「好きだからだよ」——80歳を過ぎても夢を掘り続ける人と、50代の私が、もう一度「書くこと」に向き合った理由
子どものころの夢を、大人はどれくらい覚えているのだろう
50代半ばになった今、
私はときどき、こんなことを考えます。
自分は、何が好きだったのだろう。
本当は、何をしたかったのだろう。
日々を生きるのに精一杯で、
「現実的に」「無理なく」「周りに迷惑をかけないように」
そんな判断を積み重ねてきました。
それは間違いではなかったと思います。
けれど、ふと立ち止まったとき、
胸の奥にしまい込んだままの思いが、
まだ息をしていることに気づく瞬間があります。
そんなときに出会ったのが、
エジプト考古学者・吉村作治先生の記事でした。
「好きだからだよ」だけで、60年続いたエジプト発掘
吉村先生が初めてエジプトの地を踏んだのは1966年。
早稲田大学の学生だった頃のことです。
お金はない。
飛行機代もない。
航空会社を回って断られ、
貨物船にも断られ、
最後に交渉したのが石油タンカーだった、という話。
無謀とも言える行動ですが、
そこには「どうしても行きたい」という
まっすぐな気持ちしかなかったのだと思います。
それから60年以上、
吉村先生は発掘を続けています。
バカにされても、骨折しても、やめなかった
発掘中の転落事故で、
左膝を複雑骨折。
車いす生活と長いリハビリ。
それでも、やめなかった。
「情熱があるからですか?」
そう聞かれたときの答えが、
とても印象に残りました。
「情熱じゃない。好きだからだよ」
この言葉を読んだとき、
「めっちゃかっこいい」と思いました。
「好き」という気持ちを、
私はどれくらい大事にしてきただろう。
途中で、
「仕方がない」と手放したものは、
なかっただろうか。
ピラミッドは墓ではない——笑われても、確かめたかった
吉村先生は
「ピラミッドは王の墓ではない」という説を唱えています。
発表した当初は、
多くの研究者に笑われたそうです。
それでも、
20年かけて発掘許可を申請し続け、
2023年、ようやく調査が認められました。
誰も信じていなくても、
自分が「確かめたい」と思ったことを、
やめなかった。
その姿勢に、
私は強く心を動かされました。
図書館に逃げ込んだ少年と、一冊の本
子どものころ、
いじめにあっていたという吉村先生。
逃げ込んだ場所が、図書館でした。
そこで出会った一冊の本が、
人生を決めた。
笑われても、
否定されても、
心が動いた瞬間を信じた。
それが、
80歳を過ぎた今も続いている。
実は私も、文章を書く人になりたかった
ここで、
少し私自身の話をさせてください。
実は私は、
子どものころ、密かに思っていました。
文章を書く人になりたい。
作文を褒められることがあって、
「私、ちょっと書くのが上手なのかもしれない」
そんな小さな自負もありました。
けれど同時に、
それは“一握りの人の夢”だとも思っていました。
現実の人生では、
選ばないほうが安全な道。
そう思って、その気持ちをしまい込みました。
誰かのための言葉を書いてきた時間
これまで私は、
認知症介護をしている家族に向けて、
気持ちや体験を言葉にする ということに向き合ってきました。
混乱や不安の中で、
「どうしたらいいのかわからない」
そんな声を、何度も耳にしてきたからです。
言葉があるだけで、
少し呼吸ができることがある。
そう信じて、書いてきました。
その経験をまとめて、
最近、Kindleで一冊の本を出版しました。
50代になって、自分のために書き始めた
本が形になったとき、
私は思いました。
これは、
誰かのためだけでなく、
私自身の人生の宝物でもある、と。
そして今、
正直に言えば、こう思っています。
これを、続けていきたい。
吉村先生の
「好きだからだよ」という言葉は、
ずっと後回しにしてきた
自分自身の気持ちを、
そっと起こしてくれました。
夢は、一直線じゃなくていい
子どものころの夢を
一生追い続ける人もいれば、
人生の途中で、
思いがけず出会い直す人もいる。
医師からうどん職人へ転身した人の話を見たときも、
同じことを感じました。
共通しているのは、
「好き」という感覚を、無視しなかったこと。
生涯、夢中になれるものは何ですか?
50代半ばの今、
私はまだ途中です。
でも、
「近づいている」とは言いたい。
人の評価ではなく、
自分の心が動く方向へ。
吉村作治先生は言います。
「死ぬまで、あきらめないよ」
その言葉は、
私自身への問いになりました。
生涯、夢中になれるもの。
あなたには、ありますか?
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👤 書き手:恵美子
認知症支援・福祉の現場で長年働いてきました。
現場のリアルと、
心が少し軽くなるヒントを発信しています🌷
