令和のお笑いは「推し活化」していた

 ここ最近、東京に帰っていたので、学生時代の友人と吉本のお笑いライブを見に行ってきた。筆者はお笑いには疎く、生で見たことはなかったので、大変面白い経験になった。

 お笑いライブは渋谷に会場があり、円形の不思議な形の建物だった。入っていきなりグッズ売り場があり、狭かった。そこから通路を通って会場に行くという形式だ。もともとはライブハウスだったらしいのだが、あとから改造したらしい。

 お笑い会場はざっと300人ほど観客がいただろうか。筆者としては非常に興味深かったのが、観客の多くが女性だったことである。体感8割を超えていたのではなかろうか。お笑いというと男性社会のイメージだったので、意外であった。筆者の周囲でお笑いの話が好きな者もいるが、基本的には男性だと思う。それだけにお笑いファンの多くが女性というのが意外だった。

 その理由は少しすると明らかになった。どうにも会場での進行を見ていると、ライブを見に来ていた観客の大半が常連客だったようなのである。観客たちの反応が特に強かったのは内輪ネタだった。筆者には何を言っているかさっぱり分からないのだが、観客の女性は大笑いである。

 どうにも令和日本のお笑いは「推し活」と化しているらしい。芸人のうち、売れていくのは一握りである。多くは苦難の道のりを辿る。そうした姿を応援したいという女性が熱心にライブに通い詰めているようだった。お笑いファン自体は男性の方が多いのかもしれないが、往々にしてお金を落としてくれるのは女性ファンの方なのだ。

 筆者が思い出したのはクイズノックである。筆者の周囲でクイズ的な興味を持っている人間はほぼ全員が男性であり、クイズノックのメンバーも男性ばかりである。筆者の感覚では鉄道ファンとかに近いレベルで男性寄りの趣味という印象だった。それにもかかわらず、クイズノックのファンは女性が多い。乃木坂メンバーが結婚したくらいである。女性ファンの多くはクイズそのものというより、クイズノックの醸し出す雰囲気が好きであり、応援したいという動機が強いのではないかと思う。

 お笑いもそれと似た雰囲気を感じたのだ。ヒモになるのに必要なのは優しさではなく夢だ。押し活はそれを分散した形で届けている。一人の女性が一人の夢見る男性を養うのがヒモだとすれば、推し活は大人数の女性が少しずつ分散して夢見る男性を養っている状態と言えるだろう。ヒモの間接金融と言えるだろうか。

 ライブ自体はそこそこ面白かった。実際にステージの上に出て、予選を勝ち抜き、観客に笑いを提供するというのは並大抵の努力ではできない。そういった努力の痕跡を感じたライブだった。本当に厳しい世界である。

 投票などの結果と比べると、どうにも筆者が面白いと思った芸人と、他の観客が面白いと思った芸人にはギャップがあるらしいということに気付いた。投票でトップ3に入った芸人に筆者は一人も投票していなかったのである。

 筆者が面白いと思ったネタは、荒唐無稽な設定がいきなりぶち込まれるものが多かった。合コンでいきなりモンスターが登場とか、エア友達と突然喧嘩が始まるといった意味不明なシチュエーションである。やはり筆者は空想的な人間ということだろうか。

 一方、より日常的なネタを中心に取り扱っているものも多かった。より広い人に伝わるという観点ではデートなどをネタにした方が受けるかもしれない。ただ、筆者は恋愛系に疎く、ツボには入りにくかった。

 最後に投票によって順位が決められるのだが、筆者はこの手の投票は記憶に新しい後半の組が評価されやすいのではないかと予想していた。結果、上位にランクインしていたのは最後の方ばかりであった。やはり観客が投票で決める以上、こうなってしまうのは仕方がないのである。この程度のことは運営もわかっているだろうから、たぶん予選の結果が良いグループが後半に来ると言ったシステムがあるんじゃないかと考えている。

 お笑いに必要な技術とは何だろうか。もちろんネタが面白いことも大事だが、それだけではない。芸人の演技力に依存する側面も大きい。タイミングや声の出し方など、一つ一つに高度なセンスが必要となる。ビートたけしが漫才はめちゃくちゃ体力を消耗すると言っていたが、まさにその通りだと思う。目の前で繰り広げられていたのは、プロフェッショナルの技だったのだ。

 そういうわけで、なかなか貴重な体験をしたものである。


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