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第3章『命の環(わ)をつなぐもの』第十一話|風が見せた道


第十一話|風が見せた道

それから、季節がいくつか巡った。

ひかりのいない朝は、少しだけ静かだった。

食卓の隅に置かれた鈴の音も、もう鳴らない。

それでも、花音は時々、ふとした瞬間に思う。

――あの子の音が、まだどこかにいる気がする。

ある日の放課後。

花音はランドセルを置くと、神社へ向かった。

空は少し曇っていて、風がやわらかく頬を撫でた。

鳥居をくぐると、竹の水桶のそばで風が回る。

落ち葉がくるくると舞い、その中心に光の粒が見えた。

まるで“導かれている”ように。

花音は足を止めた。

――ミオ? ひかり?

心の中でつぶやくと、風がふわりと吹き抜けた。

「花音」

振り返ると、そこには住職の根古が立っていた。

けれど、前よりも少し若く見える。

まるで、彼の中の“光根”が透けて見えるようだった。

「また来てくれたのですね」

「うん。ひかりに会いたくて」

「風はね、姿を持たぬものを運ぶのです。

言葉も、思いも、魂も――。

それはいつか、次の形になる。」

住職の言葉は、まるで祈りのように静かだった。

花音はうつむき、手の中の鈴を見つめた。

少し古びた金色の鈴。

光に当たると、小さく揺れた。

「また会えるの?」

「ええ。会えますよ。

でも、それは“あなたが進む道”の先でね。」

花音は目を閉じ、深く息を吸った。

風が髪を揺らし、木漏れ日が頬を照らした。

神社を出ると、空が明るくなっていた。

雲の隙間から差す光が、まるで“道”のように地面に伸びている。

「ママ、見て。道ができてる」

境内の外で待っていた優衣が微笑んだ。

「ほんとだね。風が教えてくれてるのかも」

花音は空を見上げた。

そこには金色の光がゆらゆらと漂っていた。

――命は風のように。

見えないけれど、確かにここにいる。

花音は小さく頷いた。

そしてその手の中で、鈴がやさしく鳴った。

第十一話|風が見せた道


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