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ミドル転職は、経験を売るだけ? まだない経験を取りに行けるのか

経験を積みたい。
でも、その経験がないと採ってもらえないのでは。

ミドル世代の転職について考えていて、ここで引っかかった。

きっかけは「ミドル世代の転職、7年で2.5倍」という発表だ。最初は、元の人数が少なかっただけではないかと思った。倍率だけで、転職しやすくなったと言えるのだろうか。

自分も、30代中盤から今後の働き方を考える中で、転職を選択肢に入れている。ただ、企業は結局、若い人を採りたいのではないかという不安もあった。

一方で、欲しいのは「今できる仕事をする場所」だけではない。

将来は、自分で会社をつくることにも興味がある。そのために事業づくりやサービス運営を経験したいと思ったとき、転職して学べる場所へ行く道はあるのか。

ミドルの転職は、これまでの経験を売るだけなのか。それとも、次に必要な経験を取りに行くためにも使えるのか。

この疑問から、数字と採用側の調査、実際の求人を読んでみた。

「2.5倍」は、そのまま転職のしやすさではなかった

まず、2.5倍になったのは、日本全体のミドル転職者ではなかった。

エンの転職サイト「ミドルの転職」を利用して転職した35〜59歳について、2025年の人数を2018年と比べた数字だ。公表資料には各年の実人数や応募者数がなく、利用者が増えた影響も切り分けられない。

だから、「元々少ない人が増えただけ」とも断定できない。ただ、転職できた人数の増加と、応募した人が採用されやすくなったかは、別の話だった。

全国の状況はどうなのか。

総務省の労働力調査では、35〜44歳の就業者に占める転職者の割合は、2018年が4.5%、2025年が4.4%。この二つの年を比べると、ほぼ同じ水準だった。

ここでの転職者は、現在働いていて、過去1年間に前の仕事を辞めた人を指す。応募者のうち採用された割合ではなく、正社員だけの統計でもない。エンの集計とは年齢の区切りも対象も違う。

ニュースの数字が間違っている、という話ではない。

ただ、「ミドル全体が動きやすくなった。だから自分も大丈夫」と受け取る根拠にはできなかった。今回の資料だけでは、若い人と比べて年齢がどれほど採用に影響するのかも分からない。

経験の名前だけでは、何ができるかは伝わらない

では、企業はミドルに何を求めているのか。

エンが転職コンサルタント156人に聞いた調査では、採用で重視されるものとして、業務経験や専門知識・スキルが上位に挙がっていた。高く評価される特徴で最も多かったのは、これまでの実績を別の環境でも生かせることだった。

単に「この仕事を経験しました」ではなく、どんな課題に対して、自分が何を考え、どう動いたのか。その経験を、次の会社でどう使えるのか。

そう説明できることが大切なのだと受け取った。

同じ調査には、経験やスキルが少し足りなくても、主体的に学んで補えそうだと判断され、採用された例もある。ただし、これはコンサルタントから寄せられた事例で、採用成功率を示すものではない。

「能力がなくても、経験さえあればいい」わけではない。経験を通じて、何ができるようになったかを伝える必要がある。

ここは、自分の仕事にも戻して考えた。

今、システムに何が必要かを整理する「要件定義」から携わる予定の案件がある。まだ、経験済みの実績ではない。

実際に取り組む中で、どこを担当し、何を工夫したのかを残しておきたい。「要件定義をやった」で終わらせず、自分の役割を説明できるようにしたい。

これまでの仕事も含め、何を経験してきたかを整理する必要があると感じた。

「未経験可」でも、土台になる経験は求められる

次に気になったのは、今までとは違う役割へ進む余地だ。

例えば、何を開発・改善するかを考え、関係者と進める仕事がある。「プロダクトマネージャー」と呼ばれる役割だ。

フィッツプラスの求人では、この職種が未経験でも応募できる。一方、業務改善の提案、開発内容を具体化した経験、プロジェクトをまとめて進めた経験などは必須とされている。

入社後1〜2年は既存サービスの改善に取り組む予定で、実力次第では事業開発などへ役割を広げられる、とも書かれていた。

この募集を見て、今までの経験を使うことと、新しい経験を積むことは、二者択一ではないのだと思った。

ただし、ミドル限定の求人ではない。**30代中盤以降の採用実績や、入社した人が希望どおりの経験を積めたかまでは、この募集からは分からない。**事業開発への道も、約束ではなく条件付きだ。

「自分も採ってもらえる」とまでは言えない。

それでも、今ある経験で役に立ちながら、まだ担ったことのない役割を広げる。そんな転職の考え方は、選択肢に残せそうだ。

本当に転職を考えるなら、採用されるかだけでなく、入社後に何を担当し、どこまで経験できるのかも確かめたい。

まず、何のために経験を増やすのかを決めたい

今回の調査で、転職すると決めたわけではない。

今の自分が先に考えたいのは、65歳くらいまで、何を目標に働き、生きていくのかということだ。

自分で法人をつくり、会社を経営することには興味がある。AIも活用しながら事業をつくる可能性を考えている。ただ、どんな分野で、誰に何を提供するのかは、まだ決まっていない。

だから、「自分に足りない経験」を探すより先に、そもそも何を目指すのかを深掘りしたい。

方向性を考える。そのために必要な経験を整理する。今の自分が持っている経験と照らし合わせる。

そのうえで、今の会社で得られるものは何か、別の場所で働く選択肢も考えるのかを決めていきたい。

転職は、目的地ではなく、そのための手段の一つだ。

「2.5倍」という数字だけで安心はできなかった。自分の転職可能性も、まだ分からない。

でも、ミドルだからと最初から選択肢を消すのではなく、今の経験を生かしながら次の経験を得る道として考えてみたい。

転職できるかの前に、転職で何を増やしたいのか。

まずはそこを、自分の言葉にしたい。

参考情報

確認日:2026年9月14日。求人情報は、確認時点の掲載内容を参照しています。

エン|「ミドルの転職」転職者分析レポート2026(2025年実績)
2026年9月7日公開。同サービスを利用して転職した35〜59歳の、2018年と2025年の人数比較を確認。

総務省統計局|労働力調査(詳細集計)2025年平均結果の概要
35〜44歳の転職者比率について、2018年と2025年の公表値を確認。定義は「用語の解説」を参照。

エン|「転職市場で評価されるミドル、されづらいミドル」調査
2026年3月25日公開。転職コンサルタント156人へのアンケートから、評価される経験の伝え方や採用事例を確認。企業への直接調査ではありません。

フィッツプラス|プロダクトマネージャー(未経験可)の求人
職種未経験可の条件、必須とされる経験、入社後の担当予定を確認。特定企業への応募を勧めるものではありません。

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