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「波音配達人」詩―#シロクマ文芸部

「波の音」配達人
それが 私の 仕事

貝殻で 作った器に
そっと 波の音を 閉じ込める
白い息を ひとつ
海へ返してから
遠くの街へ
音を 運んでいく

配達先は
夜空の片隅で
青い月が そっと
指さしてくれる

私は 今日も
いろんな場所へ
小さな音箱を 届けた

病院のベッドで
余命を 数える女性の
かすかな鼓動のそばへ
波の音を置くと
閉じたままの瞳が
ほんの少しだけ
海の色に 揺れた

母を突然失い
涙の行き場をなくした
幼い女の子の
震える手のひらに
音箱をそっと乗せると
波が 遠い浜辺から
「泣いていいよ」と
ささやいた気がした

立身出世だけを追い
高い階段を駆け上がり
気づけば 誰もいない
静まり返った頂上で
肩を落とした
ひとりぼっちのビジネスマン
その肩に置いた音箱は
潮風のように
彼の背中を
やわらかく撫でていった

砂浜では
別れた恋しい人の名前を
いくつも書いては
波に消されるのを
ただ見つめる人がいた
その足元に置いた音箱から
寄せては返す音が
すすり泣きなのか
それとも
新しい朝の気配なのか
私には もう
区別がつかなかった

☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡
小牧幸助様の「シロクマ文芸部」「波の音」企画に
参加させて いただきました。 小牧様 どうぞ 
宜しくお願いいたします

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