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『母が残してくれた たった一言』

15年前
母が亡くりました
母を見送った夜
私は子どものように泣きながら
妻に何度も聞きました
「母さんは……幸せだったのかな」
もっと会いに行けばよかった
もっと話を聞けばよかった
もっと親孝行すればよかった
思い返せば
「ありがとう」よりも
「ごめん」が次々と浮かんできました
もう本人に聞くことはできません
そのことが
たまらなく苦しかった
翌日
母の遺品を整理していました
服や写真
昔の手紙
ひとつひとつ片づけながら
母が本当にいなくなったことを
少しずつ思い知らされていました
そのときです
引き出しの奥から
小さく四つ折りにされた紙が出てきました
何気なく開きました
そこには
たった一言だけ書かれていました
「息子へ…母は幸せでした」
前の晩
私が泣きながら問いかけた言葉への
母からの返事のようでした
声をあげて泣きました
「母さんは幸せだったのかな」
その答えを
もう聞くことはできないと思っていたのに
母はちゃんと
残してくれていました
15年経った今でも
あの小さな紙に書かれた言葉を思い出すと
涙が出ます
そして今
この話を書きながら
また涙が溢れています
母さん
産んでくれてありがとう
育ててくれてありがとう
あなたが幸せだったと言ってくれたことが
息子にとって
どれほど救いになったか分かりません
もし
もう一度だけ会えるなら
今度は泣かずに伝えたい
「母さん
俺も幸せだったよ」
あなたの息子に生まれて
本当によかった
母さん
ありがとう


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