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僕たちは⸺。あれから一ヶ月/固有名詞提示後の遮断行動ログ(2月・化学室)/ささめく心。


1月




トイレめっちゃ寒い。
マジでやだ。


「うおっ、要ー居たのかよー、ちっさくて見えねーぜー」

「邪魔だよ、デカブツ」


まだ6時。
二度寝しよっと。


チュンチュン…


「ふあああ、そろそろ起きるかなー」


光希くんが亡くなって
1ヶ月くらい経った。


「はあー寒いよーたく、稔之くん、また食器下げてないや。」


ガチャン


「下げろっつーの。」


食器を流しに置いて、制服に着替える。


「ふああ。さむーやだー脱ぎたくないよー。」


稔之くんは光希くんが亡くなった時

「うおおおお光希ー」なんて言いながら泣いてたけど
翌朝には当たり前のように朝練に行ってた。

僕だって寂しかったし、びっくりしたけど、
なんだろうなあ、仕方がない事だよね。


「いただきまーす。」


みんないつか死ぬんだし、
なんて思う。


「ふー、食べた食べたー。悠樹くん迎えに行くかあー」


問題は悠樹くん。
なんか、ずいぶん元気なくしちゃったな。


こんこんこん

「悠樹くーん、がっこいこー。」

「んー。」

「入るよー。」


部屋はあの日以来、散らかったまま。


「ご飯食べたの?」

「んー…」

「おにぎりでよければあげるよ。」

「…サンキュー…」


稔之くんがいつも
4個くらい食べる巨大おにぎりを、
悠樹くんに2個渡す。




寮から出る。

路面がシャーベットになってる。

風もキンキンに冷たい。

頬が、耳が痛いよー。


「ひいいー寒いよー」

「…要は九州育ちだもんな」

「そーだよ、寒いのホント嫌いだよー」

「マフラーして手袋もしてんのにまだ寒いのかよ」

「寒いよーほら、触ってみ?」

「…冷た…」

「悠樹くんの手めちゃあったかいんだけどなんで?」

「手袋なんてしてないのに??」


めちゃあったかくて、
離したくない!


「光希くんが悠樹くんといつもくっついてたの、暖をとってたからなのかな。あっ…」


光希くんの名前出しちゃった、
やばー。
鷹博くん、名前出すなって言ってたのに〜。


「…気にすんなよ。」

「確かに光希も手冷たかったし、カイロだねって言われたよ」

「そ、そうだよねえー、人間カイロだよ〜」


手を繋いで歩いてたからか、
手にじんわり
悠樹くんの温もりが移ってきた。




「おは、千尋くん。」

「おはよう、要。」


机で文庫本を読んでいる千尋くんに
声をかける。


「鷹博くんまだ来てない?」

「そうですね。いつも通りです。」

「そっか、パソコンの事で聞きたい事あったんだけどなー」

「⸺お力になれず申し訳ないです。」

「ああ、いいのいいのー、」

「千尋くんは千尋くんのいいとこいっぱいあるし〜。」


悠樹くんは気だるそうに机に突っ伏している。

まあ、寮で引きこもってるよりかは
多分断然いいんだろうけど…。




「ぐあっ、飛ばしすぎた、キッチーよー」

「うるさいなー、稔之くん、黙って走らないからバテるんだよ」


今日の体育は持久走。
気怠そうにしてた悠樹くんだけど、
意外と1番を突っ切ってる。

なんだか安心した。


「ふー。終わった終わった〜。気持ちーねー悠樹くん。」

「ああ、そうだな。持久走は得意なんだな要。チビで華奢だから?」

「うっさいなー。チビは余計だよ。」


体もあったかいし、

冷たい空気が頭を冷やしてくれる。

稔之くんはどんどん抜かされて、10番くらいには落ちたかな。
ざまあ〜。

最後を歩いてるのは…
千尋くんと鷹博くんかな。

鷹博くんは千尋くんの背中を、
押してあげてるみたい。



「ああーまた雪降ってきたー、今日も積もるのかなーやだよー」

「…光希は、雨が嫌いだったけど、雪は好きだったんだ。」

「そーなんだ?なんで?」

「雪は、髪が広がらないし、静かだから…。」


空を見上げる悠樹くんに、小さな雪が降ってくる。


「そうだったんだねー。」


多分僕は、
悠樹くんと同じ痛みを味わっていない。

光希くんの事もあまり知らないまま…だったし。

中学の頃からの友達って言ってたし、
きっと思ってるよりもずっと、辛いんだろうなあ。


「はあはあ、くそう、要に負けた、くそう!」

「はー、ちきしょー!」

「ふふーん。いい気分〜」


稔之くんなんか、
そもそもそんな事考えてるかな?
きっと考えてないよね。


「悠樹くん、キャッチボールする?稔之くんはまだバテてるし。」

「ああ、いいぜ」


周回遅れの千尋くんが到着する頃には
多分チャイムがなる。

まだまだ風は冷たいけど、
確実に一日ずつ春に向かってる。

ちょっとずつ、ちょっとずつ悠樹くんも
あの日の夜よりかは
元気を取り戻してきてるように感じる。




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用)    •   高一(寮生活)から始まる、“同じ部屋”の物語    •   説明より行動。短文多め、空気で読ませる文体    •   「生きる理由」じゃなく「生きる処理」を描く(食え、寝ろ、でいい)    •   綺麗な起承転結にしない。救いと呪いが同居する温度    •   セリフと沈黙が主役。関係性のズレと体温の変化を追う    •   高校編→その後へ繋がる伏線と回収(時系列で追いやすい)

BLです。とはいえBLだけとは限りません。 1997年、寮生活の高校。 自炊寮で出会った、鷹博と千尋。 感情をロジックで封じるタカと、怒…

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