入学式 #ボケ学会
ボーンさんのボケ学会に参加します。
👆あの世に入学準備を済ませたかと言われたいつものジジィ二人です。ほぼ書くこと(説明責任)を強要されましたので、その時のことをお話します。
本文約2530文字
「桜、見事に咲いとるなあ」
『ホンマやな~、また今年も見れたな~』
「知ってるか? 桜にも寿命があるの」
『あ~、うちのな、二軒となりにおる、めい姐さん知ってるやろ』
「あの上品な人な。いっつも挨拶してくれはる」
『あの人も言うてたわ、なんかな、ソメイヨシノはそろそろ寿命らしいと言うてはったわ』
「そうなんか~。でも新しい木も植えてはるから、桜自体が消えるわけではないからな」
『そりゃそうや、あのお人も元気やし。あれやな、美人薄命ちゅーのは嘘やな』
「えらいあんたに似合わん言葉が出るな~。どないしたん? 今日は」
『わしな、もうすぐ入学やねん』
「はあ? あんたもう、学校行く歳とちゃうで、わしらの歳やったら校長先生でもとっくに引退やで」
『あんたな、あんたみたいな博学の人が言う台詞とちゃうで、人間、死ぬまで勉強はせなあかん』
「いやいや、これは参ったな。それはその通り。いや、あんたからそう言われるとは思わんかったわ。こりゃすんまへん」
『えーで、外国のエライ人も言うてはる。※【永遠に生きるかのように勉強し、明日死ぬかのように生きなさい】とな』
「ひえ~、これは参りました。それは誰の言葉なん?」
『知らん』
「あ~、そうか…… でもそんなんよう知ってるな。すごいやないの、あんた。見直したわ」
マリア・ミッチェル(1818-89)米天文学者
「Study as if you were going to live forever; live as if you were going to die tomorrow.」
『わしもな、やるときはやるねん』
「へえ、お見それしました」
『何を?』
「何をってなに?」
『いや、味噌で何、作ったん?』
「また始まった…… そんな事言うてないよ」
『言うたがな、【お味噌でしました】って。おでんか? あんた名古屋の人か? わしはやっぱり、出汁の……』
「ちゃうちゃう! 感心してるの。おでんは関係ない」
『犬、監視してんの?』
「…… 何を…… それ、ころっとした犬やろ、チャウチャウとちゃう」
『チャウチャウとチャウって、二匹おるの?」
「家に犬はおりません!」
『ほな、どこのお家のチャウチャウとチャウがあちこちでウ〇チせんように監視を……』
「…… あのな、犬から離れてくれる、いっぺん……」
『いや、わしとこも犬は今、飼ってないから、ずっと離ればなれで40年……」
「犬と生き別れみたいに言うなよ」
『あっ! あー、すまん。悪かった。わし、つい……』
「いや、謝ってもらわんでもええけどな」
『つい、口が滑ってもうて、あんたとこ、奥さんと生き別れで……』
「家におるわ!! あんたさっき挨拶したやろが、ウチのと!」
『あれは二人目の……』
「勝手に二人目連れてくるな!! ほんまにもう……」
『それで、チャウチャウとチャウは何処の子?』
「もうええ! ちゃう!…… 違う! そんなんどうでもええねん。なんの話してるんやホンマ。 なんやったかな」
『あんたの前の奥さんがチャウチャウとチャウを連れて出て行って、もうかれこれ40年……』
「…… そや、入学すんねやろ。どっか学校に」
『あーそうそう。もうすぐ一年生やで。恥ずかしいなあ。この歳でランドセル』
「いや、別にランドセル背負わんでもええけどな。で、どんな学校いくの」
『聞きたいか? ちょっとあんたには難しいかもしれんで』
「えー、ほなあれか?大学に入り直すとかか?」
『いや、わし、大学はそもそも入ってないから』
「あーそうかそうか。さいから(だから)今から大学入ってまた勉強すると。えらいがなー。大したもんやで」
『いや、大学とは違うねん』
「ほー、ほな、専門学校とか?』
「それも、ちょっと違うなー。ほら、会社がやってるやつあるやろ』
「あー、社会人向けのな。いろいろ講座があるやつやろ? なんの勉強しはるの?」
『料理の道をちょっとな』
「へぇー、あんた今から料理人になるんかいな。えらい厳しいとこ選んだなあー。大変やで、料理人も一人前になるのは何十年もかかるやろ。それに店とか修行するの、あんたの歳で雇うてくれるか?」
『いや、歳とか関係ないんと違う? 学ぶのに。あんたわしがさっき言った言葉をよもや忘れたとは言わさへんで…… カーッ! 誰や? 合いの手入れたんは…… まあええわ」
「なんやどっかで合いの手入ったな…… いや、それはそうや。すまなんだ(悪かった)。わしらの歳でもな、がんばらなあかんわな」
『そうやで、解ってくれたらええねん』
「すまんな。ほんで(それで)どこまで学校に行くの。毎日行かなあかんの?」
『いや、週1回や』
「週一回? えらい授業、少なないか? ほな長い事通わなあかんのと違うん?」
『いや、一応、三ヶ月で卒業やな』
「三ヶ月も短いなー。一日何時間授業あるの?」
『三時間くらいかな』
「…… で、学校はどこにあるの」
『ほら、駅前の〇〇ガスの会社の三階に……』
「あんたそれ、もしかしてお料理教室ちゃうの?」
『教室ちゅうくらいやから学校やな』
「それでは今日はカレーを作りましょうとかやろ?」
『よう、知ってんなあ~。あんたもしかして卒業生?』
「いや、違うけどな…… ま、ええけど…… そこは入学式してくれんの?」
『そうやねん。4月の入学者には特別に桜色のエプロンが特典として付きます~言われてな。思わず、入ります~言うてな~~』
カツ !! カーーーーーッ !!!
背後から突然の《喝》の怒号に二人の老人は硬直し・・・
小さな老人は何事のなかったかのように・・・去って行きました。
「なんやねんな。あーびっくりした~~」
『誰? 誰やねん? あの小さいオジン』
「知らん、なんやカカカッって言いながら行きようで、ほんまに他人驚かせてタチの悪いオジンやで。ほんま……」
『あ、わし、用事思い出したわ。ちょっと先に帰るで』
「あ、そうか。そう言えばわしも思い出したわ。帰るわ」
『ほなな(それじゃあね)』
「ほなな、言うて、同じマンションやんか。一緒に帰ろうや」
『いや、ちょっと急ぐ』
「いや、わしも急ぐねん」
『ほんまに、びっくりさせるから』
「いや、ほんま。ついなあ、緩むわな~」
『洗濯もん乾いとるかな』
「家の中やったらなしでもええやろ」
『いや、嫁はんの借りるわ』
「……」
二人は妙にぎこちない股間を気にしながらの歩き方で帰っていきました。
何があったかは聞かないでやってください。
完
春だったね 吉田拓郎
オジンの会話集👆
