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【おはなし】金木犀 #風まかせ文芸部

ぼくは、さいきん、ようびが言えるようになった。

げつようび。
かようび。
すいようび。
もくようび。
きんようび。
どようび。
にちようび。

まだ、ときどき途中でわからなくなる。

「げつ、か、すい……」

指を一本ずつ折っていくと、思い出せる。

お母さんに、

「すごいね」

と言われるのがうれしくて、何度も言う。

げつ、か、すい、もく、きん。

そんなある日、お母さんと歩いていたら、木のところに小さな札がついていた。

ぼくは立ち止まった。

ひらがなじゃない。

漢字だった。

でも、最近ちょっとだけ漢字も読める。

「き……ん……もく……?」

お母さんが言った。

「金木犀だね」

ぼくは札をもう一度見た。

きんもくせい?

あれ?

ぼくは、指を折った。

げつ。
か。
すい。
もく。
きん。

「お母さん」

「なに?」

「これ、へんじゃない?」

「え?」

ぼくは札を指さした。

「きん、もく、ってなってる」

お母さんは札を見た。

「うん。金木犀だね」

「でもね」

ぼくは一生懸命説明した。

「もくのつぎ、きんだよ」

「そうだね」

「だから、もく、きん」

ぼくは得意になって、もう一度言った。

「もくきんせい」

お母さんが笑った。

「なるほどね」

「こっちが正しいよ」

ぼくは札を指でちょん、と触った。

「誰がつけたの?」

「昔の人かな」

「じゃあ、昔の人、まちがえたの?」

お母さんは少し考えて、

「どうだろうね」

と言った。

ぼくは、札を見た。

金木犀。

やっぱり、へんだ。


もくのつぎは、きん。

これは、ちゃんと覚えている。

なのに、あの木は、

「きんもくせい」


やっぱり、へんな名前だ。

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