アオアシの爪痕:サイドバックに隠された、息子の小さなプライド
サッカー観戦での価値観の違い、みなさんも感じることはありませんか?
『点を取らなきゃ勝てない』と言われると、むしろ『点を取られなきゃ負けない』と思ってしまう。『止める蹴る技術が大事』と言われれば、『いやいや、ダイレクトじゃないとすぐ寄せられて取られるだろ!』と、つい心の中で突っ込んでしまう。
息子が点を取ることを二の次に、サイドバックを定位置にしてからというもの、私の見る目も、口から出る言葉もすっかり別物になりました。
『ポジション無しで、全員で攻めて全員で守る』。
気持ちとしてはわかりますよ、ええ。U8のミニコートなら言わずもがな、みんながボールに群がるあの感じは可愛らしいものです。そもそも低学年のうちは、ポジションを言おうが言いまくろうが、理解していない子の方が圧倒的に多いのですから。
でも、それをU10以上の広いピッチで、しかも試合中に真っ当にできる子が一体何人いるというのでしょう。
体力や走力がどうこう以前に、照りつける過酷な太陽の下、うちの息子なんて熱でもうろうとしちゃった苦い経験があります。それに、そもそも「ディフェンスがやりたい!」と自ら手を挙げる子は、チームでは数えるほどしかいません。
だからこそ、「最初からポジションなんて必要ない」「全員で点を奪え」なんて、そんな理想論を堂々と語れる環境がうらやましくて仕方ありません。きっと、一部の優れた個が集まったエリート特化型のチームにいらっしゃるのでしょう。
一つのゴールと同じくらい、相手に一つもシュートを打たせないこと、危ない芽を事前に摘み取ることにだって、途方もない価値はあるはずです。守りを固めるだけの消極的なチーム作りではなく、前線へとボールを繋ぐためにこそ、ディフェンスラインの質が重要なのです。
後ろが安定しないことには、いつまで経っても前線にボールは届きませんよね?
それとも、まずは1点取らせてからの逆転劇を狙っているのでしょうか。だって、中央から確実にボールを持てるのって、失点したあとのキックオフのときくらいですもんね? それだと常に相手を追い掛ける苦しい展開になりませんか?
最近の私は、フォワードのポジションにいる子たちに対して、どうも目が厳しくなりがちです。
なぜなら、息子のチームには「守備を一切しないストライカー」があまりにも多すぎるから!
……っと、あちこちに流れ弾を飛ばしてしまった。みなさん、すみません。熱くなってしまいました。
大人気サッカー漫画『アオアシ』。主人公アシトがサイドバックというポジションに見出され、戦術眼を磨いていく姿に胸を打たれた人は数知れません。あんなにも面白い作品が世の中に溢れているのに、なぜ現実の少年サッカーの現場では、子どもたちの守備への意識や泥臭い役割分担に結び付かないのか……そんな寂しさを、ついついこんな場所でぶちまけてしまいました。
ちなみに、うちの小3の次男は周りに対して「みんなが前に行きたいなら、俺は譲るよ」なんて涼しい顔をしてサイドバックをこなしている風を装っていました。
けれど、後になって本人の口から出たのは、まさかの「アシトに憧れていた」という本音。
その秘密を聞いたとき、私は驚きとともに、なんだかすごくホッとしたのです。
やらされているんじゃなくて、自分で選んで、やりたかったんだ……。
「どうせ子どもは、シュートを決めたくてサッカーをやっているんだろう」とどこかで決めつけていて、息子は私を少し騙していた。それくらい、世の中の親も含めて「ディフェンスというポジションの価値」がまだまだ知られていないだろうと、息子自身もどこかでわかっていたのかもしれません。
親が前線に顔を出して点を取るのを喜ぶからこそ、本当の理由を隠していたのでしょう。
そう考えると、少し切なく、そして誇らしい気持ちになります。
物語のなかの主人公の活躍は、現実のピッチでも確実にディフェンスというポジションの地位向上に一役買った……と言いたいところですが、少なくともうちのチームのU10を見る限りでは、それを理解しているのは息子一人だけですけどね!
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