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経営指針には「戦略」が抜けているのではないか理念とビジョンを、顧客から選ばれる仕組みにつなげる

経営指針について考えていて、ひとつ引っかかったことがあります。
これまで私は、
理念 → ビジョン → 方針 → 計画
という流れで経営指針を考えてきました。
これは間違っているとは思いません。
ただ、改めて自社の経営指針を見直してみると、この間に大切なものが抜けているのではないかと思うようになりました。
それが、「戦略」です。
特に、
マーケティング戦略とブランディング戦略を、経営指針のどこに置くのか。
ここを考えてみると、経営指針そのものの構造を少し見直す必要があるのではないかと思いました。

理念とビジョンだけでは「どう選ばれるか」が分からない
理念は、
「何のために会社を経営するのか」
という根本的な問いに答えるものです。
ビジョンは、
「その理念を追求した先に、どんな会社になっていたいのか」
を描くものだと思っています。
私はこれまで、理念を「根」、ビジョンを「幹」と考えてきました。
西冨熔接工業では、
智慧 × 共感 × 挑戦
= 無限に広がる幸福の連鎖
を理念として掲げ、
「ものづくりの未来をワクワクさせる挑戦」
というビジョンを考えてきました。
ただ、ここで一つ問題があります。
理念とビジョンを決めただけでは、
「では、誰に、どんな価値を提供し、なぜ西冨熔接工業を選んでもらうのか」
までは決まりません。
ここを飛ばして、
「売上を伸ばそう」
「生産性を上げよう」
「社員教育をしよう」
「DXを進めよう」
と方針を立ててしまう。
それぞれは正しくても、会社として何を強くしているのかが分からなくなる可能性があります。
取り組みが増えることと、選ばれる理由が強くなることは、同じではありません。

「戦略」を方針の前に置く
私は今、経営指針の中の戦略を、
理念・ビジョンを、顧客から選ばれ、事業が継続する仕組みに変換するもの
と捉えています。
すると、経営指針はこうなります。
理念

ビジョン

戦略

方針

計画

実行・検証
戦略のところでは、
誰に価値を届けるのか。
その人は何に困っているのか。
自社は何を提供するのか。
なぜ他社ではなく自社が選ばれるのか。
その価値をどう継続的に提供するのか。
逆に、何をしないのか。
を決めます。
ここまで決まって初めて、その下にある営業方針、人材育成方針、設備投資、DX、生産性向上などが一本につながってきます。
戦略は、方針を増やすためにあるのではありません。
むしろ、何を優先し、何を後に回すのかを決めるためにあるのだと思います。

マーケティングとブランディングは「広告の話」ではない
マーケティングというと、広告、SNS、ホームページ、営業活動などを想像しがちです。
ブランディングも、ロゴ、デザイン、キャッチコピーの話だと思われることがあります。
もちろん、それらも一部です。
しかし、経営という視点から見ると、もっと上流にあります。
私は、こう整理しています。
マーケティング戦略は、
誰のどんな必要に応え、どうやって見つけてもらい、選ばれ、取引につなげるのか。
ブランディング戦略は、
自社を何者として認識してもらい、どんな期待と信頼を持ってもらうのか。
そして、それらを含めて経営者が考えるのが経営戦略です。
つまり、マーケティングやブランディングは、営業部門や広報部門だけの仕事ではありません。
経営そのものに関わるテーマです。

お客様が買っているのは「溶接」だけなのか
では、西冨熔接工業ではどうなのか。
最近、なぜ仕事を依頼してもらえているのかを考えてみました。
現時点ではまだ仮説ですが、
「インターネットで見つけやすい」
「相談しやすい」
「フットワークが軽い」
「コミュニケーションが取れる」
といったことが、選ばれる理由の一部になっているように感じています。
もちろん、溶接技術は必要です。
しかし、技術がある会社は西冨熔接工業だけではありません。
そう考えると、お客様が買っているのは「溶接」だけではないのかもしれません。
例えば、
「困ったときに相談できる」
「条件を整理してくれる」
「話を前に進めてくれる」
という価値です。
ここまで考えると、マーケティングとブランディングが経営に接続してきます。
マーケティングでは、
困っている人が西冨熔接工業を見つけ、相談し、依頼まで進める仕組み
をつくる。
ブランディングでは、
「困ったときに相談でき、話を前に進めてくれる溶接会社」
という期待を育てる。
そして経営戦略では、
その約束を、品質・安全・利益・社員の働く環境を壊さず実現できる仕組み
をつくる。
ここまでつながって初めて、「戦略」になるのだと思います。

「すぐ動きます」がブランドになると危険なこともある
ここは重要です。
例えば、
「フットワークの軽い会社」
をブランドにするとします。
すると、お客様からは、
「西冨さんならすぐ来てくれる」
という期待が生まれます。
これは強みになります。
しかし、何でも即対応するようになれば、現場は疲弊します。
社員の休日を削り、残業を増やし、利益の出ない緊急対応まで受け続ければ、ブランドを守るために会社が壊れるという逆転現象が起きます。
だから私は、
ブランドとは、格好いい約束をすることではなく、「守れる約束」を決めること
だと思います。
例えば、
相談への反応は早い。
しかし、価格・納期・施工可否は、安全・品質・人員を確認してから約束する。
これならブランドと経営を両立できます。
「早く返事をする」と、「何でもすぐ引き受ける」は違います。
ブランドは、顧客に対する約束であると同時に、社員に対して無理を押し付けないための境界線でもあるのだと思います。

人を大切にすることと、マーケティングは別物ではない
さらに考えると、
顧客価値と社員の働く環境も、本来は別々のテーマではありません。
顧客に価値を提供するために社員を疲弊させる。
社員を守るために顧客価値を落とす。
この二択では、持続可能な経営になりません。
必要なのは、
顧客価値を高めながら、付加価値と生産性も高め、その成果を働く環境の改善へ戻すこと
だと思います。
だから、
マーケティング
ブランディング
生産性向上
人材育成
働く環境
は、本来バラバラの経営課題ではありません。
「どんな会社として、誰に、どんな価値を届け続けるのか」
という一つの戦略からつながっているはずです。

経営指針を「動く経営指針」に変えたい
今回考えてみて、私自身の経営指針の捉え方も少し変わりました。
これまでは、
理念 → ビジョン → 方針 → 計画
でした。
これからは、
理念 → ビジョン → 戦略 → 方針 → 計画 → 実行 → 検証
と考えてみたい。
そして戦略のところで、
誰に、どんな価値を提供するのか。
なぜ自社が選ばれるのか。
どんな会社として記憶されたいのか。
その約束をどうやって守り続けるのか。
を考える。
さらに実行した結果、
本当にその理由で選ばれていたのか。
お客様は自社をどう認識しているのか。
その価値を提供することで社員に無理が生じていないか。
きちんと利益が残っているか。
を確認する。
そして、違っていたら戦略を修正する。
経営指針とは、一度つくって額縁に入れるものではなく、現実との答え合わせを繰り返しながら更新していく経営の仕組みなのだと思います。
理念は簡単には変わらない。
ビジョンも大きな方向を示す。
しかし、その未来へどう進むかという戦略は、顧客や社会、自社の変化を見ながら更新していく。
そう考えると、
マーケティングとブランディングを学ぶことは、広告を上手にするためではありません。
「こうありたい」という自分たちの願いを、「だから頼みたい」という顧客の理由へ変換するためなのだと思います。
今、自社の経営指針をもう一度、この視点から組み直してみようと思っています。

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