会社の赤字構造の見抜き方 〜経理・FP&Aが“最短で価値を出す”ための診断フレーム〜
「売上は伸びてるのに、なぜか赤字が続く」
「値上げも採用も頑張ってるのに、資金繰りがずっと苦しい」
「経営陣から“結局、何が悪いの?”と聞かれて詰まる」
――これ、SaaSベンチャーで、めちゃくちゃ起きます。
そして厄介なのは、赤字って“原因がひとつ”じゃないこと。
表面的には「広告費が高い」「人件費が増えた」なんだけど、実はその裏に
粗利の欠陥(ユニットエコノミクス)
成長と固定費のバランス崩れ
売上の“質”が悪い(解約・値引き・回収)
現金の流れが死んでいる(資金繰り)
みたいな構造問題が埋まっています。
この記事では、経理・管理会計・FP&Aが「会社の赤字の正体」を最短で見抜くための
“赤字構造の診断フレーム” を、実務で使える形に落とし込みます。
1. 赤字を「症状」ではなく「構造」で見る
赤字を「費用が多いから」と捉えると、施策がだいたい コストカット一本になります。
でもそれ、会社を弱らせるだけで終わることも多い。
大事なのは、赤字を次の3階層で分解することです。
✅ 赤字構造の3階層
PLの赤字(損益構造):どこで儲かってない?
ユニットの赤字(1顧客/1案件の採算):売るほど損してない?
キャッシュの赤字(資金繰り構造):黒字でも死ぬパターンは?
この順で見ると、原因が“見える化”されます。
2. 【第1階層】PLで赤字の場所を特定する(3つの型)
まずPLは、赤字の型で分類すると早いです。
2-1 型A:粗利が薄い(売っても儲からない)
原価(人件費・外注・インフラ)が想定より重い
値引きが常態化している
サポート工数が爆増している(SaaSあるある)
見抜きポイント
売上総利益率(粗利率)がトレンドで下がっている
“売上が増えるほど”粗利額が伸びない/伸びが鈍い
工数・外注費が売上に連動して膨らむ(準変動費化)
👉 この型は、**コストカットより「設計変更」**が効きます。
(価格・提供範囲・サポート設計・プロダクト改善)
2-2 型B:粗利は出てるのに販管費が重い(固定費過多)
先行投資が早すぎた(採用・組織肥大)
事業が伸びる前に“本社機能”が立ちすぎている
施策が増えすぎて、やってることが散ってる
見抜きポイント
粗利額は伸びてるのに、営業利益が追いつかない
人件費・間接費が増えているのに、売上は横ばい
部門別PLで「どの部門も正当性がある」状態(=誰も止めない)
👉 この型は、**“選択と集中”が最短ルート。
「やることを増やして伸ばす」のではなく、“やめて伸ばす”**が必要。
2-3 型C:特別損失っぽく見えるが、実は恒常的な損(隠れ赤字)
リカバリ案件(追加開発・解約補填)が多い
返品・返金・請求漏れ・回収遅延が起きている
一時的に見える損が、毎月発生している
見抜きポイント
“毎月”何かしらのマイナス要因が発生している
営業の数字は良いのに、請求〜入金で歪む
「今月は例外」が毎月続く
👉 この型は、経理が最も価値を出せる。
なぜなら、“例外処理の山”は会計に全部残るからです。
3. 【第2階層】ユニットエコノミクスで“売るほど損”を潰す
SaaSなら、ここが本丸です。
✅ 最低限見るべき式(これだけで赤字の正体が出る)
LTV(顧客生涯粗利)
CAC(獲得コスト)
Payback(回収期間)
Gross Margin(粗利率)
Churn(解約) / NRR(売上維持率)
特に危険なのはこの2つ。
危険①:LTV/CACが低いのに広告を増やしている
伸びているように見えて、実は赤字を拡大しているだけ。
危険②:NRRが低い(解約・ダウングレードが多い)
新規で埋めても埋めても、底が抜ける。
結果、営業・マーケを増やすほど、固定費も増え、赤字が残る。
経理・FP&Aが刺さる質問
「新規1件あたりの“粗利”はいくら?」
「サポート工数込みで採算合ってる?」
「解約の理由は“プロダクト”か“運用”か“期待値”か?」
「価格設計は“価値”に対して適正か?」
ここを押さえると、経理でも経営の会話に入れます。
4. 【第3階層】キャッシュで“黒字倒産ルート”を潰す
PLが改善しても、資金繰りで死ぬ会社は普通にあります。
よくある資金繰り悪化の原因
前受/後受の構造(請求タイミングのズレ)
売上増で運転資金が膨らむ(回収遅延、未請求)
投資(採用・開発)がキャッシュを吸い続ける
“一時的な支出”が恒常化している
見抜きポイント(超実務)
月次のPLより、資金繰り表の“谷”が深くなっている
売上が伸びるほど現金が減る
“未請求”と“入金遅れ”が放置されている
SaaSは、開発と採用でキャッシュが溶けやすい。
だからこそ、経理が握るべきは「現金の未来」です。
5. 3分でできる「赤字構造チェックリスト」
最後に、あなたが社内で即使えるチェックです。
✅ 赤字の正体を当てる10問
粗利率は直近6ヶ月で上がった?下がった?
売上が増えるほど、外注費/サポート工数も増えてない?
事業別・顧客別で“赤字案件”が埋もれてない?
CACは上がってない?獲得単価が悪化してない?
NRRは100%超えてる?(最低でも維持できてる?)
回収期間(Payback)は伸びてない?
間接費(本社機能)が売上成長より先に増えてない?
例外処理(返金、値引き、追加工数)が毎月起きてない?
未請求・入金遅延・請求漏れが定例で報告されてる?
資金繰りの“最悪ライン”が共有されてる?
この10問に答えるだけで、赤字の型がほぼ確定します。
6. 経理がしんどい会社ほど、あなたの価値は上がる
予算も中計もIPO準備も予実も全部来る。
それは本当にキツい。
でも裏を返すと、こういう会社は「赤字構造の診断」ができる人が少ない。
だからこそ、経理が
事実を整理して
構造を言語化して
“次の一手”に落とす
ここまでできると、存在が一気に“経営人材”になります。
責任感が強い人ほど抱え込みがちだけど、
あなたが抱えるべきは 仕事量 じゃなくて、意思決定の質 です。
まとめ:赤字の原因は、必ず「説明できる」
赤字は怖い。
でも、赤字は“数字の怪物”じゃなく、構造の結果です。
PLで型を当てる
ユニットで“売るほど損”を潰す
キャッシュで“死に方”を止める
この順で見れば、経理でも必ず言語化できます。
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✅【入門】SaaS企業のPL構造を分かりやすく 〜経理でも“事業の言葉”で語れるようになる〜
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