者がその業務を行うとき、「売上管理表」と「売上実績表」は何が違うんだろう?ということになってしまいます。
重要なのは順番です。
いきなりマニュアル化しても意味はありません。
まず構造を作る必要があります。
まとめ——設計しない会社は必ず属人化する
属人化は自然発生します。
しかし設計すれば防げます。
問題は担当者の能力でも、やる気でもありません。
問題は構造です。
そして
担当者が辞めるたびに、
経営者が口にする言葉があります。
「もっと早く仕組みを作っておけばよかった」
この後悔をなくすこと。
それが、私がBackofficeForceを作った理由です。
強い会社は、優秀な人に依存しない。
業務の設計に依存する。
次回
属人化を解消した会社が実際にやった3つのこと
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筧 智家至
公認会計士・税理士
BackofficeForce株式会社 代表
(12年・3500社以上支援)
