雪の日のここ掘れワンワンはしもやけの味がする
大人になっても、なんだかんだ雪はテンションが上がる。
特に予定のない休日なら、なおさらだ。
しっかり厚着して、毛糸の帽子をかぶって、外に繰り出そう。
そして、おもちゃはちゃんと片付けておこう。
これは今日の教訓だ。
休日だというのに、家族全員いつも通りの時間に起きてしまった。
夫がドリップコーヒーを淹れているのを横目に、私はインスタントコーヒーの粉を手に取る。
私は濃さを自在に操れるインスタント派だ。
ゆっくりお湯注ぐの面倒だし。ゴミ出るし。
朝食はホットケーキにしよう。
卵と牛乳、隠し味にマヨネーズとヨーグルトを少し。
これを入れると、しっとり&もっちりになる…気がする。
娘が食べやすいよう、手のひらサイズで焼くホットケーキはあっという間に焼き上がる。
2〜3枚重ねて、はちみつをかけて、デザートにいちごを添える。
うん、いい朝だ。
ところで。
視界の端に映る窓の外が、やけに明るい。
キッチンの窓は霞ガラスなのでよく分からないけれど、なんだか白い。
「なんか外、白くない?」
その一言で、夫が今日初めてカーテンを開けた。
「……ッ雪だー!娘ちゃん!雪積もってる!!」
「ゆきぃぃぃぃぃ!!!」
ちょうど追加のホットケーキをひっくり返したタイミングで、片や絶望、片や歓喜の声が響く。
ちなみに夫、釣りに行きたかったらしい。
雪の海は、だいぶ修羅だと思うぞ。
朝食後、待ちきれないと言わんばかりに玄関へ突進する娘を捕まえる。
雪に耐えられるよう薄手のズボンを裏起毛に変更。
レッグウォーマー、ダウン、手袋、帽子を装備。
もっこもこの雪ん子、完成。
きゃー!と駆け回る娘の後ろを、
一眼レフを構えた夫と、スマホをポケットに入れた私がのんびり追う。
普段なら会釈で終わるご近所さんとのエンカウントも、今日は違う。
「寒いですね」「楽しそうですね」「すごい雪ですね」と、会話が発生する特別デーと化す。
ご近所の女の子が砂場セットで雪を集めているのを見て、「うちも持ってくるか」と、公園を目の前にして私だけ家へ引き返した。
そして、引き返した先で途方に暮れた。
目の前、一面、真っ白。
なんてきれいなキャンバスなの。素敵。
砂場セット、完全に雪の下に埋もれていらっしゃる。
ちゃんと片付けていないのは知っていた。
「なくなっちゃうよ?」と言いながら放置していた。
でも、雪で“地形ごと消える”とは思わないじゃない?
前回遊んだのは夫と娘なので、どこに放置したかも分からない。
しかもこちとら素手だ。
雪に触れるのは最小限にしたい。
しかし足で探そうにも、うっかり踏んだら、私の体重でバキッといく未来が見える。
仕方ない、と覚悟を決めて雪に手を突っ込み、
「ウヒョォォ……!」
情けない悲鳴が、静かな住宅街に響いた。
勘の良くない私の「ここ掘れワンワン」は外れ続け、気づけば10個ほどの穴ぼこが完成。
それでもなんとかバケツとスコップを発掘した私は、公園に戻り、写真を数枚撮って任務完了とばかりに早々に帰宅した。
本当はもっと一緒に遊びたかった。
でも、手が限界だったもので。
雪の中に突っ込んだ指先は、冷たいを通り越して、子どもの頃に知った“しもやけの味”そのものだった。
本日2杯目のコーヒーをすすっていると、娘たちが帰ってきた。
地域の子どもたちとも遊べたらしく、にっこにこ。
とても楽しかったのだと、興奮と寒さでりんごみたいに赤くなったほっぺが伝えてくる。
そして手も、真っ赤。
お湯を張った洗面器に手を入れて、「あったかい〜」と頬をゆるめた数秒後、
「かゆいぃぃぃぃ!!!」
しもやけの洗礼、発動。
かゆいかゆいと訴える娘の手を揉みながら、「大丈夫だよ」と言って、笑った。
年に数回しかない雪遊びのチャンス。
この冬は、きっとこれが最後だ。
次は11月か、12月か。
雪が降る日には、砂場セットはちゃんと片付けておこう。
これが次回へのフラグなら、次の雪の日も、私は悲鳴を上げながら雪に手を突っ込むのだろう。
そしてしもやけになった手をこすりながら、同じく頬と手を赤くした娘に、私はきっと笑っている。
ワンワン。
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