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第67歩、脳内パニックの電気信号。――過敏な感覚器が支払う、本当のコストの正体


周囲の環境から押し寄せるノイズを前に、私の身体は冷たい汗を流し始める。

毎朝の通勤電車、職場内の話し声や鳴り響く電話の音。

世間の人間は、街の雑音や商業施設の混雑や日常の雑音などを、
やり過ごせる程度の些細(ささい)な事象として捉える。

しかし、ADHDとASDの特性を併せ持つ私の脳にとって、それらの刺激は処理能力の限界を一瞬で超えさせる、過剰なデータ流入そのものだ。

感覚過敏がもたらすダメージの本質は、気分の落ち込みといった曖昧な言葉では表現できない。

それは、スマートフォンのバッテリーが急激にゼロへと転落する時のように、思考の回路が物理的に焼き切れる現象だ。

一度このクラッシュを起こせば、喉は激しく収縮し、手元の電卓の数字を正確に認識することすら不可能になる。

この状態からシステムを再起動させるためには、外部の刺激を完全に遮断した、圧倒的な静寂のインフラがどうしても必要となるのだ。

私がハイクラスホテルの防音サッシの厚みを調べ、数万円の決済ボタンを押す理由が、ここにある。

それは優雅な宿泊体験を求めているからではなく、脳のメモリが完全に破壊される前に、

物理的な要塞へと逃げ込むための生存の防衛動作だ。

残された猶予の数値を睨みつけながら、私は自らの脳を守るための計算式を、黒いペンでノートへ刻んでいく。

【師匠の黄金錬金術:其の七】

「環境ノイズによって感覚器が飽和し、激しい身体的ダメージが始まった直後の『緊急デトックス(減衰)』動作手順」

ノイズの直撃を受け、喉の収縮や思考停止などの具体的なダメージが始まった際は、

即座に以下の3つの動作を遂行し、脳へのダメージを最低値へと抑え込む。

1. 混雑した空間から1秒でも早く離脱し、最寄りの多目的トイレ、あるいはホテルの化粧室などの「壁が厚く、他者の視線が入らない個室」へ物理的に身を隠す。

2. 携帯している耳栓を深く装着し、両手のひらで両目を覆って視覚と聴覚のデータ流入を完全にシャットアウトする。

3. その姿勢のまま、深呼吸を3〜4回ほど行う。
(吐く時はゆっくりと時間をかけて)

この物理的な退避とデータ遮断を徹底することで、パニックの長期化を防ぎ、

次の生存ルートの再計算(リカバリー)へとスムーズに移行することが可能となる。


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