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mgclancy
【創作エッセイ】宿題の山 #風まかせ文芸部
夏休み、机の上は宿題の山。
漢字ドリル。
計算ドリル。
プリント。
読書感想文。
自由研究。
一つひとつは、それほど大きくない。
けれど、後回しにしてきたものが積み重なると、いつの間にか「山」になっている。
子どもは、その山を前にしてため息をつく。
「こんなにある……」
それでも、一枚ずつ片づけていく。
一枚終わる。
山が少し低くなる。
また一枚終わる。
山がまた少し低くなる。
そしてついに、最後の一枚が終わった。
「終わった!」
頂上にたどり着いた。
宿題の山は、なくなった。
でも、そこで夏休みが終わったわけではない。
山には、登ったら下りるという決まりがある。
宿題を終えた子どもは、今度はゆっくりと下山を始める。
その途中で、ふと立ち止まる。
夏祭りで食べたかき氷。
夕方の公園。
家族で出かけた日。
暑くて、何もしたくなくて、一日中ごろごろしていた日。
姉妹でけんかした日。
くだらないことで大笑いした日。
朝寝坊して、遅い朝ごはんを食べた日。
山を登っているときには、前しか見ていなかった。
「あと何ページ」
「まだこれだけある」
「早く終わらせなきゃ」
そんなことばかり。
けれど、頂上を越えて下り始めると、景色がよく見える。
ああ、こんな夏だったな。
そう思いながら、一つずつ思い出を拾っていく。
宿題は、山の頂上に置いてきた。
もう持って帰らなくていい。
でも、思い出はリュックに入れて持って帰る。
花火も。
笑い声も。
けんかも。
だらだらした時間も。
夏休みの終わりは、宿題を終えた瞬間ではない。
頂上から下りながら、少しずつ日常へ戻っていく。
そして山を振り返ったとき、
「ああ、今年の夏も、ちゃんと歩いてきたんだな」と。
宿題の山を登りきった子どもは、今、思い出の山を下りている。
だからもう少しだけ。
拾った夏を、リュックいっぱいにして帰ろう。
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