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娘に、抱きしめられた日



子ども達が思春期になった頃。

私は、とあることが原因で
誰にも言えない苦しさを
抱えていました。
生きていることすら、しんどい‥


毎日をこなすだけで精一杯。

今思えば、
心は限界に近づいていたのだと
思います。

____________

長男が家を出た後、

家には思春期真っ只中の娘たちが
残りました。

毎日のように繰り返される姉妹喧嘩。

そのたびに仲裁に入りながら、

私自身も
心がバラバラになっていました。

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ある日、

いつものように
姉妹喧嘩が始まりました。

その瞬間、

私の中で何かが切れたんです。

ずっと張りつめていた糸が、
プツンと切れてしまったような
感覚でした。


意識は何となくある。

でも、

口から出る言葉を
自分で止めることができませんでした。

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「不憫な思いをさせたのも!」

「お金がなかったのも!」

「全部、私が悪いんでしょう!!」

叫びに近い言葉だったと思います。

怒りとも悲しみともつかない形で
噴き出してしまいました。

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私は泣きながら叫び、

その場に崩れ落ちました。

何を話したのかも、

どれくらい泣いていたのかも、

正直よく覚えていません。

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すると、

取り乱している私を、誰かが

ぎゅっと抱きしめてくれたんです。

それは、
長女でした。

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私は泣き続けていました。

でも、

娘に抱きしめられた瞬間、

気づいたことがありました。

娘の心臓の音です。


ドクン。

ドクン。

ドクン。

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驚くほど速く打っていました。

その時、

私は、ハッと我に返ったんです。

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ああ‥

この子は怖かったんだ。

心配していたんだ。

必死だったんだ。

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私が苦しかったように、

娘もまた、

目の前で壊れていく母親を見て

相当、不安だったはずです。

それなのに娘は、

自分も怖かったはずなのに、

泣き叫ぶ私を責めることもなく、

ただ抱きしめてくれていました。

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そして、

優しくこう言ったんです。

私たちは、幸せだよ

お母さんの子どもで良かったと
思っているよ


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その瞬間、
娘の腕にしがみつき、声を上げて
泣いてしまいました。


娘はきっと、

取り乱している私を、
落ち着かせようとしてくれたのだと
思います。


あの言葉は、本心だったのか。

私を安心させるためだったのか。

それは、今でもわかりません。


でも、

あの時の私には十分でした。


ずっと息を止めて生きていた私が


やっと、呼吸を取り戻せたような
気持ちだったんです。


____________

私はずっと、

子ども達に申し訳ないと
思っていました。

寂しい思いをさせた。

我慢ばかりさせた。

欲しいものも、
十分には買ってあげられなかった
こと。

それは、
私が背負う罪だと、ずっと思って
いました。

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でも、

子ども達は違いました。

私ができなかったことではなく、

私が必死に生きてきた姿を

見ていてくれたんです。

____________

あの日、

娘に抱きしめられながら
思いました。

私はずっと、

子ども達を守っているつもりでした。

でも本当は、

何度も子ども達に
支えられていたんだと。

____________

小学二年生の頃、

「これでお母さんの声が聞けるから、
寂しくないよ」

そう言ってくれた娘。

そして思春期になった娘は、

「私たちは、幸せだよ」

「お母さんの子どもで良かったと
思ってるよ」

そう言って、

今度は私を抱きしめてくれました。

____________

今でも辛いことがあると、

私はあの日を思い出します。

娘の速い心臓の音。

あの温かい腕。

そして、

「私たちは、幸せだよ」

「お母さんの子どもで良かったと
思ってるよ」

という言葉を。

あの日、

私のバラバラだった心を、
救ってくれたのは、

間違いなく娘でした。

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