いい間違い
「あの人はね、もう定年退職したんだよ、だからもう来ないんだよ」
言い聞かせるが、子供はまた訊ねてくる
「ねぇねぇ“てんねんたいしょく”ってなに」
「年取ったから仕事辞めるってこと。
でな、“てんねんたいしょく”ちゃうで、定年退職や」
ボクの膝の上にいて、いつものように戯れている。言い間違いは気にしない
気にするのはボクで、『なるほど、天然褪色の方がいいよなぁ。だんだん色褪せてって、それで消えてなくなるって感じだね』
30いや、20代のことだったか
定年退職は、言葉だけの約束だった
今は、突然すぎる雨に、陽が照りかえして、ボクは晒され続けるので、色褪せてしまった
あのときから、定年退職は天然褪色になった。いつも頭の中でそう読み変える
『色が褪せてってんだよなぁ』って
その感触を味わうのは、力ない苛立ちで、しかも妥当なことでもある
繰り返すことが《時間》だとするなら
その中にいるのだろう、きっと
胡坐の中で無邪気に戯れていた、目の奥の空洞が制服を着たあの子が、想像の水溜りで、おばさんになる
子供を産み育てたかもしれない
まだ施設を出られないかもしれない
白い愚かさは、ときどき無邪気に誣言をするのでしょうがない
彼女の黒い髪はキレイに梳かれていた
毛先は乱暴に引きちぎられるが
明日にはまた、切り揃えられていた
むくむくとした体が、木偶を愛でるような情けなさでセーラー服を纏わされている
誰も知らない離れたプレハブ小屋で、彼女は無言のまま弄ばれた
悪について今でも理解できないのかな
言葉をいくつ覚えたのかな
飢えることなく生き延びるのかな
つまはじかれて、にんまりしてたよな
風向きが変われば泣きじゃくり、予測できない天気みたいだったよな
キミの目の奥は深い漆黒の空洞
都会のコンビニの長椅子のはじっこに、
キミは探せないから
ボクは思った通りの道を歩んだ
ボクは思った通りの道を歩んだんだ
陽の光に照らされ
ボクは君が選べなかった道を歩んだ
ほんのすこしのすれ違いだったけど、
君が言ったとおりに、灼けて色は褪せていくんだね
いまは、キミがボクを抱きしめているのがわかるかい
作詞して、調子に乗ってAI(SUNO)にぶち込み曲にしました。
詞のことは30年以上前で、忘れないある白痴の少女との出会いです。
彼女の身辺を世話していたおじさんが定年退職し、自分のところに来なくなった。
その理由を訊ねるので、こちらが「定年退職だ」と説明するのを聞き間違え、「“てんねんたいしょく”ってなに」というので、それが面白く、“天然褪色”とあて字して、以来気に入ってずっとそうしています。
癇癪を起こすと自分の髪を毟り、毎日髪が短くなっていく彼女との思い出が、胸のうちにあり、時を経て今また違った現実として、始まりと終わりの点と点が、一本の白い線で結ばれるようです。
AIの文字起こしはあてにせず、歌詞を見て曲を楽しんで貰えるとうれしいです。
前回同様、曲のイメージの構成には難儀しました。ただ、少しだけ曲調を(課金なしの範囲ですが)コントロールできたように思います。
https://suno.com/s/XS2poA3EvqVt5WD7
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#創作大賞2026
