『SAME AS EVER』を読んで考えたこと— 不確実な世界では「予測」より「備え」が役に立つ
モーガン・ハウセルの『SAME AS EVER』が繰り返し述べていることは、「運やアクシデント、巡り合わせに左右される個々の事象ではなく、いつの世も決して変わらないものに目を向ける」ということだ。
人々は未来を予測するのはうまい――予想外のことが起こらなければ。
最大のリスクは、個人的に予測していなかったり、社会集団が予測していなかったりと様々だが、誰も予想していないということは、誰もそれに備えていないということでもある。
当然、それが生じた時のダメージは大きくなる。
したがって、「予測」ではなく「備える」ことに投資した方が有効なことが多い。
いつ、どこで何が起こるかはわからない。
しかし、危害や損害を被る可能性はいつだってあると予想しておき、それに対する備えを(ある程度)行なっておく。
この考え方は、人生において多くの場面で役立つものだろう。
例えば投資でも同じだ。
早くお金持ちになることを目指してリスク許容度を超えて投資するのではなく、生活安全資金が「少し多いかな」と感じるくらいの余裕を持っておく方がよい。
投資ではどんな状況でも続けていくことが一番重要であり、十分なセーフティーネットを築いておくことのほうが、投資額の多さよりも重要だということだろう。
「期待」と「現実」のギャップ
「期待」と「現実」のギャップについても、彼は面白い視点を示している。
この原則は「ゴールポストを動かさない」に尽きるだろう。
成功するたびにゴールポストを動かして、「もっと、もっと」と期待値を大きくしていけば、いつかは必ず破綻が来るのは目に見えている。
彼はこんな言葉を紹介している。
「ただ幸せになるのなら、なるのは簡単だ。だが、他の人より幸せになりたいと願うならそれは常に難しい。人は皆、自分より他人の方が幸せだと思っているからだ。」
ならば、比較対象を他人に預けるのではなく、過去の自分に置けばよい。
今の自分は、過去の自分がなんとか努力して目標達成を目指してきた結果でもある。
そう考えれば、過去の自分より良くなっていることも多いはずだ。
また「足るを知る」という考えも、人生を守ってくれる。
一定の位置にゴールポストを置き、そこにゴールを決めたら、それで十分だと自分を褒めてあげる。
これもまた、期待と現実のギャップを埋める良い方法ではないだろうか。
期待しすぎないこと
ハウセルはこう述べている。
「幸せな人生を送る第一の法則は、期待しすぎないことだ」。
現実的でない期待をしてしまうと、生涯ずっと惨めな思いをすることになる。
そこそこ期待をしつつ、人生の結果を、良いことも悪いことも起こり得るものとして、ある程度の冷静さを持って受け止めたいものだ。
このあたりは、昔からよく言われている人生の養生訓やことわざに近い教訓でもあるように思う。
この本の面白さ
つまりこの本は、これまでの教訓をハウセルなりの視点で切り取り、再構成したエッセイとして面白いものだと思う。
昔から知られている事柄でも、視点の違う解説が入るだけで、受け取る側は比較的すんなり理解できることも多いからだ。
ただし、よくある How-to 本のように期待して、問題の解決策を得ようとして読むと、少し面食らうかもしれない。
この本は、昔からの教訓を彼なりの視点で再構築したエッセイであり、そこに明確な「答え」が書かれているわけではない。
読者がそれぞれ何かを感じ取り、自分なりに学んでいくしかない。
そういう意味では、ビジネス書としては少し珍しい種類の本でした。
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