見出し画像

窓。

YUUKI KUBOTA JOURNAL

ISSUE 005

窓。

まだ見ぬ世界を窓の向こうに探し求めて。


旅先のホテルでは、

カーテンを開けるのが好きだ。


チェックインをして、

荷物を置いて、

ベッドに腰掛ける。

少し休んでから、

なんとなくカーテンを開ける。


すると、

知らない景色がある。


海や

山。

知らない街の屋根、

隣の建物の壁。


たまに、

びっくりするくらい何もないこともある。


でも、

それもいい。


窓の向こうにあるものを眺めていると、

「ああ、ここに来たんだな」

と思う。


旅に来たことを、

一番最初に教えてくれるのは、

案外、

観光地ではなくて、

ホテルの窓なのかもしれない。


窓は、部屋と世界のあいだにある。

少し考えてみると、

窓って不思議だ。


壁なのに、

外が見える。


外に出なくても、

外の世界を感じることができる。


雨が降っている。

風が強い。

木が揺れている。

誰かが歩いている。

鳥が飛んでいる。


窓を閉めていても、

なんとなく分かる。


そして、

窓を開けると、

音が入ってくる。

匂いも入ってくる。

温度も入ってくる。


だから、

窓はただの「穴」ではないのだと思う。


部屋の中にいながら、

世界とつながる場所。


朝なら、

遠くから車の音が聞こえる。

誰かが自転車で通り過ぎる。

鳥の声がする。


夜なら、

向かいの建物に明かりが灯る。


そこにもきっと、

知らない誰かの生活がある。


自分は旅先の、

たった一室にいるだけなのに、

窓の向こうでは、

知らない街の一日が続いている。


そういうものを眺めていると、

自分も少しだけ、

この街の一部になったような気がする。


だから、

建築を見るときも、

窓が気になる。


海のそばなら、

海が部屋の中まで入ってくるように感じる。


森の中なら、

木々が部屋の一部になる。


街の中なら、

人の動きや、

夜の光まで、

部屋の景色になる。


建物が世界から切り離されているのではなく、

世界の一部になっている。


そんな建築が、

僕は好きだ。


知らない朝。

旅先で迎える朝も好きだ。


目を覚ます。

まだ少し眠い。


いつもの部屋なら、

目を開けた瞬間に、

だいたい何が見えるか分かる。


でも、

旅先では違う。


カーテンの向こうが、

まだ分からない。


少しだけ期待しながら、

カーテンを開ける。


朝の光。

知らない街。

海。

山。

電線。

屋根。


それを見て、

今日が始まる。


なんだか、

それだけで少し嬉しい。


旅に出ると、

「朝」というものまで、

少し新しくなる。


いつもの朝なら、

昨日の続きみたいだけれど、

旅先の朝は、

昨日とは違う場所から始まる。


それだけのことなのに、

少しだけ自由になったような気がする。


窓から見える景色は、同じではない。

同じ窓でも、

時間によって景色が変わる。


朝は、

やわらかくてあたたかい光。


昼は、

街のすべてを照らすような、

力強い光。


夕方になると、

街が少しオレンジ色に染まる。


どこかやさしくて、

少しだけさびしい。


夜になると、

今度は部屋のほうが明るくなって、

窓は鏡になる。


昼間は、

世界を見ていたはずなのに、

夜になると、

自分の姿が映っている。


なんだか面白い。


同じ窓なのに、

時間が変わるだけで、

見えるものまで変わっていく。


世界が変わったのか、

自分の見方が変わったのか。


そんなことを考えながら、

夜の窓を眺めることがある。


電車の窓も好きだ。

旅に出ると、

電車に乗る。


目的地まで、

あと何駅。


そんなことを確認しながら、

窓の外を見る。


知らない家。

知らない駅。

川。

田んぼ。

工場。

海。


一瞬で通り過ぎる。


写真を撮ろうと思っても、

間に合わない。


「あ、今の良かったな」

と思った頃には、

もう見えない。


でも、

それでいい。


写真に残らなかった景色ほど、

なぜか後から思い出したりする。


あの電車から見た、

あの景色。


どこだったか、

もう分からない。


でも、

覚えている。


旅をしていると、

そういうことがたまにある。


写真には残っていないのに、

記憶の中には残っている。


もしかすると、

旅の記憶って、

そういうものなのかもしれない。


同じ窓から、違う世界を見ている。

ここまで書いて、

ふと思った。

ここから先は

759字

¥ 100

Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで

応援ありがとうございます🪙